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43.借金取りを追い返せ!

43.借金取りを追い返せ!


突然乱入してきたチンピラは、スキンヘッドと無精ひげを生やした二人組であった。


彼らは俺たちがいることに気づくと、


「おう、ニーチャン、悪いことは言わねえ。この店はやめときな」


「そうそう、痛い目にあいたくなきゃ、とっとと違う店に行くんだな。そうだな、3軒隣のコルステン家の店なんかおすすめだぜえ?」


そう言って、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながら絡んできたのだった。


俺が何かを言う前に、クラリッサが口を開く。


「やめて。私に何をしようが構わないけど。お客さんに迷惑をかけないで」


そんな言葉に、チンピラたちはニヤついたみを更に深めると、


「だとよ、どうする?」


「そうだなぁ。んじゃあ、せいぜい店を痛めつけるだけにしとくか」


そう言って、彼らは笑いながら近くにあった机を蹴飛ばしたり、机の上にあった書類などを乱暴に地面へぶちまけたりする。


「おら、こいつもだ!!」


スキンヘッドが棚に飾られている、小ぶりのナイフに手を伸ばした。


「やめて。それはこのお店の商品」


「やかましい!! 生意気な口は借金を返してから言うんだな!!」


そう言って、手に持ったナイフを地面に叩きつけて壊そうとする。


しかし・・・、


「あ、あれ・・・???」


いつの間にか、男の持っていたナイフがなくなっていたのだった。


男は混乱しきった様子で、しきりに首を左右に捻ると、どこかに行ってしまったナイフを必死で探す。


そして、


「ああ!?」


と悲鳴の様な声を上げたのである。


それはそうだろう。


なぜなら、5メートルは離れて立っていたはずの俺の手に、自分の持っていたはずのナイフがおさまっていたのだから。


「て、てめえ!! な、何をしやがった!! どんな手品を使いやがったんだ!?!??」


男は動揺した声で怒鳴どなり散らす。


やれやれ、あの程度の動きさえ見えないとは、話にならないな。


俺はスキンヘッドの質問には答えず、ただただそのレベルの低さに失笑し、溜息を漏らすのと同時に肩をすくめ、無視したのであった。


だが、なぜか俺のそんな仕草に男は激高し、


「ば、馬鹿にしやがってええええええ!!!」


そう言って殴りかかって来たのである。


はぁ、と俺は再び溜息ためいきく。


かわすのが非常に面倒だからだ。


何せ、攻撃と認識することすら難しい相手の行動なのである。


真面目に対応しろという方が難しい。


だが、やれやれ、いちおう相手も必死だ。


目を血走らせ、歯を食いしばり、必殺の一撃とばかりに全力で俺に殴りかかってきている。


いちおう、よける動作くらいしてやるのが、最低限の礼儀だろう。


俺はそんなことを思いつつ、億劫おっくうな気持ちで、ゆっくりと行動を開始しようとした、その時である。


孤児院の少女たちが、俺の前に立ちふさがり、


「ご主人様に何するんですか!!」


「マサツグ様に汚い手で触らないでください!!」


「わたしのマサツグさんの前に立つなんて~、一億年以上早いわよ~?」


「わしのマサツグ殿に近寄るでないわ!!」


と言って、見事なカウンターを食らわせたのである。


「ぐぺぁ!?!?!?」


少女たちのこぶしやら魔法が突き刺さり、男はもんどりうって地面に転がる。そして泡を噴いてビクビクと震え失神するのであった。


さすがに手加減はしているようだが、仮にも俺の「守る(改)」スキルの庇護下にある少女たちの攻撃だ。


チンピラ程度では、全く相手にならないらしい。


「ひ、ひいぃぃぃいぃいいいぃいぃい!!??! て、てめえ! 歯向かう気か!? お、俺たちコルステンファミリーを敵に回してただで済むと思ってんのか!?!??!」


そんな仲間の惨状を見て、もう一人の無精ひげの男が、腰を抜かしながらそう絶叫した。


だが俺は落ちついた様子で、


「むしろ、お前たちこそ俺を敵に回すことがどういうことか分かっているのか? 帰ってお前たちの親玉に伝えろ。今回の一件について、明後日あさってまでに、正式に書面をしたためた上で謝罪に来いとな。そうすれば、許してやろう。だが、もしも謝ることすら出来ない不誠実な者だとすれば、今後、この地域での営業を許可する訳にはいかない。その際は残念だが営業停止とさせてもらう」


と、ルールを定める側として、厳しく告げたのである。


「ひ、ひい!? い、一体何を言って・・・っ」


男が哀れな悲鳴を上げた。


一方、孤児院の少女たちは俺の言葉に、


「さすがご主人様です、許しの機会を与えて上げるなんて、本当にお優しいです」


「まったくです。マサツグ様は温情に満ちあふれてますね!」


「そりゃそうよ~。だって本当だったら、この世界を統治するべき人なんだから~」


「国を治めるには厳しいばかりではダメということか。魔王として実に勉強になるのじゃ!」


などと言う。


更にクラリッサも、


「マサツグがドワーフの格言にある、一生を通じて腕をほうじるべき(マスター)・・・?」


と、よくわからない事を呟くのであった。


「ち、ちきしょう!?!? 覚えてやがれ!!!!!!!」


そんなやりとりをしている間にも、男はスキンヘッドの男をかつぐと、捨て台詞をはいて逃げ出そうとする。


おっと、そうはいかない。


俺は一瞬で男たちの前に回り込むと、かつがれたスキンヘッドの男ごと、地面に叩きつける。


「ぎえ!?」


「ぎゃっ!?」


そんな汚らしい叫び声を上げて、二人が埃まみれの床に転がった。スキンヘッドも今の激痛で目が覚めたようだ。


俺は地面に這いつくばるチンピラどもが逃げないように、その後頭部を足蹴あしげにしながら粛々(しゅくしゅく)と告げる。


「このまま帰るつもりか? 店を散らかし、また散々迷惑をかけたのだから、俺は立場的に、お前たちへ罰を与えなければならん。よって今回、お前らへは慰謝料の支払いを命じる。悪質さからして、それぞれ10万ギエルとしよう」


俺がそう言うと、男たちは踏みつけられたまま地面でもがき出し、


「な、なんだと!??!? だ、誰がそんな金を払うものか!!! くそっ、くそっ、おい、この足をどけやがれええええええええええ!!!!!!!!!!」


などと叫ぶのであった。


だが、


「ふむ、払えないならそれでも構わない。ペナルティを課した上で、別の方法で払ってもらうとしよう」


俺がそう言うと、なぜか二人は心底怯えた様子を見せ、やけに素直に10万ギエルずつを差し出したのである。


そして、哀れなほど憔悴しょうすいしきった様子で、今度こそ、この場から退散しようとしたのだった。


しかし・・・、


「少し待て」


俺が再び背を向けた男たちに声をかけた。


すると、男たちの肩がびくりと震える。


まったく、ちっぽけな奴らだ。


「怯えるな、何もしない。そんなことよりお前たち、クラリッサの借金と言っていたな。借用書はあるのか?」


俺がそう言うと、男たちは懐に手を当てて、酷く不安そうな表情をする。


どうやら俺に書面を破かれるとでも思っているらしい。


「バカが。そんなことはしない。いいから見せろ」


俺の命令に、チンピラどもは諦めた顔でその書面を差し出した。


ふむ、確かに借用金額が書かれているな。


100万ギエルか。


「おい、お前ら、これで間違いないんだろうな?」


俺がそう質問すると、男たちは、


「そ、そうだ!」


「ああ、100万ギエルぴったりだ!! 1ギエルとてまからねえ!! 明後日までに払えなけりゃ、この店は没収、そしてその女は奴隷落ちだ!! まあ、たった2日で100万ギエルなんて大金を集めることなんて、出来る訳が・・・っ」


鬱憤を晴らすかのようにそう叫び始めたのである。


俺はそんな男たちを鼻でわらい、


「なんだ、100万で良いのか。そら、持っていくといい」


そう言うと俺は白貨を一枚取り出して指で弾く。


その貨幣は勢いよく飛んで、スキンヘッドの額にぶち当たるのであった。


「ひぎゃっ!?」


「んなあっ!?」


スキンヘッドは激痛にうめき、無精ひげは目をいてあんぐりと口を開けた。


哀れなものである。


「ど、どうして・・・?」


クラリッサからも、彼女にしてもとても珍しい、驚きに満ちた声が聞こえて来た。


なに、理由は簡単だ。


「さっき契約は完了したじゃないか。俺は単にその報酬を支払っただけだ。まずは手付金の100万ギエル。あと残りの委託料や必要経費については、今後相談することにしよう」


俺は落ち着きはらい、そう言ったのである。


すると、なぜかクラリッサは頬を真っ赤に染めて俺を見つめると、


「やっぱりわたしのマスターだった」


そう言って、一瞬だけとはいえ、はっきりと微笑みを浮かべたのであった。


ますたー????


一体、どういう意味だろう?


俺は頭にクエスチョンマークを浮かべたのである。


一方、孤児院の少女たちも、


「はぁ・・・。またなんですね・・・。ご主人様がカッコイイからしょうがないんですけど・・・」


「でも、嫉妬しちゃうなぁ」


「わ、わたしの第3夫人の座は渡さないんだから~」


「これが、惚れた弱みという奴なのじゃなぁ」


と、どこか諦めた表情を浮かべ、ブツブツとよく分からない事を呟いているのであった。


うーん、どういう事だろう。


と、そんなやりとりをしていると、


「ほ、本物じゃねーか・・・」


「く、くそう・・・っ! い、一体何が起こってやがんだ・・・!!」


チンピラたちが慌てふためき、酷く狼狽ろうばいした声が聞こえてきた。


やれやれ、こいつらの対応をするのも飽きてきたな。


「おい、いい加減、目障りだぞ、お前たち。もう借金はなくなったんだ。ここは、お前たちのような塵芥ちりあくたがいて良い場所じゃない事くらい分かるだろう? さあ、ゴミはゴミらしく、さっさとめに帰れ。それから、戻ったらお前たちゴミの親玉へちゃんと謝罪に来るよう、しっかりと伝えるんだぞ? そうしなければこの地域での営業は許可しないからな? ああ、あとな、今度嫌がらせをしてくれば、管理責任を果たさなかったものとして、コルステン一家は全員、国外追放とするから、よく覚えておけ」


俺は淡々とそう告げる。


すると、男たちはぎりぎりと歯ぎしりして、憎しみのこもった目で俺を睨みつけて来た。


だが、


「なんだ? まだ何かあるのか?」


そう言って少しばかり凄んでやると、


「ひ、ひい!?」


「くそう! 覚えてろよ!!」


チンピラたちは悲鳴を上げて、我先にと外へと逃げ出したのである。


「やれやれ、ゴミ掃除というのはどの世界でも厄介なものだな」


俺がそう言って溜息をくと、周りにいた孤児院の少女たちはクスリと微笑むのであった。


と、そんな時、俺の服のすそが引っ張られた。


犯人は・・・もちろんドワーフの少女、クラリッサだ。


彼女は小さな手で裾をつまみながらら、俺のことを見上げると、


「マサツグはわたしのマスター。ずーっと一緒。何でも言って。わたしの腕も何もかも、マスターのもの」


そう言って、ほんのりと頬を赤らめたのであった。


ふむ、マスターというのは、きっと契約の委託元のことだろう。


大仰おおぎょうな表現ではあるが、間違ってはいない。


職人であるクラリッサらしい表現と言える。


「ああ、宜しく頼むぞ?」


「任せて。わたしのすべてをマサツグへ奉じる」


なんだか大げさだなあ。


まぁ、仕事熱心なのは良いことだ。


俺は笑って頷く。


だが、俺のそんなそんなやりとりを見ていた孤児院の少女たちは、先程まで微笑んでいたにも関わらずなぜか、


「はあ・・・」


と、大きな溜息をくのであった。


うーん、なぜだろう?


ともかく、俺たちはやっと落ち着いて、鏡作りの話し合いを始めたのである。


いつもたくさんの評価・ブクマをありがとうございます。

お陰様で執筆がとても進んでいます!

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