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53.妖精の王女パルメラ

53.妖精の王女パルメラ


俺たちが高原でカレーパーティーをしていると、一匹の妖精がパタパタと飛んできた。


その妖精はブロンドの頭にティアラ、服はドレスと、何だか高貴そうな格好をしている。身長は15cmくらいだろうか。


ただ、何だか疲れて切っているのか、フラフラとしており、今にも落下してしまいそうである。


・・・と思っているうちに、もはや力が出ないのか、羽の動きが止まって落っこちそうになる。


「あっ!?」


少女たちが声を上げる。


・・・が、その声は悲鳴ではない。


すでにその妖精の体を、一瞬で移動した俺が受け止めていたことに対する驚きの声であった。


「さすがご主人様、すごい・・・全然見えませんでした・・・」


「私たちもマサツグ様のおかげで随分強くなっているはずなのに・・・」


そんなことをリュシア、エリンが感嘆しながら言う。


久しぶりに力を使ったため、驚かせてしまったらしい。


だが、やれやれ、今は俺の力の大きさの事などどうでも良い。まずは、この弱っている妖精の方が先である。


「おい、大丈夫か?」


俺はそう言って、腕の中で朦朧もうろうとした様子の妖精へ声を掛けたのだった。


「ん・・・あ、ああ・・・。私は気を失って、地面に落下したはず・・・。なのに無傷ということは・・・まさか、あなた様が助けてくださったのですか? で、でも、あんなに遠くにいらっしゃったのに・・・」


妖精もまた驚いた様子で俺に質問して来る。


「俺の名前はナオミ・マサツグだが・・・。大したことじゃない。単に普通に移動して受け止めただけだ」


俺は淡々とそう返す。


しかし、妖精は更に目を見張ると、


「あ、あの距離を一瞬で・・・!? し、信じられない・・・」


そう言って、息を飲むのであった。


そんな風に驚いた様子を見せる妖精であったが、自己紹介もしていないことに気づいたのか居住まいを正すようにすると、


「失礼しました。私はこの山にある妖精郷の王女パルメラと申します。このたびは危ない所を救って頂き誠にありがとうございました」


そう言って、深々と頭を下げたのである。


「礼を言われるほどのことじゃない。それに、王女様ならあまり簡単にあたまを下げるべきじゃないんじゃないか?」


俺は苦笑してそう言うが、パルメラは首を横に振りながら、


「いえ、わたしも妖精族をまとめる立場の者。誰に頭を下げるべきかは、心得ているつもりです」


と言って、改めて感謝の意思を込めて、お辞儀をして来るのであった。


「やれやれ、大げさなお姫様だ。そんなことより、何かあったんじゃないのか?」


俺がそう問いかけると、たちまち妖精の少女は慌て出し、


「そ、そうなのです! ナオミ様お願いです! どうか我々の妖精郷をお救いください!」


と訴えて来たのである。


「おいおい、急にどうしたっていうんだ。それだけ聞いてもわからないぞ?」


俺が困った顔をすると、パルメラは、


「す、すみません・・・」


と謝りつつ説明を始めたのであった。


話を聞くとどうやら、数日前に妖精郷の結界が一部破られ、邪神の部下たちが攻めて来たのだそうだ。そして、瞬く間に妖精郷を占領しようとしている状況らしい。妖精たちは散り散りになり、王女であるパルメラは部下たちの手引きもあって、なんとか援軍を求め、ここまで逃げて来れたのだという。


「彼らは妖精郷にある、妖精の雫、というアーティファクトが狙いのようでした。それを体内に取り込むと莫大な力が手に入るからです。何やら、善神オルティス様だけでなく、異世界から召喚された真の勇者を倒すためにも、強大な力が必要なのだ、と言っていました」


なるほど、その真の勇者とやらは、恐らく俺のことなのだろう。邪神と俺を巡る大きなうねりが、世界を巻き込みつつあるのだ。


「お願い致します!この窮地を救えるのは、ナオミ様だけなのです!! お礼は何でもさせて頂きます!! ですから、何とぞ私の故郷を救ってください!!」


そう言って、妖精の王女パルメラは、小さな手で俺の腕に取りすがるのであった。


「それはいいが、どうして俺なんだ? 俺たちは初対面のはずだろう? 確かにさっき、一瞬で君の元に移動し、助けはしたが、それだけで・・・」


俺は当然の疑問を口にする。


しかし彼女は、何を当然のことを、といった表情を浮かべると、


「妖精はこの世界の自然意思として存在しています。だから、普通の方々では見えないものが見えるのです。ナオミ様、あなたはこの世界の人間ではありませんね? 普通では持ち得ない特別なオーラと、そして大きな運命の存在を感じます・・・。先程、私は一目見た時から分かっていたのですよ? あなたこそが邪神を倒し世界を救う運命にある、異世界から来た真の勇者様なのでしょう?」


と言うのであった。


ふむ、バレていたのか。しかし俺としては孤児院の経営だけに専念したいのだが・・・。


「お願いします!! 勇者様!!!!」


・・・そうは世界が許してくれないようだ。ううん、困ったな・・・、どうしたものか。


俺が歯がゆく思っていると、孤児院の少女たちが口を開いた。


「仕方ありませんよ、ご主人様」


「リュシア?」


何を言い出すのだろうか? 俺が首を傾げていると、エリンが、


「そうですね。仕方ないです」


とウンウンと頷きながら言う。どういうことだろうか?


「そうね~、マサツグさんは孤児院の院長さんだけの存在にしとくのは難しいわね~。いつも独占しちゃってて悪いから~、たまには世界にも返して上げないとね~」


シーもか。どういうことだ?


「いい加減観念せい。マサツグ殿の力を考えれば、孤児院だけに留まっていて良い存在でないことは明白じゃ。どうしても、世界がマサツグ殿を必要してしまうのじゃよ」


「でも、世界を救い終わったら院長に戻って欲しい。臨時的に救世主になるだけ」


などとラーラやクラリッサも言うのであった。


ふうむ、そうか・・・。俺としては気が進まないのだが、彼女たちにこうまで言われてはしょうがないか。


それに、いちおう世界を救うことが、孤児院を守ることにつながるしな。


そう考えれば、邪神の下僕たちを撃退することも必要なことではあるのだ。


非常に面倒ではあるが、雑草抜きのようなものだと思って励むとするか。


「・・・案内を頼めるか?」


俺の言葉に、妖精の王女パルメラはニコリと微笑んで頷いたのであった。


初心にかえって書きました。

少し守りに入っていたようです。いけませんね・・・。


いつも沢山の評価・ブクマをありがとうございます。

お陰様で執筆がとても進んでおります。

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