122.世界の真理
122.世界の真理
(前回の続きです)
「五感は確かに人間の優れた能力だ。しかし、そもそもそれは『人』という枠に囚われている。そうは思わないか?」
と俺は言った。
「た、確かにそうです!!!」
リュシアが目を丸くして言う。
ふっ、勘がいいので、すぐに俺の言いたいことが分かったようだ。
「そういうことだな」
俺は微笑みながら、口を開いた。
「俺はこの世界の運命そのもの。神を従える者。いや、あるいはそれを面倒がって放置している者といった方が正しいのかもしれんな」
俺の言葉に、少女たちは聞き入る。
真実の言葉とは、こうして自然と耳を傾けさせるものだ。
俺が神聖なる王として君臨できたのは、何も権力や力があったからではない。
こうした、自然と人々に語り掛ける、本当の意味での強さと真理を知っていたからに過ぎないのだ。
俺は続きを話す。
「人、という枠に囚われていては、それを超えることは出来ない。だが、既に俺がそういった枠に収まる存在ではない……。いや」
俺は少し憂いの表情で首を横に振り、
「出来れば人という存在の枠に憧れているのかもしれないな。だが、そんなことは世界が許さないし、俺の能力や才能、人々を導くという定め、そういったものが許すことはないだろう」
「ご主人様……」
リュシアが悲しい表情を浮かべる。他の少女たちも同様だ。
「ご主人様ほど人のことを想っていらっしゃる方はいないのに。それなのに、人という枠をどうしても超えてしまう」
「マサツグ様ほどの方が人の枠に収まることは不可能。それは当然かもしれないですが、なんて残酷なのかと思います」
「神様の枠にすら収まることが出来ないんだもんね……」
リュシア、エリン、シーがそう言って悲し気に頷く。そして、
「人を救うというお立場であるがゆえに、上位の存在にならざるを得なかった。普通であることが最も難しいことだったというはなんという皮肉でしょうか」
「魔王ですら人の手では届きすらせぬ高みというのに、マサツグ殿は神すらも霞む存在だからのう……」
「人の器が小さいんじゃなくて、マサツグが大きすぎる」
「確かに主様は世界をも包含する存在。人という物差しではもはや意味をなさないほどの御方ですからね」
シルビィ、ラーラ、クラリッサ、ミラもそう言ったのだった。
しかし、
「いや、だが良かったこともある」
「ご主人様?」
リュシアたちが疑問符を頭に浮かべる。
俺はそんな彼女たちに微笑みながら。
「こうして神すらも超える、優れた、という言葉では収まらないほどの存在であるからこそ、お前たちを救い、世界を幸福にすることも出来る。いや」
俺は首を振りつつ、
「世界なんてどうでもいいのかもしれないな。俺を慕ってついて来てくれるお前たちに、こうして色々なことを教えてやることが出来る。それが嬉しいだけなのかもしれない」
その言葉に、少女たちは嬉しそうに笑い、
「「「「「「「はい、私たち、一生ついていきますから!」」」」」」」
と声をそろえて言ったのであった。
「ふっ」
俺は思わず優しく微笑む。
そうだ、俺が超越者だからこそ、こうして少女たちの笑顔を守ることが出来る。
ならば、俺が人の器に収まらないことも許容すべきなのかもしれないな。
彼女たちの笑顔を見た俺は、そう思ったのだった。
(続きます)






