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71.ヘボスキルが強スキルへ変化②

書籍のキャラクターデザインを活動報告にアップしました。

すっごく可愛いので、万難を排してジックリ見てやってくださいね!

71.ヘボスキルが強スキルへ変化②




「カツラギ・ユリコ。お前のスキルが、この戦争の勝利への鍵だ」


 俺は淡々と告げる。


 が、カツラギはポカンとした表情をするだけで返事もない。


 どうやら、何を言われたのか完全に理解できなかったらしい。


「カツラギ、返事くらいしてくれ」


「あ、はい! ごめんなさい!」


 慌てた様子で返事をして頭を90度まで下げる。


 そう言えばこいつはこういう女だった。


 簡単に言えば天然なのである。


 本当に大丈夫だろうか、と一抹の不安を抱かないと言えば嘘になる。


 が、まあなるようになるだろう。


 ならなければ、その時はその時だ。


「もう一度言う。お前のスキルが、この戦争を勝利に導くことになる」


 と、今度こそ俺の言葉を理解したらしい。


 その証拠に目を大きく見開いている。


 相変わらず返事はない。今度は驚きすぎて言葉がないらしい。


 面倒な奴だなあ。


 はぁ、とため息をつきながら。


「カツラギ、お前のスキルは何だ?」


 俺の質問にカツラギは首をブンブンと振ってから、


「は、はい! 私のスキルは、私のマジックポイントを供与するスキルです!」


 そう答えてから、落ちこんだ様子で、


「そんな人を助ける能力だけど、私、そもそもMPがほとんどないから役に立たないんだけどね……」


 と言った。


「あっ、もしかしたらマサツグ君、じゃなかった、王様の力で私のMPを1万倍とかにしてくれるとかですか⁉」


 期待に満ちた視線を向けてくる。


 だが、そんな都合の良い話は世の中にはない。常に世界はシビアで情の入り込む余地はない。


「残念ながら、お前にはそういった才能はない。MPを多少底上げしてやることはできるが、今回の様な数万、数十万と言う兵士たちにばらまけるようなMPを所持する力はお前にはない」


 そうはっきりと告げた。


 と、俺たちのやり取りを聞いていたヨシハラが鼻で笑いながら、


「なぁんだ、やっぱり役立たずは役立たずじゃないの。ユリコのスキルが鍵だなんてとんだ嘘っぱちね!」

 

 そう言って笑った。


「味方の戦力が低いことの何が楽しいのか理解に苦しむが……」


 俺はなかば本気で困惑しつつ、


「それにしてもヨシハラ、お前は本当に頭の固い女だったんだな」


 そう呆れた調子で言った。


 なんですって、と相変わらずキャンキャンとうるさいが放置したままカツラギに向き直り、


「カツラギの能力は俺の『守る』スキルの力によって、MPを任意の相手に人数制限なく与えられるようになった」


 俺がそう言うとカツラギが困ったように口を開き、


「ありがとう王様……でも、もともとMPの少ない私じゃあ、人数制限がなくなっても大して役に立つことできないから……」


「おっと、肝心なことを言い忘れていたようだ」


 俺は慌てて言いなおす。


「お前は、同意を得た任意の相手から、任意の相手に人数の制限なくMPを供与することが出来るようになった」


 と、カツラギは俺の言った意味がよく分からなかったのかキョトンとしている。


 が、何人かの勘のいいクラスメイトはそれがとんでもないことだと気づいたようだ。


 驚きの声を上げた。


「そ、それってMPを莫大に持ってるやつとさえ合意できれば、無限にMPを配れるってことじゃないか⁉」


「必殺技打ち放題ってことだろ⁉」


 そんな声が上がる。だが、


「ま、待てよ。だが、そんなMPを無限に持ってるような奴が俺たちの中にいるか?」


「い、いや、そんな奴いねえ。もちろんアークウィザードのスキル持ちはいる。けど、とても1万人の魔力を補えるような奴はいない」


 すぐに、やはり役に立たないという声があがる。


 まったく、もう少し状況認識能力を磨くべきだな。


「お前たちの目は節穴か? 目の前におあつらえ向きの奴がいるだろうが?」


 俺は当たり前のことを諭すように言う。


 だが、誰のことか分からないようだ。


 互いの顔を見合って、誰だ誰だとざわつくばかりだ。 


やれやれ。


「俺に決まっているだろう? むしろ、他に誰がいる? 1万人に魔力を供与して平気な者など、真の勇者たる俺しかいまい?」


今度こそ、クラスメイトたちを含む玉座の間にいる全員が、息をのんだのであった。


「わ、私がマサツグ君……じゃない、王様のMPを使っていいんですか⁉」


カツラギがなぜか顔を赤くしながら言った。


きっと自分のスキルが進化したことが嬉しくて仕方ないのだ。


「ああ。俺の魔力を使うがいい。ここにお前のスキルの適用を受けることを受諾しよう」


俺がそう言うと、カツラギとの間に魔力のパスがつながったのが分かった。


と、カツラギが更に顔を赤くして、


「し、知らなかった。魔力のパスって赤いんですね。……ま、まるで赤い糸ですね!」


 ふむ? ああ、確かにそうみたいだな。


 だが、それがどうしたと言うのだろうか?


 俺が一人首を傾げていると、リュシアとラーラが、


「ご、ご主人様、あまり深く考える必要はありませんよ、ええ」


「リュシアの言う通りなのじゃ。何なら、わしとも後で魔力パスを通そうなのじゃ!」


「ラーラちゃん、抜け駆け禁止ですよ!」


 俺は更に首を傾げる。


 まあ、いいか。


「さあ、これで戦力的には五分になった。1万対100万の戦いだが、エヅカのスキルにより、戦力的にはお前たちは10倍の力を持っている。これで10万対100万だ。更にカツラギのスキルによって必殺技打ち放題の状態になる。通常攻撃よりも十倍、二十倍の攻撃が常時放つことが出来る。これによっておよそ互角の力となるはずだ」


 俺の言葉に玉座では意気軒高な声が次々に上がる。


「やれる! やれるぞ! 死者の軍勢を撃退できる!」


「ああ、異世界の勇者だけじゃない! 俺たちも強化されることによってこの戦いに参加することが出来るんだ!」


「ようし、マサツグ王のもとで獅子奮迅の働きをしてみせるぞ‼」


 などと、、ああ元気なものだ。


 だが俺は逆に冷ややかに見下ろしながら、


「お前たち、正気か?」


 そんな言葉をかけたのである。


「えっ⁉」


「そ、それはどういう……」


 驚きや意外そうな声が上がる。


 だが、俺は淡々と、


「互角程度の戦力で戦争を本気でするつもりなのか?」


 改めてそう問いかけたのである。


少し早いですが今週分は本日、金曜日にアップ。土、日のアップはありませんのであしからず。

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