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75.マサツグ王の勅命『防衛作戦』、そしてクラスメイトたちとの和解

いつもお読み頂きありがとうございます。


おかげさまで8/10の出版準備(入稿)も無事終了いたしました。


本日、活動報告に、書影(ロゴ、帯入りの表紙)と、店舗特典情報を公開しました。


パルプピロシ先生の神イラストは見ないと損なのでぜひ楽しんでいってください。

75.マサツグ王の勅命『防衛作戦』、そしてクラスメイトたちとの和解




「マサツグ王、ガイアス方面への配置、完了したとの報告がありました!」


「ご苦労」


「マサツグ王! ケイネス峡谷への布陣も既に完了しております!」


「分かった」


「王よ。隣国フェルディナンドとの交渉は完了です。力を貸してくれるそうですぞ!」


「そうか。戦いが終わったら礼を言いに行くとしよう」


「王よ!」


「マサツグ王!」


 やれやれ、分かっていたこととは言え、戦いの準備とは忙しいものだな。


「分かった。ある程度は現場の判断で動け。所詮は即席の軍隊だ。高度な連携など期待してはいない。それよりも兵站を途切れさせるな。戦力は向上しても、それに対する補給は有限だ。一日飯が届かなければ、それで士気も下がろうというものだ」


「さすが我らが王です。そのような細やかな部分にまで目を行き届かせられるとは。万事ぬかりなく進めましょう」


「よろしく頼むぞ」


 かしこまりましたと言って、伝令兵がかけて行く。


 時間がないからな。


 明後日には国境に死者の軍勢がたどりつく。


 軍勢は3方向から侵攻してきており、いずれも数十万規模だ。


 一方、こちらの偶然は総勢で1万人程度。


 普通ならば戦いにすらならない。


 蹂躙、殲滅されて終わりだ。


 が、出陣する兵士たちの顔に悲壮感はない。


 なぜなら、


「見て見ろよ、俺、この石を握りつぶせるんだぜ!」


「俺なんか国境まで10分もあれば走ってたどりつけるぞ!」


「見ろよ、このジャンプ力! 地平の果てまで見えるってもんだ!」


「ひひひ、これなら鬼隊長にすら勝てるんじゃないか? いつもビシビシしごきやがって。今なら逆に返り討ちに……」


「ほう、返り討ちがなんだって?」


「い、いつの間に⁉ き、聞こえてました……」


「はあ、お前たちいい加減に静かにしないか! 国を守るための聖戦なのだぞ‼」


「す、すみません」


「……ふん。俺だって1000倍の力になっているのだ。今なら届かなかった高みにすら手が届くやもしれんな……」


「あれ、隊長も何だかんだテンション上がってます?」


「調子にのるな!」


「も、申しわけありません‼」


 風通しのよくなった玉座の間から眼下を見下ろせば、急ぎ足で次々に出陣していく兵士たちが見える。


 表情は晴れやかであり、にぎやかですらある。


 調子に乗っているともいえるが、まあ、油断していないのならば良しとしよう。


 もともとは逃亡が後を絶たないような戦況だったのだ。


 それが俺の戴冠により、ここまで復活した。


 それどころか勝てる戦いになったのだ。


 士気が上がらないはずもない。調子にだって乗りもしよう。


「マサツグ王。玉座の間に代わる作戦指令室のご用意が出来ました。やや殺風景な部屋ではありますが……」


「良い。指令本部が置けるだけの十分な広さがあれば足りる。ちなみに、指令室を置く部屋の条件について、俺が最後に付け加えた点は満たしているな?」


「え? は、はあ、正直私ごときには王のおっしゃった意味がよく理解できませんでしたが、ご命令通りにいたしました」


「そうか」


「はい。勅を賜りました通り、最上階に近い(・・・・・・)大きめの部屋に、作戦指令室を置きました。ですが、いったいなぜ?」


 兵士の問いかけに俺はにやりとして、


「ふっ、嫌でもそのうち分かる。死者の軍勢が大地を覆っている(・・・・・・・・)のならば、なおさらな」


「は、はあ……」


 兵士は首を傾げる。


 まあ、無理もなかろう。


 だが、のんびりと説明をしている暇はない。


 このために少女二人がずっと作業に従事しているのだ。


 俺が暇をするわけにも行かぬだろう。


「では、移動するとするか」


「はは! ご案内いたします!」


 こうして俺たちは新たな玉座の間(作戦司令室)へと移動したのであった。






 様々な指示を出し終える頃には既に深夜になっていた。


 俺は自室へと戻り、疲れたと肩をもむ。


 今日のところで兵士たちの出兵はだいたい終えている。


 また、兵士たちが次々に出陣する中、クラスメイト達も出立する準備を進めた。数の少ない彼らは明日の早朝に出立する予定だ。


 彼らは異世界から召喚されたことで特殊なスキルを得ている。


 エヅカやカツラギ、ミヤモトなど戦略級のスキル持ちは王城に残り、各地に散った兵士たちに支援魔法を放ち続ける役割があるが、他のクラスメイトたちほとんどは戦術級のスキル持ちだ。


 各地に将として展開し、前線を支えることが役割となる。


 と、そんな風に部屋でもう休もうとしていると、ドアが叩かれる音がした。


 一体誰だ? こんな時間に。


 孤児たちを中に残したまま、ドアを開ける。


 と、そこには、


「……一体、どうしたこんな夜更けに」


「ふん、別にどうもしないわよ」


 そこにはヨシハラやエヅカ、カツラギを筆頭に、20名余りのクラスメイトたちが集合していたのである。


「なんだ、夜襲でも仕掛けにきたのか?」


「ち、違うわよ!」


「なら、なんだ? 何か用事があったんじゃないのか?」


「別に特別な用事があったってわけじゃ……」


 と、エヅカたちが口を開き、


「おい、ヨシハラ、お前が言い出したんだろうが。ちゃんと言えよ」


「そうだよヨシハラさん。素直にならなくちゃ!」


「べ、別にあたしが言い出した訳じゃないでしょうが! あ、あなたたちが言い出したから仕方なく付き合ってあげているだけなんだから」


「ここまで来て往生際が悪いっすよ」


「左様。覚悟を決めるがよい。俺たちも既に覚悟は定まっている」


 他のクラスメイトたちも口を開く。


 何なんだ、一体?


 と俺が訝しげにしているのを見て、ヨシハラが大きく深呼吸をした。


 そして、


「その、悪かったわね、今まで」


 そう言って、頭を少し下げたのだった。







「ふむ、何かの罠か?」


 俺のスキルが反応していないが、実はそういう隠蔽スキルでも持っていたか?


 俺は警戒するように周囲をきょろきょろと見回す。


「違うわよ! 普通に謝ってやってるのよ! このあたしが、あんたに! 素直にね!」


 ……何だと?


「熱でもあるのか、ヨシハラ。お前の様な横暴な女が謝罪とはよほどのことだぞ?」


「なんであんたにそこまで言われなくちゃいけないのよ!」


「まあまあ、二人ともそこまで。そして、マサツグ……。ああ、いや、今はマサツグ王だったな。ヨシハラだけじゃない。俺たちクラスメイト全員……いや、ミヤモトやイシジマは来なかったが、ともかくみんなから謝らせてくれ。今まで無視したりしてすまなかった。皆、お前のことは認めていた。だが、誰に頼らなくても一人で何でもできるように見えるお前が、皆うらやましかったんだろう。許してくれ」


 そう言って他のクラスメイトたちも頭を下げたのだった。


 これは想定していなかった。参ったな。


「別にお前たちに謝ってもらういわれなどない。俺もやりたいようにしていただけだ。お前たちのことなど眼中になかった」


「マサツグ……」


 クラスメイトたちが口をつぐむ。


「だが」


 俺はため息を吐き、


「それはそれでよくなったのかもしれん。俺はこの世界に来て、孤児院を運営することになった。そこで初めて他人を思いやることを学んだように思う。元の世界では自分のことで手一杯だと思っていたが、それ自体が甘えだったのかもしれんな」


「マサツグ……」


 俺は少し微笑むと、


「勘違いするな。なれ合うつもりなどない。だが、確かに俺たちはなんであれクラスメイトであり、同じ同胞を持つ者たちだ。そして、今は同じ場所にいて、守るべきものも近い。お前たちは国を守ることを誓った。俺は孤児院を守る。この目的は両立可能だ。ゆえに」


 俺は一呼吸おいてから、


「今は同じ目的に向かう仲間だ。お前たちは俺の家族を守る。俺もお前たちの居場所を守ろう。ともに敵を討ち滅ぼすぞ」


 俺の言葉にヨシハラは、


「な、なによ! 偉そうに!」


 そう言ってプイっとそっぽを向いた。


 他の奴らは、


「いっちょ、マサツグ王のもとでワルムズ王国を救ってやるか!」


「おうよ! 勝手に呼ばれただけだが、それでも一宿一飯の恩義ってやつがあるからな!」


「お前は宿屋のターニャちゃんに惚れただけだろ?」


「おまっ」


やれやれ。


 調子のいい奴らだ。


 それにしてもヨシハラの頬を少し赤いのはなぜだろうか。


 俺は首を傾げたのであった。





「ご主人様」


 さて、部屋へ戻るとリュシアが待っていた。


 何か言いたげな表情だ。


「どうしたんだ?」


 俺が尋ねると、


「そ、そのクラスメイトの方々と仲直りされたようですが」


 ふむ。まあ、別に仲たがいしていた訳ではないが。


 双方で無視し合っていただけだ。


 いや、それを仲たがいと言うのか。


「ああ。で、それがどうした?」


 そう言うと、リュシアが覚悟を決めた表情で、


「そ、その、カツラギさんとヨシハラさんのこと、どう思ってらっしゃるんですか⁉」


「……はい?」


 俺は再び首を傾げるはめになったのであった。


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