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54.妖精郷を取り戻せ!

54.妖精郷を取り戻せ!


「あそこが結界の裂け目か・・・」


俺の言葉に、肩に乗った妖精の王女パルメラが頷いた。


「はい。1000年前の大戦時に劣化した箇所を破られたようです。修復すれば再び妖精郷に平和が訪れますが、それには時間がかかります」


「見張りがいるようだな」


俺たちの潜む先には、スケルトンの兵士たちが10体以上、立哨りっしょうしているのであった。


「くっ、なんとか見つからないように切り抜けなくては・・・」


パルメラが呟く。


だが、俺は彼女の言葉を聞き流すと、茂みから立ち上がり、結界の裂け目へと歩き始めたのである。


そして、見張りがこちらに気づいた瞬間には、


「これで全部だな?」


全てのスケルトンたちを、文字通り叩き潰していたのであった。


「・・・へ?」


妖精の王女様が少し間抜けな声を上げた。おいおい、威厳がなくなっているぞ?


「い、いつの間に・・・。ど、どうやって!?」


彼女は驚嘆した様子で質問して来る。


「いや、単に早く動いて、攻撃をしただけだが?」


俺は淡々と事実を告げる。


「なっ・・・!? た、ただ、それだけ? 早く動いて、攻撃した、それだけ・・・?」


彼女は信じられないとでも言うように、目を丸くするのであった。


「パルメラさん、これくらいで驚いていたら、キリがないですよ?」

「そうです。マサツグ様の力はこんなものじゃないんですから」

「そうよね~、精霊神の私でさえ計りきれないくらいなんだから~」

「この世界で一番強いからのう」

「マスターは最強」


とリュシアたちもフォローしてくれる。


・・・が、まぁ、幾ら口で説明しても、なかなか理解することは難しいだろう。


俺のこうした非常識さには、徐々に慣れて行ってもらうしかあるまい。


「で、でも、と、とにかく凄いですっ・・・! 勇者様の力があれば、妖精郷を取り戻せます!!」


と、ややショックから立ち直ったパルメラが、今度は尊敬の眼差まなざしをたたえて、俺を見つめてくる。


「ああ、任せておけ」


俺が深く頷くと彼女は、


「はい!」


と、信頼に満ちた返事を返してくるのであった。


さて、俺たちはそんなやりとりをしながら、結界の裂け目をくぐり、妖精郷の中へと入って行ったのである。


そうして、俺たちがしばらく進んで行くと、邪神の部下たちが多数、森の中へ攻め込んでいる風景に出くわした。


どうやら、そこに作られた妖精の集落に対して、攻撃を仕掛けているらしい。


妖精たちも魔法で対抗しているようだが、数が違う。


邪神側はスケルトンやゾンビ、スカルドラゴンなど総勢1000はいるのに対して、妖精側は気配からして100程度。ほんの10分の1しかいないようだ。


「カーッカッカッカ!! 無駄な抵抗はやめろ、妖精ども!! 大人しくエイクラム様の捕虜となるのだ!! まあ、重労働をさせた後は、動けなくなった者から処刑するだけがなぁ!!」


指揮官と思われる、黒いスケルトンの口から、そんな耳障みみざわりな声が聞こえて来た。


どうやら妖精たちに悪逆非道の限りを尽くすつもりらしい。


「何てひどいこと・・・助けなくては・・・。でも敵の数が余りにも多い・・・。闇雲やみくもに動く訳には・・・ああ、どうすればいいの」


パルメラが悩んだ様子で言った。


確かに一々倒していては、援軍を呼ばれるかもしれず、また、勝てるにしても時間が掛かり過ぎ、それまでに妖精たちが多数の被害を受けてしまうに違いない。


・・・だが、まあ何とかなるはずだ。


俺はそう考えて、悩むパルメラの頭を撫でてやる。


すると、最初そうされる事に慣れていないのか、少女は驚いた顔をしていたが、すぐに安心した様な表情を浮かべるのであった。


どうやら、俺の事を信頼してくれているらしい。


何だかちょっと頬が赤いのは照れ臭いのだろう。


「さて」


と言って、俺はエイクラム軍に向き直る・・・が、


「ご主人様、私たちの準備は出来ています」


そう言って、気合の入った様子でリュシアが隣にやって来たのである。


どうやら突撃する気まんまんの様だ。


後ろに並ぶ他の少女たちも、いつでも魔法を放てる臨戦態勢のようである。


「待て待て、お前たち」


俺は若干呆れながら、血気盛んな少女たちをなだめる様に言う。


「突撃しても負けはしないだろうが、それでは大きな意味で勝利にはならない。なぜなら、俺たちの勝利条件は、妖精たちを無傷で救うことなんだからな」


「な、なるほど」「そ、そうですね」


少女たちが恥じ入った様に頷く。


その横で、俺はこぶしを握ると、地面に狙いを定めたのであった。


「ご主人様、それは・・・?」


リュシアや他の少女たちが首を傾げて聞いて来る。


「ああ、これはな・・・こうやるんだ!」


俺はそう言って、力をこめて地面に拳を叩きつけたのだった。


すると・・・、


バキィッ!!! バリバリバリ!!! ベキベキベキベキィ!!!!!


そんな大音声とともに、大地は割れ、生々しい地層が見えるほどパックリとした裂け目を生じさせるのであった。


最早、それは単なる地割れではなく、一個の谷と言っても良いほどのものである。


そして、その地割れは俺の足元から真っ直ぐエイクラム軍の方へと伸びて行き、


「うわー!?!? い、いきなり地面が裂けたぞ!?!??!」


「た、助けてくれ、手、手を!!?」


「ぎゃああああああああああああ、お、落ちるぅぅぅううぅううううう!!!!」


今まさに妖精たちを攻めようとしていた兵士たちを、地の底へと飲み込んで行ったのだった。


「どうだ?」


俺が少女たちに振り返って言う。


だが、彼女たちは一様に、


「・・・」


と、唖然とした表情を浮かべるだけなのだった。


あれ、どうしたんだ?


俺が首を傾げていると、リュシアが、


「あの、大変申し上げにくいのですが・・・それは多分、ご主人様にしか出来ない方法だと思います・・・」


と困った顔で言うのであった。


「あ、あれ? そうか?」


俺が焦った様に問い返すと、他の少女たちもやはり、


「地面を割るなんて事、マサツグ様以外、出来るはずありませんよ」

「私もあんな光景生まれて初めて見た~」

「わしも度肝を抜かれたわい」

「マサツグの常識はおかしい」


と、苦笑いを浮かべながら言うのであった。


うーん、そうかなあ。これくらいお前たちなら出来ると思ったんだが・・・。


まあ、いいか。


「さあ、ともかく、大勢は決した。後は妖精軍と協力して残党狩りだ。行くぞ、お前たち」


俺が仕切り直す様に言うと、彼女たちも気を取り直し、


「はい!!」


と返事をするのであった。


そうして程なく、邪神軍は壊滅したのである。


いつもたくさんの評価・ブクマをありがとうございます。

おかげ様で執筆快調です。

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