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51.ポーションを作ってみよう! 後編

51.ポーションを作ってみよう! 後編


「どれどれ?」


と言いながら、俺はシーがヒュプノス草から調合したポーションを鑑定する。


すると、


「睡眠のポーション(下級(・・))」


飲むと睡眠の効果を与えることができるポーション。魔力液とヒュプノス草を調合することで作成される。


・・・とのことであった。


「えへ~、私不器用だけどマサツグさんの言うとおりにしたら、本当に一回で成功できたよ~」


そう言って、シーが俺にニコニコと微笑みかける。


「ああ、上手く出来たな。すごいぞ」


俺も彼女を褒めてやる。


・・・が、なぜかシーはニコニコとしたまま、何かをジーッと待っているのであった。


一体どうしたのだろう?


俺が理解できずに首をひねっていると、徐々にシーの表情が曇ってくる。


そして、


「マサツグさん酷いよ~、私もアレやって欲しい~」


そう言って、ぐずり始めるのであった。


・・・もしかして、他の少女たちにやったみたいにでて欲しいということだろうか?


うーん、だがなぁ・・・。


「俺みたいな若造に撫でられても良いのか? 精霊神っていう立場もあるだろうし、それに長い時間を生きているんだろう?」


俺は困惑して言う。


だが、彼女は常には無い強い調子で、


「良いに決まってるよ~! それに精霊神の立場は今はどうでも良いの~、ねー、そんな事より早く早く~」


と言うのであった。


うーむ、いつもノンビリとしているシーが、ナデナデぐらいでこれほど強硬な主張をするとは、ちょっと意外だったな。


きっと、人に撫でて貰うのがとても好きなのだろう。


俺はシーのリクエスト通り、美しい水色の髪をかすよう撫でながら、


「封印される前も、よくこうして貰ってのか?」


と何気なくそう質問する。


だが、シーはとろけるような顔をしながら、


「え~? マサツグさん以外の人に髪の毛を触らせたりする訳ないよ~。それこそ善神オルティス様にだって触らせたこと無いんだから~。撫でてもらったのはマサツグさんが初めてだよ~?」


と答えるのであった。


あれ? 撫でられるのが好きなのだと思ったが、違うのか?


俺は首をかしげながら、気持ちよさそうにするシーの頭を撫で続けるのであった。


さて、そのナデナデについてはシーから再三の延長の申請があったが、他の少女たちから、


「シーちゃん長すぎ! ずるい!!」


といった声が上がり、やっとシーが俺の膝の上からどく。


「マサツグ、次はわたし」


そう言って、次はドワーフの少女クラリッサが、別の素材を持ってきた。


松の様なトゲトゲとした葉っぱだ。


「私も調合したことがない種類の物だから、何が出来るか分からない」


とのことであった。


なるほど、それは楽しみだ。


俺は早速、鑑定スキルを発動させる。


すると、「シランスの葉」と出た。


彼女はそのシランスの葉をポーションにするため、早速俺の膝の上によじ登る。


・・・なんで俺の膝の上がポーション作りの定位置になっているのか分からないが、まぁ、考えても仕方あるまい。


ともかく、彼女はさすが職人らしく、薬研やげんを手に取ると慣れた手つきで作業を開始する。


どうやら、俺が何か言う必要はなさそうだな。


だが、そう思って黙って見守る俺に対し、クラリッサから、


「ちゃんと手を握ってアドバイスして欲しい」


と、何やら不満の声が上がったのであった。


「いや、そう言われてもな・・・。さすが本職だけあって、俺が何か言える余地もなさそうなんだが・・・」


俺は困惑した口調でそう返事をする。


だが、クラリッサははっきりと首を横に振ると、


「そんな事は無い。・・・・・・・・・えっと、例えば、マサツグの方が手が大きいから、私の手を握ることでしっかりと素材を磨り潰す事が出来る。それから・・・それから・・・・・・、あっ、そう、それに本職と言ってもまだ私も若輩じゃくはい。物づくりの才能があるマサツグに違った視点からアドバイスを貰うことは非常に有益。むしろ必須」


と、どこか必死な調子で言うのであった。


何だか言っている理屈も、今考えたかの様な、よく分からない内容な気もするが・・・。

まぁ、とは言え、本職の職人がそう言うのだから、そうなのだろう。


俺みたいな素人が口を出すべきではあるまい。


そう考えて、とりあえず俺は後ろから小さな彼女を抱きしめる様な体勢になり、手を握るのだった。


すると少女の口から、


「マスタ・・・」


という、何だか甘い声が漏れたのである。


ガラス作りの時もそうだったが、やはり少しくすぐったいのだろう。


俺はそんな事を思いながら、彼女の作業を邪魔しない範囲で手伝うのであった。


そうして、しばらくするとシランスの葉の粉末が出来上がった。


クラリッサは職人らしく、それを素早く魔力液と混ぜる。


すると、両者の反応が起こり、淡い光が広がった。調合が完了したのだ。


俺は早速、彼女の作ったポーションを鑑定する。


すると・・・、


「沈黙のポーション(中級(・・))」


飲むとかなりの時間、沈黙の効果を与えることができるポーション。魔力液とシランスの葉を調合することで作成される。作成には一定の才能と熟練度が必要。


おっ、中級か。さすがドワーフだなあ。


「やったな、 中級のポーションが出来たみたいだぞ?」


俺は喜んでクラリッサに報告する。


だが、その言葉に彼女は信じられないとばかりに目を丸くして、


「嘘・・・、私にはまだ作れないはずなのに・・・」


と言うのであった。


ん? どういうことだ?


俺が理解できずに首をかしげていると、エリンが口を開いた。


「中級のポーションを作るためには、長年の修行と才能が必要なんです。クラリッサちゃんくらいの年齢だと、中級ポーションを作る事はまず不可能です。そう、普通であれば・・・」

えっ、そうなのか? だが、だとすると・・・、


「なんで今回は作れたんだろう?」


俺は素朴な疑問を口にする。何も特別な事はなかったはずなのだが・・・。


しかし、エリンには答えが分かっているらしく、確信めいた表情で頷くと、


「原因はマサツグ様ですね」


と言ったのである。


えっ、何でそこで俺なんだ?


驚く俺をよそに、エリンは単なる事実だとばかりに淡々と続ける。


「恐らく、マサツグ様に備わっている”指導者”としての才能が関係あるのでしょう。元々物づくりの熟練度と技能のあったクラリッサちゃんが、今回、マサツグ様のアドバイスを受けたことで、一気に中級ポーションを作成することに成功したんですよ!」


そう言って、俺のことを尊敬の眼差しで見つめるのであった。


だが、俺は苦笑いを浮かべると、


「おいおい、そんなわけないだろう? きっと、クラリッサのポーション作りがうまかっただけさ」


そう言って首を横に振ったのである。


だが、そのやりとりを聞いていたリュシア、シー、ラーラが口をそろえて、


「いえ、ご主人様のおかげで間違いありません」


「私もそうだと思うよ~」


「うむ、魔王として断言するのじゃ」


などと言うのであった。


「おいおい、お前たちまで一体どうしたんだ?」


俺は呆れた調子で言う。


だが、少女たちはしごく真面目な様子で、


「初心者である私が一回でポーション作りに成功するなんて考えられません。ご主人様のアドバイスのおかげだと思います!」


「私もすごく不器用だから~、マサツグさん無しで成功なんてありえないよ~」


「わしだってガサツな方じゃからなぁ・・・。マサツグ殿のおかげで違いないのじゃ!」


と口々に言うのである。


うーん、そうかなぁ。単にみんなが頑張ったからだと思うのだが・・・。


俺はやはりまだ納得できずに、困り顔を浮かべるのであった。


すると、そんな俺の様子を見た少女たちは、一斉に大きな溜息ためいきき、


「何でご主人様はご自分のことになると評価が低くなるのでしょうか・・・」


「本当に凄いのに勿体無もったいないです」


「まあ、そこが良い所かもだけどね~」


「わしとしては歯がゆいのじゃがなぁ。早く身の丈にあった地位に登るべきじゃろうに」


「ドワーフ族にすら受け入れられるほどの技術だと思う」


と、何だかよく分からないことをブツブツと呟くのだった。


ふうむ、言っている内容はよく聞き取れないが、どうやら俺の態度が話題らしい。


まぁ、それなら大した内容ではないだろう。


俺のことなど別に話して楽しいものでも無いだろうしな。


そんな訳で俺は、


「さ、そんな事よりも、次にポーションを調合するのは誰だ? 順番としては、次はエリンの番だが・・・」


と言って、さっさと話題を変えてしまうのであった。


少女たちは最初、やや不満そうにしていたが、なぜか俺の顔を眺めてから、


「しょうがないなぁ・・・」


と何だか優しげな表情を浮かべると、おとなしく山登りを再開するのであった。


・・・うーむ、彼女たちの表情は一体どういう意味なのだろうか?


俺は首を傾げつつ、おしゃべりをしながら先行する少女たちのうしろを追いかけたのである。


そうして、しばらくするとちょうど太陽がてっぺんに上ったあたりで、山の頂上に着いた。


開けた高原の様な場所である。お昼にするにはちょうど良さそうだ。


エリンのポーション作成がまだだが、まぁ昼食の後で良いだろう。


俺はコッヘル(携帯用の鍋)を広げると、早速調理に取り掛かったのであった。

いつも沢山の評価・ブクマをありがとうございます。

お陰様で執筆が進んでいます!

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