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【書籍化&コミカライズ】異世界で孤児院を開いたけど、なぜか誰一人巣立とうとしない件  作者: 初枝れんげ(『追放嬉しい』7巻3/12発売)


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92/135

92.(勇者ミヤモト編)復活のミヤモト

・2/10に第2巻が発売されます!

・それを記念して、10話分ほど、第2巻で大活躍するミヤモト君を主人公にした、異世界孤児院「ミヤモト」編をスタートします‼

・もちろん、これまでのストーリーの続きとして描いて行きますので、お楽しみに!!

・マサツグに敗れたミヤモト君の、大大大復活を見届けてください‼

92.復活のミヤモト


 邪神が分け身を現界させてから数日が経過した。


 それはある男が僅かな体力を回復させ、なんとか瓦礫の下から這い出すのに必要な時間でもあった。


 カサカサ……。


 ここはワルムズの西の端。


 悪魔の住まう森として有名な『ガレフの森』であった。


 住んでいる生き物たちも異形。


 なにに惹かれて集まったのか、およそ嫌悪を催さずにはおれない醜悪なるモンスター、虫、悪霊たちが集まっていた。


 カサカサ……。


 人間など、その悪魔の森には似つかわしくない。


 およそ、いるだけで正気を保っているわけにはいかないだろう。


 周囲に漂う鬼気、歪に邪悪に漂う魔力は人の感覚を狂わせる。


 もし、そこに順応できる人間がいれば、それはもはや人ではない。


 そう思わせるほどの限界環境。


 カサカサ…ガシイイイイイイイイイイイイイイ‼


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼ まさつぐうううううううううううううううううううううううううう‼」

 

 と、そこに人間の絶叫がこだました。

 

 恨み、つらみ。


 呪い、呪詛。


 復讐、怨恨。


 人の持つすべての負の感情が込められたウォークライ(雄たけび)であった。


 まさしく、この負の集積場、呪いの森、鬼の澄む僻地にふさわしい者が発する絶叫なのである。


「ゆるさねええええええええええええええええ! 許さねえぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼ 俺の、俺がなるはずだった王になりやがってええええええええええええええええ。ズルを……そう、ズルをしやがってえええええええ。俺は独りだったのに奴は何人も仲間を連れては向かってきやがった」


 だからだ!


 だから負けた!


 俺は負けてねえ‼


 聞くに堪えない雄叫びが続いた。


 が、そんな怨嗟の叫喚も、


 グウゥウゥゥゥウゥウウウ……。


 腹の虫には勝てなかった。


 と、すると男は……。


「はぁはぁ、ガツガツガツ‼」


 その三葉虫のような、○○○○のような、たまたま近くを這いまわっていた醜悪極まりない昆虫に喰らいついたのだった。


 空腹だったから。


 いや、以前の男であれば、こうも躊躇なく喰らうことはなかっただろう。


 何せ、彼は一介の高校生だったのだ。


 虫を食べることなど出来るはずもない。


 だが、男には今やもう一つの顔がある。


 端末体。


 一度とは言え、邪神につながったもの。


 それは数多の悪魔、悪霊、言葉に出来ぬ者、モンスター、邪悪なる神々が求めてやまなかった奇跡だ。


 ゆえに、今の彼は人間の限界を軽々と超えていく。


 いや、違う。


 彼にはもともと才能があった。


 べつに誰でも邪神とつながれるわけではない。


 その男の器質に、邪神を受け入れるだけのスケールが必要だった。


 男は最低と言って良い男であったが、ただ一点、他者を寄せ付けぬ何かがあったのだ。


 それは、言葉にするべきものではない。


 唾棄すべき、何かなのだから。


「ムシャムシャ。げふぅ!」


 手のひらほどの大きさの黒い虫を食べきると、男はやっと一息ついたのか、大きく深呼吸した。


 そして、初めて周囲を見回す。


「へっ、雑魚どもがこっちを窺ってやがるな。ふん、この俺、宮本昇ミヤモト・ライズ様にかなうと思ってんのかよお! おらあ!」


 挑発する。


 だが、悪魔の森にすむ醜悪なモンスターたちも、いきなり復活する鳴り絶叫を上げ、近くをうろついていた虫(この森にすむモンスターすら食べない)にむしゃぶりついた男に、さすがに警戒心を抱いたようだ。


 ただの人間とは言え、近づかない方がよさそうだ。


 そう判断して一定の距離を保つことに決めたようだ。


 いつもならば間違って森に踏み入った人間など、すぐに血祭りにあげている呪われし者たちだというのに。


「ちっ、だが、本当に許せねえ。マサツグの野郎。よくも、よくも俺に恥をかかせやがったな! 俺は邪神に……、そう邪神に操られていただけだったのに! だってのに、あいつはそれがまるで俺が悪かったかのように襲い掛かってきやがった」


 しかもだ!


「その方法が卑怯すぎて反吐が出るう! ワルムズ王国の王位を簒奪するばかりか、クラスメイトども、俺の舎弟どもの暴力と権力で無理やり言う事を聞かせやがった。最後には善神を何らかの手段で操ってまで俺に歯向かってきやがったんだ! 神様に対してあんな冒涜的なことをするなんて俺には信じられねえ!」


 などと、男は言うのであった。

 

 無論、無茶苦茶だ。

 

 だが、彼の中ではもちろん理屈が通っていた。


 それこそ反論など許すつもりもない。


 世界は自分を中心に回っているのは明白だ。


 なぜなら、自分は世界を征服し、世界王になる器の男なのだから。


 ゆえに最も偉く、そして強いのは当然。


 邪神が手を貸したのも、自分にそういった素質があると認めたから。


 その証左にすぎないのだ。






「さて、マサツグの野郎には、そのうち復讐をするとして、まずはこの気色の悪い森をどうやって抜けるかだな」


 俺は鬱蒼と茂る森に唾を吐きかけながら呟いた。


 あの卑怯者から一時的に撤退はしたが、思いのほか遠くまで撤退した。


 これは、逃げた訳ではなく、単にこの森が逃げ込みやすかったからだ。


 どういう経路で逃げ込んだかは、よく覚えていないが、けっして単にぶっとばされて、気絶していて、たまたま生きていて起きたら見知らぬ森だった。なんてことは絶対にねえ!


 俺は瞬間、カッとなって近くの大木に蹴りを放った。


 大木、樹齢何万年かと思われる、人が何人で囲めばいいのか分からないほどの幹の太さを持つ霊樹と言って良いほどの巨木。


 それを、


 ベキベキベキベキ―――――‼


 へしおってやった!


「は、はははっははは‼ ざまぁみやがれって!」


 やはり物を壊すのは爽快だ!


 面倒くさいときはこうするに限る。


 人も物も俺のものだ。


 自分のものをどう扱ってもいいはずだ!


 なぜかそうなっていないってのが、納得いかねえ!


 そう、マサツグも。


 直見正嗣もその一つだった。


(あいつも、俺の言う事をききやがらねえ不届きもんだ‼)


 俺は思い出すとやはり激高し、折れた幹を掴んで周囲へ振り回した。


 何百メートルはあるかという巨木。


 それを振り回す。


 あたりに死をまき散らす!


 周囲で様子を窺っていたモンスターたちごと、根こそぎにしていく!


「はーはっはっはっはっはっは! しねえええええええええええ。」


 俺は哄笑を上げながら、あのくそマサツグと初めて会った時のことを思い出していた。


好評をいただいたおかげで、第2巻に続き、第3巻の発売も決定しました!

皆様のおかげです、ありがとうございます!

Web版、書籍版で大きくストーリーが異なりますので、どちらも楽しんで下さいね‼

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