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65.軍議

65.軍議


「おい、騒がしいぞ、一体何があったんだ・・・って、テメェは、マサツグ!?」


「な、なんだと!? く、くそ!! どうしてナオミの奴がここに!?」


そう言って建物の角から慌てた様子で現れたのは、様子を見に来たクラスメイトのミヤモト、そしてイシジマであった。


また、後ろからはぞろぞろと他のクラスメイトたちも全員やって来る。


合計で30名いた。


ミヤモトはいじめっ子の主犯格であり、イシジマは表の顔は秀才、裏では人を陰湿な方法で蹴落として来た屑野郎である。


そんな二人が俺の姿を見るなり、敵愾心てきがいしんもあらわに睨み付けて来たのだった。


更に、他のクラスメイトたちも、俺をまるで親の仇のように見つめてくる。


だが、俺としては別にミヤモトも、イシジマも、それこそ他の者たちにも、特段思い入れはない。


格下の相手では張り合う必要もないし、会話をするだけ時間の無駄だろう。


俺はそう判断して、なぜかこちらを睨み付けて来る彼らを完全に無視すると、まっすぐに城内部へと通じる扉へと向かおうとしたのであった。


しかし、


「マサツグ、てめぇなめやがって!! 無視するんじゃねえ!! 」


「くそ、今日という今日は許さんぞ!! レブル山脈での屈辱、今こそ晴らしてやる!!!」


二人がそう青筋を立てて怒鳴ると、扉の前に陣取ったのであった。


はぁ、と俺はため息を吐いて口を開く。


「申し訳ないが、子供の遊びじゃないんだ。お前たちでは分からなんだろうが、もうすぐ本当の戦争がはじまる。俺は孤児院の責任者として、王に今回の戦争について、いろいろと打ち合わせをしなくてはならんのだ。分かったらそこをどけ。二人とも、もういい歳なんだから、分別をつけろ」


俺はそういって、彼らを戒めたのである。


だが、そんな俺の忠告を無視して、いやそれどころか、なぜか余計にいきり立った二人は、


「っ・・・!! 殺してやるぞ!! マサツグ、新しく頂いた聖剣のさびになるがいい!!」


「僕とミヤモト君との連携攻撃だ!! 驚く間もなく死ぬがいい!! らえ!! 黒き風の刃(エクスハティオ)!!!!!」


などと絶叫して、渾身の一撃を俺に向かって放ったのであった。


どうやら、ミヤモトのスキル『聖剣使い』と、イシジマの得意な『風魔法』とを組み合わせた合体スキルらしい。


漆黒の刃が死の予感を持って俺へと向かってくる。


だが・・・、


「やかましい」


俺はあっさりそう言うと、迫りくる黒い衝撃刃に対してデコピンをするかのように、人差し指で軽く弾いてやるのであった。


すると、その刃はまずミヤモトとイシジマの方へとまっすぐに向かい、


「んげ!?!?」


「ぎゃっ!!!」


という悲鳴をあげさせながら、二人をなぎ倒し気絶させたのである。


だが、それだけでは刃の勢いは止まらずに、ぶつかった衝撃で少し上の方に角度を変えると、そのまま城の上方へと命中し、城の最上階の天井部分に当たる一角を、“ドガァァン!!”と、見事にえぐり取ってしまったのだった。


「あの辺りは恐らく玉座の間あたりか」


俺はそんなことを呟きながら、気絶した二人をまたぐと、ゆっくりと扉を開けて城の中へと入って行こうとしたのである。


しかし、それを見ていた他のクラスメイトたちが一斉に憤慨し、


「くそ、なんてやつだ!!」

「ミヤモト君! イシジマ君! しっかりして!!」

「くそ、マサツグを止めるんだ!!」

「おい、とまれ!!!」


そんなことを口々に叫んで、俺に掴みかかってきたのである。


ある者は俺を羽交い絞めにしようとし、ある者は腕や足にしがみつく。


「ご主人様!!」


そう言って、リュシアが俺を助けるために駆け寄ろうとする。だが・・・、


「いや、かまわない。時間の無駄だ、このまま玉座の間に行くとしよう」


「・・・へ?」


彼女の唖然とした声が聞こえたような気がしたが、俺は30名近くの者たちにつかみかかられながらも、特に気にせず無視する。そして、彼らをそのまま引きずるようにして扉を開き、城の中へと入っていったのであった。




玉座の間は最上階にあり、俺はそこへと通じる扉を開けた。


ここには、召喚されてすぐの頃に一度通されているので、なんとなく道を覚えていたのだ。


かつて来たときは、絢爛豪華に飾り立てられた調度品や、重厚にしつらえられた内装に度肝を抜かれたものである。


だが今は、


「まずい、先ほどの突然天井が崩落したショックで、サラビ公爵様が卒倒されたぞ!!」

「ビルデルバ伯爵様もだ!! こちらは泡を吹いておられる!!」

「医者はまだか!!」

「ええい、こんな軍議に参加していられるか!! わしは所領に帰らせてもらうぞ!!」

「お、お待ちください、メジャ辺境伯殿!! そのような勝手をされては困ります!?」


何やら大混乱の様相を呈していた。


どうやら、先ほどのミヤモト、イシジマの黒き風の刃(エクスハティオ)のせいで、玉座の間の天井が大崩落したらしい。


恐らく貴族を招集しての緊急の軍議の最中だったのか、多数の豪華そうな服に身を包んだ老人や小太りの男たちが、驚きのあまり呆然としたり、泣きわめいていたのであった。まさに阿鼻叫喚の地獄絵図といった具合だ。


そんな中、俺はクラスメイト30名近くを引きずったまま、その場所に突如登場したのである。すると、


「な、なんじゃ貴様は!?」

「ここをどこだと心得ている!! 下賤な者が入れる場所ではないぞ!! ええい、兵どもは何をやっておるか!!」

「つまみだせ!! いや、取り押さえて拷問にかけよ!!」


などと口々に騒ぎ出す。


やれやれ、これでは話もまともにできない。


「おい、うるさいぞ、お前たち。この一大事に確固たる方針ひとつ決められないお前たちに代わって、尻拭いをしてやろうとしているんだ。少し静かにしていろ」


俺はそう言って、貴族たちに対して注意したのである。


だが、彼らは何を言われたのか分からなかったのか、一瞬ポカンとした表情になった後、


「だ、誰に対してものを言っておるか!!」

「ふ、不敬罪じゃ!! じきじきに処刑してくれる!!!」

「お前の様な者がなんの権利があってっ・・・!!」


などと、ゆでだこの様に顔を真っ赤にして、更にヒートアップした調子で口を開くのであった。


だが俺は落ち着き払い、「はぁ」と呆れてため息をく。


「まったく、呆れかえるほどの烏合の衆だな・・・。俺にとってはどうでもいいことだが、お前たちの国が亡ぶかどうかの瀬戸際に、ただ喚き散らすことしかできないとは・・・。しっかりとした反論も出来ないのなら、軍議の邪魔だ。口を閉じていろ」


「なんじゃと!! われら高貴な身分の立場の者にむかって、なんたる物言い!!!」


「その通り!! まずは格式に基づき、どの方が先陣をきるのか熟議を重ねねば・・・」


「やれやれ、敵は目の前に来ていると言っているのに。現実すら理解できていないようだな。やはりお前たちがいてもがんにしかならん。勝てるものも、勝てなくなりそうだ。静かにしろと言っているのに、そうできないならば、仕方ない」


と、もう一度ため息を吐いてから、しがみついていたクラスメイトの男を一人、片手で軽々と持ち上げたのであった。


そして、一番手前にいた豚の様な背格好をして、がなり立てている貴族に対し、そのクラスメイトを勢いよく投げつけたのである。


ドゴっ!!!!


と、そんな生々しい男が玉座の間に響いた。


「ぎゃっ!??!」

「ひげ!?!?」


どちらがどちらの悲鳴か判然としないが、哀れな悲鳴を上げて、二人の男が地面に倒れ伏す。


それを見ていた他の貴族たちから、


「ひいい!!??」


といった耳障りな悲鳴や、


「は、反逆罪じゃ!! すぐに牢にぶち込め。い、いいや、死刑じゃ!! 今すぐ死刑にしろ!! 貴族であるわしらに、こんなことをして只で済むと思っているのか!!」


といったがなり声が上がったのであった。


だが、俺は苦笑するだけで相手にせず、


「はい、次はお前な」


とだけ言って、新たに取り押さえようと掴みかかって来たクラスメイトを持ち上げたのである。


そして、不快な声を上げる貴族たちに向かって、手前から順番に、クラスメイトを次々に投擲とうてきしていったのであった。


「こ、こんなことをして、どうなるか分かって・・・ぎゃっ!?」


「こ、これは由々しき事態ですぞ!! しょ、処刑を!! 貴様だけではなく、一族郎党すべてを・・・んぎぃ!?」


「ひ、ひいぃいいぃい。い、今ならまだ許してやるからやめ・・・ぎぃやああ!!!」


と、貴族たちからは当初、強気な言葉が続いたが、地面に倒れ伏し、泡をふく者が次第に増え始めるにしたがって、


「お、お許しください!! し、静かにいたします!! ですから、ぶつけるのはやめてください!!」


「わ、私は他のバカな貴族どもとは違います!! 最初から逆らう意思など持っておりません!!」


「わ、私もです!!」


と、そんな恭順の意思を見せ始めたのである。


「はぁ」と俺は大きくため息を吐くと、


「バカどもが。幼稚なお前たちにもう一度だけ言うが、俺は王と此度のバルク帝国との戦いについて、尻拭いのために、話し合いをしに来ただけだ。お前たちのような端役が出る幕ではない。俺から下知げちがあるまで、隅で大人しく待っていろ。静かに待つ。子供でも出来ることだ。分かったな?」


と言ったのである。


すると、残った貴族たちは頬をピクピクとさせながら、


「ぐ、ぐぐぐ・・・、は、はい、申し訳ございませんでした・・・」


と、小さな声で返事を返して来たのであった。


声が小さいな・・・。


「分かったのか!!!」


と俺が大きな声で言うと、貴族たちは飛び上がって驚き、


「は、はい!! 申しわけございません!!!」


としっかりとした返事をするのであった。


そんな訳で10分もする頃には、少し賢くなった数人の貴族たちと、そしていまだに怨嗟の炎を瞳にともし、歯ぎしりをするワルムズ国王のみが、玉座の間にたたずむだけになったのである。


いつも沢山の評価・ブックマークをありがとうございます。

おかげさまで執筆がとても進んでいます。

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