121.マサツグからの教え
121.マサツグの教え
俺は白亜の神殿へと移動する。
息を切らせる必要もなく、俺は一瞬で目的地へとたどり着いた。
三人の聖女、ゼシカ、リドル、ミリアたちは、3つの入り口があり、それぞれに入っていった。
今、俺がやって来たのはゼシカの入った入口である。
「ご主人様、まずはゼシカさんを助けられるんですね?」
そうリュシアが言う。
「そうだ。だが、同時に全員を助けることと同義でもある」
「確かにそうです。マサツグ様が選ばれた道は人類の救済に全てつながっているのですから」
「その意味ではマサツグさんが一人を助けるのも、二人を助けるのも同じだってことだもんね」
エリンとシーがすぐに理解して言った。
そういうことだな。
「俺が世界の運命を決める。俺がゼシカから救う決めたというならば、リドル、ミリアを救うことにもつながる運命を操作したということだ」
俺は当然の理屈を述べる。
「救世主様の前では、運命も頭を垂れますからね」
「それはそうと、試練の内容は、確か聖女が最もつらい事象と向き合うというものだったはずだのう?」
シルビィが頷き、ラーラが確認する。
「ああ、そうだな」
「でも、どこにもゼシカいない」
「私も彼女の気配を感じません」
クラリッサとミラが周囲を見回しながら言った。
俺は苦笑して、
「ははは、それは目や耳、あるいは五感だけで存在を捉えようとしているからだろう」
「えっ。でも、五感以外でどうやってゼシカさんを探せば」
リュシアが驚いた表情で言う。
「ふ、そうだな。いい機会なので、五感に頼らない戦い方を教えておくか」
その言葉に、少女たちは驚嘆、あるいは喜びの声を上げる。
「嬉しいです! ご主人様からじきじきに教えをうけられるなんて!」
「その通りです! マサツグ様の教えを聞き、そしてエルフ全体にも広めて行ければと思います!」
「救世主様のお言葉は全て記憶していますが、またそのページを増やすことが出来るのですね」
「マサツグ殿の教えか。未来においては神託として書物に残ると思うと感慨深いものがあるのう」
「ドワーフにもその教えを広める」
「主様に付き従ってるうちに、いつの間にか、数千倍の強さを手に入れることが出来る。武人としてこれほど尊敬し、感謝することは他にありません!」
と、リュシア、エリン、シー、シルビィ、ラーラ、クラリッサ、ミラが言った。
やれやれ、これくらいのことで大げさなことだ。
俺は思わず肩をすくめつつ、
「五感は確かに人間の優れた能力だ。しかし、そもそもそれは『人』という枠に囚われている。そうは思わないか?」
と言う。
「た、確かにそうです!!!」
リュシアが目を丸くして言った。
ふっ、勘がいいので、すぐに俺の言いたいことが分かったようだ。そういうことだな。
俺は微笑みながら、口を開いた。
(続きます)






