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69.クラスメイトも仲間割れ 主流派vs非主流派

69.クラスメイトも仲間割れ 主流派vs非主流派


「俺はマサツグ……マサツグ王を支持するぜ! この危機を乗り越えるにはアイツ……王の力が絶対に必要だ!」


「あ、あたしもそう思うな……。ミヤモト君たちじゃ力不足だし……」


「何だと江塚、葛城! てめえら、裏切るのか!」


「百合子! あなた私たちを馬鹿にするの⁉」


 そんな金切り声が響く。


「黙れミヤモト! もともと俺たちはお前たちを支持してたわけじゃねえ! 友達だとも何だとも思っちゃいねえよ! いつもいつも威張り散らしやがって! たまたま強いスキルをもらったからって何様のつもりだ!」


「うん、うん。そうだよヨシハラさん。それに実際、マサツグ君の方が正しいと思うし」


 あれは江塚陽介と葛城百合子か。


 どちらかと言えばクラスでは目立たない奴らだったはずだ。


 口さがなく言えば、馬鹿にされたり、邪険にされたりされるタイプの奴らだ。いわば、ミヤモトたちとは違う『非主流派』である。


「んだとぉ……。てめえら分かってんのか。俺に逆らってただで済むと思ってんのかよお」


「そうよ、百合子。さっさと謝りなさいよ!」


「イ・ヤ・だ・ね! いい加減、てめえらのわがままに付き合うのは沢山だ! そもそも、俺は勇者《兵士》なんてやりたくなかった! お前が勝手にクラスの代表面して承諾するから、いやいやここにいるんだ! もう、お前にはうんざりなんだよ! 俺はてめえの部下でもなんでもねえんだぞ!」


「そうだよ。それに、私たちだけじゃないんだよ。他にもたくさん、あなたたちの横暴にうんざりしてるクラスメイトがいるんだから」


「何だと⁉」「何ですって⁉」


 ミヤモトとヨシハラが目を剥いた。


 まさか、格下だと思ってたやつらに、こんな貴族たちの集まる場所で反乱されるとは思ってなかったのだろう。


 こういう奴らはメンツを大事にしている。


 看板に思いっきり泥を塗られたといったところだろう。


 まあ、自業自得だが。


「それくらいにしておいてやれ。大した実力もなく、頭がきれるわけでもない。ただ威勢がいいだけで大きな顔をしていた薄っぺらい奴らだ。日本ならそれも許されていたが、この異世界でそんなものは通用しない。実力だけが評価される厳しい世界に来たんだ。ミヤモト、ヨシハラ、お前たちは落第生なんだよ」


「なっ⁉」


「わ、私たちが……、私たちが落第生ですって……⁉ と、取り消しなさいマサツグ君! 言っていいことと悪いことがあるわよ! 私がまるで落ちこぼれ見たいに言うのはやめなさい‼」


 二人が憤然と抗議して来る。


 だが、俺は別に冗談を言ったつもりはない。至極、当然のことを言ったつもりだ。


 だからクスリともせずに淡々と、


「落ちこぼれ以外の何だと言うんだ? お前が決めた基準に、お前たち自身が達することが出来なかったんだ。自ら落ちこぼれだと名乗りを上げておきながら、落ちこぼれでないとは見苦しいとは思わないのか?」


 その言葉に二人はポカンとした表情を浮かべる。


 俺はため息を吐き、


「お前たちは他国からの侵略に対してこれを防衛するための兵士に志願したのだろうが? 正規兵では勝てない野蛮な敵に対抗するための国の盾……人柱になったのだろう? そして、今がまさにその時だ。お前たちは命をとして、この国難を乗り切らなければならない。それが、お前たちが請われ、承諾した契約じゃないか」


「なっ⁉ 俺はそんなつもりじゃ!」


「黙れ。王がしゃべっている途中だぞ? 城の兵士どもは何をしている?」


「は、ははっ。ミヤモト卿、黙らんか!」


「な、何だと⁉ 一兵士ごときが偉そうに! この俺を誰だと……。異世界から呼ばれた救国の……」


「黙れ、バカ者が! 王の御前であるぞ! そもそも、お前たちが国の危機を救うと言うから日頃のわがままも黙って聞いてやっていたのだ! それをいざ死者の軍勢が現れたら具体的な施策は何一つ打ち出せず、慌て騒ぐだけの始末! 異世界からの勇者か何か知らんが、恥を知れ‼」


「なっ⁉」


 俺は首を横に振りつつ、


「そこの兵士の言う通りだ。お前たちが国に庇護され、何ら実績も貢献もないまま、城でのほほんと無駄飯を食らえたのはなぜだと思っていたんだ? 異世界の勇者で、選ばれた者たちだと本気で思っていたのか? そんな訳がないだろう? そこの兵士の言った通り、お前たちは国の危機が発生した時、これを救うことが出来ると豪語していたからこそ、そうしていられたんだ。それが出来ないと分かった今、ミヤモトにヨシハラ、お前たちが落ちこぼれでないはずがあるまい?」


 お前たちにはもう何も期待されていないのだと告げた。


 が、ヨシハラがフンと鼻を鳴らし、


「な、なら別にわたしたちが、わたしだけが落ちこぼれって訳じゃないわ! このクラスのみんなが落ちこぼれって訳じゃないの! だってそうでしょ、全員、このピンチに対抗する術を持っていないんですもの!」


 そう言ってアハハと笑った。


「孤児の情操教育に悪いから黙っていろ」


 俺は嘆息してから、


「それに、さっき俺は言ったはずだぞ? 落ちこぼれとはお前たちのことだ。エヅカやカツラギはそうではない」


「なっ⁉ どういうことなの⁉ 彼らだってこの危機を救う力はないはずよ! なら、勉強ができる分だけ、あたしの方が上のはずだわ!」


「上とか下とか、俺にはよく分からんが……」


 俺は首を傾げつつ、


「クラスでテストの点数を競っていたいなら、布団にくるまって昔の夢でもみているといい。今、この場では不要なものだ。今は王である俺の元で、お前たちの力を振るう意思があるのかどうか。それが重要だ。今、目の前の迫る危機を乗り越えるにはどうすればいいのか。過去の栄光にしがみついていることを止めはしないが、そう言うのを社会では落伍者と言うのだ。いい加減目を覚まして、俺のスキルの支援を受け入れるがいい。誰しもが一人で生きられる訳ではない。結局のところ助け合いだ。優れているとかどうとか言う事も、最後は周りとの関係性こそが重要だ。今は俺に助けを請えるかどうかが、まあ、お前が好きな優秀かどうかの分岐点だと思うが?」


「お、俺はマサツグを支援するぜ!」


「わ、わたしも!」


「あたしもよ!」


 一方で、


「うるせえ! 絶対に認めねえぞ!」


「そうよ! そいつらと優秀な私たちを一緒にしないで!」


 と言う声が同時に上がった。


 マサツグ派が8割。反マサツグ派が2割と言ったところか。


 もともとミヤモトやヨシハラの派閥だった者も、一気に俺へと寝返ったようだ。


 ミヤモトたちがそいつらに向けて剣呑な目線を送っている。


 主流派と非主流派が俺の登場で逆転してしまったともいえる。


 当然のことだが、少し申し訳ない気もするな。もともと俺は、こいつらにさして興味がある訳ではない。今回の戦争に必要だったと言うだけだ。何も人間関係に水を差したいと思っていた訳ではないのだが。


 まあいいか。今回のことでこいつらも学んだだろう。いつまでも自分で考えずに周りがちやほやしてくれる子供の時代は終わっているのだと。


 俺は異世界召喚をされた時点で悟っていたがな。


 まあ、それにだ。


「今、俺に賛同してくれているメンバーだけで十分だ。恐らく俺の『守る』スキルの支援は単純な補助の方が純粋に増幅させやすい。ミヤモトやヨシハラのようなとがったスキルはどちらかと言えば邪魔なんだ。まあ、そう言う意味では、今後同じ事態が発生したとしても、カツラギたちの方がよほどこの国の役に立つということだな。さっき言った『エヅカやカツラギの方が優秀』というのはそう言う意味なんだが?」


 別に根拠のない感情論ではない。ただの事実である。


「な、何だと⁉」


「あ、あたしたちよりこいつらの方が……」


 二人がぎょっとした顔をしていた。


 恐らくまだ自分たちが優秀だと錯覚していたのだろう。


 だが、ここに評価の逆転が発生した。城の者たちの見る目が変わったのが分かる。


 城の者とて、クラスメイトたちの中でも誰が上か下かくらいは理解していたはずだ。


 しかし、こうして実際の危機に瀕した時にこそ人の真価が現れる。


 大きな危機の前に小さなスキルの差異など関係がない。


 俺という大きな力といかに協調し、大きな問題に立ち向かうことが出来るかこそが肝心だ。


 そう言った適応力こそが実は社会において最も重要なのだ。


 そうした事実が厳然とクラスメイトという甘ちゃんたちの前に立ち現れ、本当のヒエラルヒーを再構築してしまったというわけだ。


 まあ時間の問題だったのだろうが。


「では、実際に見せてやるとするか。エヅカは確か人型の敵に対して攻撃力を10パーセント底上げするんだったな?」


「ああ、そうだ。ヘッ、我ながらヘボスキルだぜ」


 エヅカが毒づく。10パーセント程度、しかも人型に限定して強くなったとしてどうするのだと。


 まあ、そうだな。


今までは。《・・・・》


 俺はニヤリと笑うと、エヅカにスキル適応を開始したのである。


ぼちぼち書籍版の絵も公開していけそうです。お楽しみに。

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