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63.オリジナル”妖精の雫”

63.オリジナル”妖精の雫”


「オリジナルの妖精の雫・・・。だとすると、私がミストより与えられ、マサツグ様との戦いで使用した妖精の雫は、偽物だったというわけか?」


5魔皇のミラが驚いて言った。


妖精の王女パルメラはその質問に、


「その通りです。あれはレプリカにすぎません。だから副作用があったのです。そもそも、いくつも妖精の雫があるのはおかしいと思いませんでしたか? あれは大戦時に、やむを得ず作りだした即製の模造品(レプリカ)なのです。ミストはこの古城に隠してあったレプリカを本物と思っていたようですが・・・。本物は更にわかりにくい場所に隠していたのです」


と答えたのである。


「だとすると、オリジナルというのは・・・」


俺が呟くと、パルメラはコクリと頷く。


「はい。世界に一つしかない、極めて貴重なものとなります。伝説的、と言ってよいでしょう。我々妖精族は月の力を借りて生きる一族ですが、そんな私たちが数万年をかけて体内で生成、凝縮を繰り返して作り出すのが、妖精の雫なのです。すなわち、妖精の雫とは、月の魔力の結晶体(ルナ・ドロップ)です」


月の魔力か。それはすごそうだな。しかし・・・。


「そんな貴重なものを貰ってもよいのか?」


一族の宝の様な物ではないのだろうか?


だが、俺の質問に、彼女は首を横に振ると、


「いいえ。妖精族の掟にはこうもあります。もしも、我々、妖精族を含めた世界全体を導くべき者が現れたなら、ためらうことなく妖精の雫を与えるように、と」


そう言って俺の方を真剣な表情で見つめたのだった。


やれやれ、これは断っても、更にすすめて来そうだな。


「俺はそんな御大層なものになるつもりはないが、仕方ない、もらっておこう」


俺が苦笑しながらそう言うと、パルメラは嬉しそうに笑い、


「良かった! 最強である今のマサツグ様には無用の長物かもしれませんが、いずれきっと、役に立つ日が参りましょう。それまで肌身離さず、持っていてくださいね」


そう言って、俺に妖精の雫オリジナル・ルナ・ドロップを渡して来るのであった。


俺はその美しく透き通る宝石を受け取る。


すると、なぜか力が更に上昇したように感じた。


「あっ、それから言い忘れましたが、持っているだけでも相当ステータスが上昇するはずです。何せ月の力がそのまま込められておりますので、星一つ分の魔力だと思ってください」


そう言ってにっこりと微笑んだのである。


おいおい、そりゃとんでもない代物だな。


俺が持つ分には大した違いはないが、例えばミストがこれを手に入れていれば、数億倍の力を手に入れることになっていただろう。


星一つ分という言葉に嘘は無いようである。


「あ、あの、それから最後にですね・・・」


と、パルメラが改めて口を開いた。


なんだ、まだあるのか? さすがに貰いすぎのような気がするのだが・・・。


「その、次に月の魔力が満ちる夜まで待って頂く必要があるのですが、あの、ぜひともお受け取り頂きたいものがありましてですね・・・」


そう言って、やけにモジモジとしながら、頬を染め、ちらちらとこちらを上目遣いに窺って来るのであった。


「ん? 月の魔力が満ちる夜? それってどういう・・・」


と、俺が質問しようとした時、


「はい! 以上ですね! いやぁご主人様、いろいろと頂けて良かったですね!」


「その通りですね、マサツグ様。何事も貰いすぎはよくありませんから!!」


「そうよね~、私が3番目なんだから順番よね~」


「うむ、過ぎたるは及ばざるがごとしなのじゃ」


「帰ろうマサツグ。長居しては迷惑。留守にしている孤児院も心配」


「抜け駆けとは褒められた事ではありませんね」


と、少女たちが口々に言うのであった。


えっと、急にどうしたんだ?


「お姫様だけずっるーい」


「私だってマサツグさんのこと好きなのにー」


「そうだそうだー」


「不公平だぞー」


と、なぜか他の妖精たちも何やら不満を口にする。


うーん、さっぱり意味が分からんぞ?


そんなやりとりを見て、パルメラが深いため息を吐いた。


「うーん、さすがに無理でしたか。これはまたの機会としましょう。ところでマサツグ様。古城でとらえられていた妖精の一人から、興味深い話を聞いたのですが・・・」


興味深い話?


俺が首を傾げると、パルメラは先を続ける。


「はい。その妖精が申すには、ミストは“バルク帝国へ”妖精の雫を運ぶ準備を、捕虜にした妖精たちへ命令していたようです」


「バルク帝国へ?」


それは妙だな。


魔王国イシュタールを滅ぼすにあたり、邪神軍とバルク帝国は連合を組んでいたとは聞いている。だが、だとしてもエイクラム側からすれば妖精の雫をバルク帝国へわざわざ運ぶ理由はない。


それではまるで、バルク帝国の方こそが、エイクラム軍よりも上のようではないか。


・・・だとすれば、考えられるとすれば一つだ。


「バルク帝国はすでに邪神軍にのっとられている?」


俺の呟きに、ミラとエリンが同時に頷き、


「恐らくそうでしょう。奴らとの戦争の際も、バルク帝国側にかつて死んだはずの名将や騎士が多数参戦しているのを見かけました。また、かつてマサツグ様が滅ぼしたはずの諜報部たちの顔もです」


「きっと、マサツグ様がバルク帝国の諜報部を壊滅させ、帝国が弱体化した隙をついて、エイクラムが帝国を乗っ取ったんですよ!!」


と言ったのである。


なるほど、筋の通った話だ。


バルク帝国がすでに邪神の手に落ちているというのなら、妖精の雫をそこに運ぼうとしていたことにも納得がゆく。


それに、なぜ魔王国が弱体化していたはずのバルク帝国にあっけなく陥落したのか、ずっと気になっていたのだが、それが帝国をエイクラムが操っていたからだとすれば説明がつくのである。


「それにしても、やれやれ、妖精郷の問題が片付いたかと思えば、また新しい厄介ごとか」


俺は思わず苦笑し、肩をすくめたのだった。


「では、こちらから攻撃を仕掛けるのかの?」


そうラーラが聞いてくるが、俺は首を横に振り、


「いや、逆だろうな。今回、妖精の雫を奪取しそこねて、奴らは窮地に追い込まれた。だから必ずワルムズ王国へ攻めてくる。時間は奴らに不利に働くからな。こちらは受けて立つことになるだろう」


と答えのたのである。


「なるほどなのじゃ」


ラーラが感心した口ぶりで頷いた。


さて、そんなやり取りの後、俺たちはその日、一晩ぐっすりと、その古城で休眠を取ることとなったのである。そして、翌日の昼間には妖精郷を離れるために結界の裂け目へと帰って来たのであった。


「ふえーん、行かないでーマサツグ様ー」


「寂しいよ~」


「また絶対遊びに来てねー」


「約束だよー」


と、最後まで妖精たちに惜しまれながらの別れとなる。


妖精たちは呑気でお人よしというか、のんびりとした性格な奴らばかりで、俺としても居心地が良かった。彼女たちもこう言ってくれていることだし、本当にまた遊びに来るとしよう。


俺がそんなことを思って別れを告げていると、なぜかパルメラが首を傾げて、


「何を言っているのですか、みんな? ルナ・フェアリーの勲章の意味は、永遠の友人です。他種族とみだりに交流することは禁止されていますが・・・マサツグ様は別ですよ。あっ、もちろん、私も含めます」


と言ったのであった。


「・・・え?」


呆気にとられる俺にパルメラは頬を染めて微笑み、


「今後とも末永くお願いしますね。私の勇者様」


と言ったのである。


・・・と、そんなわけで孤児院には、なぜか日常的に、パルメラを筆頭に、妖精たちが遊びに来るようになったのである。


どうしてこうなった・・・。


まぁ、妖精たちはみんな可愛らしいから、孤児院が華やいで良いんだけどな。


いつも沢山の評価・ブックマークをありがとうございます。

おかげさまで、執筆が大変進んでいます!

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