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61.狂気の悪霊ミストとの戦い

61.狂気の悪霊ミストとの戦い


「くくく、うまくかわしたか・・・。さすが序列10位を倒しただけある。お前たちがエイクラム様がおっしゃっていた、勇者マサツグとその一行というわけか・・・。ふ、だが、そう何度もうまくいくかな? 私の攻撃は別次元からの必殺の一撃。奇跡は何度も起こらぬ。いつかは私の方に勝利が転がり込んでくるだろう」


姿は見えないが、深く沈んだ不気味な声だけがどこからかとどろいた。


だが、俺はそんな言葉に呆れ返りながら、


「ふむ、お前がエイクラムの腹心というミストか。次元を操るとは恐るべきスキルだとは思ったが・・・。しかし、肝心の持ち主のオツムが足りていないようだな。お前は今、自ら敗北に向かって突き進もうとしているんだぞ? 身の丈に合わないスキルを持って振り回されている哀れな亡者といったところか。慈悲をやろう。諦めて投降しろ。そうすれば許してやる。お前ごときには、そのスキルは使いこなせん」


そう親切にアドバイスしてやったのである。


だが、奴は、


「!? き、貴様っ、このゴーストの最上位、マッドネス・ゴースト(狂気の悪霊)のミストをつかまえて何たる暴言。許せん!!! 私の次元外からの攻撃に怯えたまま逝くがよい!!!!」


たちまち憤慨すると、攻撃して来る気配を見せるのであった。


ふうむ、なるべく穏便に済ませたかったのだが、どうやらはなから相手は聞く耳を持つつもりはないようだ。


「死ねい!!!!」


そんな叫び声とともに、今度はラーラに対して、異次元からの斬撃が加えられたのである。


「くっ!??!?」


なんの前触れもないミストの異次元からの直接攻撃ディメンション・アタックに、彼女はすべもない。


「魔王様!!!」


俺の両腕に抱えられたミラが悲鳴を上げた。


他の少女たちも焦るばかりで、有効な行動を取ることができない。


俺だけが・・・。


そう、「守る(改)」というスキルを持つ俺だけが、次元の揺らぎを察して、瞬時にくラーラへと駆け寄っていた。


そして、刹那よりも更に何兆分の1という、ちりにも等しいわずかな時間、俺たちのいる次元とミストがいる別次元が、異次元からの直接攻撃ディメンション・アタックのためにつながる一瞬の時を見極め、俺はその次元断層へと手を伸ばしたのである。


ガシッ!!!!


「な、何だと・・・っ!??!?」


そんな狼狽や焦燥がないまぜとなった哀れな悲鳴が、次元の断層からかすれた声として、俺の耳へ届いた。


そう、それは別次元へと逃げ込み、卑怯にも隠れながらこちらを攻撃してきた雑魚ゴーストのミストが、俺に次元を越えて腕を掴まれたことに対する驚愕の叫びだったのである。


奴は何が起こったのか理解できぬようで、次元の裂け目の向こうで目を白黒とさせているようであった。ちなみにその姿はゾンビのような姿に赤色のぼろぼろのローブを羽織っている姿だ。


「バカな奴だ・・・。悪鬼エイクラムの腹心ミストよ。異次元からの直接攻撃ディメンション・アタックと言っても、それは攻撃のためにそちらとこちらの次元同士をつなげるということだ。すなわち、一瞬といえども、お前が俺の前にその姿を現すということに他ならない。逃げ隠れするには有効なスキルだが、俺と対等に戦うには致命的な欠陥を持つ、全く使えない臆病者のためのスキルという訳だな。ふふふ、さっきはお前の身の丈に合わない、などと言ったが訂正しよう。お前の様な哀れな臆病者にはお似合いの、へぼスキルだ」


そう言って、ミストの次元を操るスキルを、いかにして攻略したのか説明してやったのである。


やれやれ、こうして捕まえてしまえば、次元の断層は閉じないようだな。


あとはこのまま倒して終わりだ。


古城も元の空間に戻って来るだろう。


「す、すごすぎます、ご主人様!」

「た、たしかに攻撃をしてくるという事は次元間がつながるということ。盲点でした」

「でも、次元同士がつながる瞬間なんて、本当に一瞬よ~」

「うむ、それを見極めるマサツグ殿が異常の様な気がするのじゃ」

「さすがマスター」

「主様、素敵です」


少女たちがそんなことを言ってくる。


「お前たちだって、修行を積めばこれくらい出来るようになる。目で見ずに、体で次元の揺らぎを感じるんだ」


俺はそう言って説明するが、彼女たちは苦笑いを浮かべたり、首を傾げたりすると、


「う、うーん」

「え、えっと、頑張るのじゃ!!」

「次元の揺らぎ・・・むむむ・・・」


などと、半ばうめき声を上げるのだった。


うーん、本当にそれほど大したことじゃないんだけどなあ。


「く、くそう!! ならば奥の手だ!!!!」


と、そんなやりとりをしていると、ミストが突然声を張り上げた。


すると、俺たちの周囲の空間が揺らぎ始めたのである。


「ふ、ふははは!! ど、どうだ驚いたか!! これからお前たちを空間ごと切り取り、ランダムに異次元に飛ばしてやる!!! 私を倒そうとも、この次元振動は止まらぬ!! 次元の狭間を永久に彷徨うことになるだろう。永遠の時間をこのミスト様に逆らったことを悔いて過ごすがいい!!! だ、だが、私にこの奥の手を使わせたことは褒めてやるぞ!!! ふははっはは!!!」


俺はそんな耳障みみざわりな哄笑こうしょうに顔をしかめる。


そして、


「うるさいなあ。耳元で叫ぶな」


それだけ言うと、ミストをこちら側の次元へと引っ張ったのである。


「え?」


そんな間抜けな声を奴が上げるが、俺はかまうことなく、


「お前たち来い!」


と少女たちに向かって告げたのだった。


さすがに彼女たちの行動は早く、一瞬で俺の元にやって来る。


そして、ミストと入れ替わるように、俺と少女たちは、古城が隠された異次元へと退避したのであった。


次元振動の影響範囲がどの程度かは知らないが、別次元にはさすがに影響はないだろう。


場所を入れ替わったことを確認し、俺がミストを掴んだ腕を離す。


すると、ラインの切れた次元同士が復元力によって、瞬時に断層を修復し始めた。


別々の次元へと戻ろうとしているのだ。


「ま、待ってくれ!? このままでは私が別次元を永久に彷徨さまようことに!? わ、私もそちらへっ・・・」


だが、ミストの言葉を最後まで聞くことは出来なかった。


奴が言い終わるのを待たずに、次元の断層は修復され、こっちとあっちは再び、元通り別の次元となったからである。


「やれやれ、救いようのないアホだった」


俺がそう嘆息して後ろを振り向くと、巨大な建造物があった。


なるほど、どうやらこれがエイクラム軍が拠点を置くという古城というわけか。


俺がそんなことを思っている内に、周囲の景色がブレ始めた。そして、しばらくすると、俺たちが元いた次元へと、古城ごと復帰したのである。


恐らく、異次元へ古城を移動させていたミストの魔力が届かなくなり、スキルが維持されなくなったのだろう。


ともかく、こうして俺たちはついに古城へと到達することが出来たのであった。


いつも沢山の評価・ブクマをありがとうございます。

お蔭さまで執筆が大変進んでおります。

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