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73.No2 バロン・ゴーレムの急襲 前編

8月10日発売の第1巻カバーイラストを活動報告に公開しました!


パルプピロシ先生の神技に震えろ……。


是非ご覧ください!

73.No2 バロン・ゴーレムの急襲 前編




「か、回復だと⁉」


「そうだ」


 ミヤモトの言葉に俺は淡々と頷く。


 が、こいつは納得できないのか首を横に振り、


「う、嘘をつくな! お前がこの剣を持って振り回した時、俺の後ろの山を切り飛ばしたはずだ! あれは聖剣の力だろうが‼」


 何を言っているんだ?


 俺が口を開こうとするが、リュシアの方が早い。


「あれはご主人様自身の力です。山をどうこうするくらい、ご主人様の力をもってすれば訳ありませんから」


「な、なんだとッ……。そ、そんなことが」


 ミヤモトはまだ信じられないのか、口をパクパクとしている。


 だが、そんな現実に付いてこられない奴に付き合っている暇はない。


「もういいだろう。いいからお前は大人しく回復役として皆のバックアップに専念しろ。何も直接敵を倒すだけが活躍の仕方ではない。前衛も後衛も重要な戦力だ。そんなことくらい誰も分かることだぞ?」


「うるせえ! 俺は、俺は……」


「分かっているのか? そのナイチンゲールの力は自軍全体に対する継続的な回復。つまり継戦力の爆発的な増加だ。もともと1万対100万の戦いだったが、エヅカの戦闘能力向上スキルにより、戦力は10倍。更にカツラギのスキルによって必殺技打ち放題の10倍。そして、聖剣による持続的な回復効果によって更に10倍。すなわち、1000倍のパワーが実現できる。大地を埋め尽くす死者の軍団を殲滅することも不可能ではない」


 だが、それでもミヤモトは嫌だ嫌だと繰り返す。


 顕示欲の塊と言うべきか。ここまでくると頭が下がるな。


「やれやれ。仕方ない、兵士やクラスメイトの者たちはミヤモトを縛って連れていけ。国の命運がかかっている時にガキのわがままにつきあってやれるほど、お前たちに余裕はないはずだぞ?」


 その言葉にほとんどの者たちは大きく頷き、


「大人しくするんだ。ミヤモト卿。王の命令に背くなど言語道断。見苦しいにも程があるぞ。貴公は後陣に大人しく控えておればいい! その聖剣を手放さずにな!」


「くそ! や、やめろ! 俺に触んじゃねえ! いやだ、俺は前線で活躍を……」


 もがくミヤモトを兵士たちが押さえつけようとする。


 と、その瞬間、


 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオンン……‼


 そんな炸裂音とともに、城の壁が突然吹き飛んだのであった。






「な、なんだ⁉」


 貴族たちの口から驚きの声が上がる。


「なっ、こ、こいつは⁉」


 そして、更に驚愕の声が上がった。


「くくく、ここがワルムズの本拠地か。やはり、死者の軍勢を待たずとも、この国を落とすことなど容易いようだな」


 そう言って、破壊された壁の向こうで、城ほどの大きさ《・・・・・・・》の体躯を持つ巨人……岩石で覆われたモンスター……巨大ゴーレムはくぐもった声で嗤ったのである。


「バ、バロン・ゴーレムだとぅ⁉」


 一人の貴族が悲鳴を上げた。


「なんだ、有名なモンスターなのか?」


「は、はい。神話の時代に存在したと言われる伝説のゴーレムです。そ、そんな伝説の存在がなぜこんなところに⁉」


 その言葉を聞いたバロン・ゴーレムは更に哄笑すると、


「ぐわはははは! 儂こそがこの死者の軍勢を率いるエイクラム様の直参! エイクラム軍がNo.2、バロン・ゴーレム様よ! 偵察だけのつもりだったが、ちょうどよい! 死者の軍勢の蹂躙を待つまでもない。ここでお前たちをアリの様に踏み潰し、凱旋するとしよう。がははは!」


 そう言って、城が倒壊しそうなほどの大声で大笑したのであった。


 その圧倒的な巨大さ、岩で出来た強靭なる体躯、そして本拠地である城の一部を吹き飛ばされ、追い詰められている状況に、城の面々は悲愴な声を上げる。


「そ、そんな。まさかいきなりエイクラム軍のNo2がやってくるなんて⁉」


「で、伝説級のモンスターだぞ……。確か、神話によれば、最も多くの人間の国々を滅ぼしたモンスターじゃないか⁉」


「もうだめだ。こんな巨大な相手に勝負になるわけがない……。おしまいだ」


 そんな言葉が口々に漏れる。


 が、そんな者たちとは逆に、俺は喜んで、


「ちょうどいい練習台が向こうから来てくれたな!」


 そう言ってにやりと笑ったのである。





「れ、練習台だとう?」


 バロン・ゴーレムが俺の言葉に気づいて玉座へと目を向けた。


 が、俺は足を組んで座ったまま、笑みを崩さず、


「ふ、その通りだ」


 淡々と頷いた。


「しょ、正気ですか、王よ! こ、このような城ほどの大きさのある敵ですぞ⁉ ただのゴーレムでさえ倒すには10人、20人の兵士が必要です。そ、それなのに、その10倍以上はあろうかと言うゴーレムを練習台にするなどとはあまりに……」


 マサツグ派の筆頭貴族たる辺境伯メジャが苦い表情で言う。


 やれやれ、


「お前も頭が固い男だな、メジャよ。さっきまでの話をちゃんと聞いていたのか?」


「さ、先ほどまでの?」


 と、首をひねる。


 やはり実際に見せてやらなければダメか。


「そうだ。よし、ではエヅカにカツラギ、早速お前たちの力を発揮してもらうことにしよう」


 俺はそう言って二人の方を見る。


「俺たちの……」


「私たちの……」


 二人がゴクリと喉を鳴らした。


 なに、そう緊張することはない。


 俺は頷きつつ指示を出そうとした。


 と、その時である。


「待ちなさい! あなたたちの力なんてなくても、私たちがあの化け物を倒してやるわ!」


 そんな声が玉座の間に響いたのである。


「さよう! 簒奪の王に救われる国などあってはならん!」


「所詮はこけおどしのはったりに過ぎん! わしら古来よりワルムズを守って来た伝統ある名家をおいてでしゃばるではないわ!」


 貴族の一部もその声に同調する。


 声を上げたのは反マサツグ派の筆頭であるヨシハラ、そして貴族の連中であった。


 なるほど、ここで俺がこのゴーレムを撃退してしまえば、実績がつくことになる。そうすれば、この状況だ。もはや権力構造をひっくり返すことは実質的に不可能になる。


 それを恐れ、最後のチャンスに賭けようと言うのか。


 なるほど、愚かだ。だが、権力をいかなる危険を冒そうとも死守しようとするその姿勢はある意味、名家と呼ばれる家を守り切って来ただけの妄執そのものだと思えた。


 そうした妄執も力になるのかもしれない。


 俺は少しだけ期待する。


 俺が手を下すまでもなく、敵を撃退できるならば、それはそれでよい。


 何度も言っている通り、俺は玉座に興味などない。


 あくまで手段として、王と言う職位を得ただけだ。終わればミヤモトにでもくれてやればよかろう。


「そこまで言うなら見せて見ろ。その名家とやらの執念をな。だが、急げよ? こうしている間にも後続の死者の軍勢は迫っている。それもお前たちは撃退せねばならないのだからな?」


「ぐ、わ、分かっているわよ! あんたなんかに言われるまでもなくね! そうでしょ、ミヤモト君!」


「⁉ ……あ、ああ! その通りだぜ! マサツグ、てめえなんかの手を借りるまでもねえ。俺らだけで死者の軍勢なんて追い払って見せる! バロン・ゴーレムなんてつゆ払いみたいなものだ!」


「その通りだ、ヨシハラ卿! 我らの力を見せる時だ」


「ミヤモト卿の勇ましさよ! 彼ならばバロン・ゴーレムなどもろともすまい‼」


 反マサツグ派が活気づく。


「ぐふふふふ、愚かな人間どもよ。死出の相談は終わったか? ゴーレム族はのんびりとした気風ではあるが、愚かなさえずりを耳元でささやかれることを我慢できるほど愚鈍ではない。お前たちの体をミンチにし、ワルムズを終わらせることとしよう」


「はっ、ほざいてやがれ、このでかいだけのでくの坊が! いくぞ、ミヤモト! そして俺に続け兵士たち! ここにワルムズの神髄を見せるぞ! この異世界の真の勇者ミヤモトに続けええええええええ‼」


「うおおおおおおおおおおおおおミヤモト卿に続けええええええええ!」


「勇者殿を支援するのだあああ!」


「バロン・ゴーレム何するものぞおおお‼」


 自称勇者の進撃が始まった。


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