94.(勇者ミヤモト編)轟く悲鳴、邪神サイドの裏切り!
・2/10に第2巻が発売されます!
・それを記念して、10話分ほど、第2巻で大活躍するミヤモト君を主人公にした、異世界孤児院「ミヤモト」編をスタートします‼
・もちろん、これまでのストーリーの続きとして描いて行きますので、お楽しみに!!
・マサツグに敗れたミヤモト君の、大大大復活を見届けてください‼
94.轟く悲鳴、邪神サイドの裏切り!
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
俺様が駆けつけるとそこには、かなり可愛い少女が、気味の悪い生き物に囲まれているところだった。
ナメクジを巨大化して、体中から触手がうねうねと突き出しているような、見るに堪えないモンスターどもだ。
(チャンスじゃねえか!)
俺は思わず舌なめずりをする。
将来この異世界で王になるべき俺が、ああいう美少女を救うというのは、当然あってしかるべきシチュエーションだ。
むしろ、願ったりかなったり!
この世界に来てから、どういうわけか聖剣をマサツグに奪われたり、マサツグと戦って負けたり、俺の舎弟であったはずのクラスメイトどもがマサツグに寝返ったりと、一体この世界に神はいるのか⁉ と思わんばかりの出来事ばかり起こっていた。
「だが、それもここまでだ‼」
俺はべきべきと、まだ残滓として残る邪神の力を腕に込めて、強者にふさわしい鋭い爪を瞬時に生やす。
背中も盛り上がり、あたかもドラゴンの如き、黒い翼が生えた。
王者たるべき強さの証が次々と俺の体を変質させた!
そして、襲い掛かろうとするモンスターどもへ襲撃をかける!
「散れ散れ! 王者の行進だ! 頭がたけえんだよおおおおおおおおおおおおお‼」
作戦?
必要なし‼
そんなものは弱者の理論だ‼
王者たるべき俺は、ただそこを通り過ぎればいい!
そうすればおのずと弱者どもの頭は地面にくっついているものなのだ!
「死ねええええええええええええええええ、っらああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」
「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎゃぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ⁉」
巨大ナメクジが一体、俺の突撃を裂けきれずに、爆発四散した!
「ぎゃーはっはっはっは! 思い知ったか、俺の正義の一撃をおおおおおおおおおおおおおお‼」
俺は勝利の雄たけびを上げる。
無論、まだ敵は残っている。
その数20体以上。
普通ならば、戦いを避けるべきかもしれない。
なぜなら、こちらは独り。少女も守らなければならない。
形成は不利。
だが、
「雑魚が! 雑魚が何人集まっても雑魚なんだよ! は、ははははっはははっはははははは‼」
余裕。余裕の哄笑。
俺にはモンスターどもを抹殺し、華麗に少女を救った英雄、その英雄に惚れる美少女といったストーリーが既に見えていた。
俺がそう思っている訳ではない。
世界だ。
世界が俺をそうさせる!
選ばれた存在である俺は、それに従わざるをえない。そういうもんなだけだ!
「はははははははっはははははははははっは……」
「まさか、ミヤモト・ライズか⁉」
モンスターどもがしゃべった。
ある程度高位のモンスターになれば人語を話す。
それなりのモンスターということだろう。
それを簡単に屠る俺の凄さ、レベルの高さというものがより一層確認できるというもんだ。
ふ、くくくく。
それにしても、こんな僻地の、一介のモンスターにまで俺の勇名が届いているは。
届いているとはなあ!
「はーっはははっはははははは。ばれちまっちゃあ、仕方ねえ。俺はミヤモト。世界の王たるミヤモト・ライズ様だ! さあ、道をあけろ! 命乞いをしろ、雑魚どもが! この俺の前に立って拝謁する機会を与えてやってもいいぞ! は、はーっはっははっはっは……」
「ナオミ・マサツグ勇者に負けた、雑魚じゃねえか!」
「はーはっははははははは………………は?」
俺は聞き間違いかと、思わず声を上げる。
だが、
「ああ、確か邪神様の御力を借りたってのに、完敗したっていう、負け犬じゃねえか!」
「なッ⁉」
「ああ、そうだな。有名な話だ。まったく、そこまでして完敗。しかも人類を裏切ってまで邪神様側についたってのに、むしろ、マサツグ王なんていう英雄を生み出す始末だ。まったくの役立たず! 雑魚中の雑魚! 負け犬中の負け犬だ! まったく、無能な奴が何かをしでかすと俺たち全体に迷惑がかかる。このゴミ野郎が!」
「なぁあああ⁉」
醜悪な、取るに足らないはずの、害虫、蛆虫といってよいナメクジの化け物に散々コケにされ、嘲笑される。
「て、てめえら、それ以上、言ってみろ! 許さねえぞ! この俺を、このミヤモト・ライズ様を怒らせたらどうなるかッ……!」
「ぎひひひひ、どうなるってんだよ、負け犬のミヤモト。ああ、いや、貴様にゃ犬すらももったいねえなあ。ええ? 邪神様の周りをブンブン飛び回ったあげく負けに負けた蠅野郎があ」
「だ、だ、だ、だまれえええええええええええええええええええ」
俺は強靭なる爪で一匹のナメクジの化け物をバラバラに解体する。
「ぎゃあああああああああああああああああああ」
「ぎぎぎぎ、ぎゃははっははははっは、負け蠅が怒ったぞ!」
「マサツグに勝てないからその八つ当たりってわけ。ぐははははっは、だが、殺されるのはかなわんな!」
「ならば逃げるとするか! こんな負け犬に関わっていては、俺たちまで負け犬の病気がうつってしまう!」
げらげらげらと笑いころげながら、化け物どもは四方八方で散り散りに逃げ出す。
俺はそいつらを全員殲滅しようとするが、川に逃げ込んだり、物陰に隠れて気配を消したりで、ほんの数匹をしとめることしかできない。
「卑怯者どもがあ! 姿を魅せやがれええええええええ! 俺を恐れたか‼」
恐れる? 蠅をどうやって恐れるってんだよ、ぎゃーっはっはっはははは!
俺の言葉には笑い声のみが帰って来た。
深い森にこだまし、どこから響いてきているのかも判然としない。
「くそ! くそ! ちくしょうがああああああああああああああああああああああ‼」
俺は余りの恥辱に打ち震える。
王たるべき俺が、英雄たるべき俺が、あんな醜悪な者どもに笑われ、嘲弄されて良いはずがなかった。
だというのに!
「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう……」
んがあああああああああああああああああああああ‼
たまらず絶叫を上げた。
と、そこに、
「あのう、すみません……」
少女の声が届いたのである。
好評をいただいたおかげで、第2巻に続き、第3巻の発売も決定しました!
皆様のおかげです、ありがとうございます!
Web版、書籍版で大きくストーリーが異なりますので、どちらも楽しんで下さいね‼






