111.少女たちとの旅路
新作を始めました!
「『枝分かれ』する未来が少し見えるので、時どき合流する面白パーティーのふりをして、主人公たちをちょっと助けようと思う」
を同時更新しています。こっちも孤児院レベルに仕上げてますよっ。
(作品URL)https://ncode.syosetu.com/n4292fq/
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111.少女たちとの旅路
「マサツグ王バンザイ、マサツグ王バンザイ!」
「マサツグ王、世界を、世界をお願いします!」
「ご武運を、武神マサツグ様!!」
そんな声援を受けながら城下を出た。
やれやれ、たかだか世界を救うだけなのだがな。
いや、それも違う。孤児院を救うために、ついでに世界を救ってやるだけの話だ。
言ってみればついで。
とはいえ、そんな俺の救世主としてのありように期待しないことは難しいだろう。
この世界に俺がいるということが、一つの奇跡。それにすがろうとする気持ちは俺という存在であっても否定できるものじゃあない。
「ここからが長い旅になるな」
「はい」
とシルビィが答える。馬車での移動である。御者はもちろん彼女だ。
彼女には大陸間ギルドネットワークを使っての情報収集を命じている。もちろん、命じているといっても、彼女は自ら俺になにか役に立てることはないかと言ってきたので、ギルド間のネットワークを使った情報集を提案したのだ。
彼女はその提案に感激し、翌日から早速俺のために活動を開始したわけである。
どうやら俺の役に立つことが彼女の最大の喜びらしい。
先日、なにかお礼でも、といったところ、非常に恐縮した上に、とても長い時間もじもじとした後、頭をなでなでしてほしいといってきたので大変困惑したものだ。
おそらく、もっとしてほしいことがあったのだが、奥ゆかしいシルビィには言えなかったのだろう。
まあ、その割には頭をなでた後にひどく恍惚とした顔をしていたのだが。
それはともかくとして、
「消滅したのはワルムズの北端。あまり王都の目の届かない田舎です。ワルムズの領地ではあるものの、モンスターも多く管理できていない場所です。そこに行くためにはいくつかの貴族の領地を通り、またモンスターはびこる闇夜の森、呪いの湖、ドラゴンの跋扈するミシェ山をこえなくてはなりません」
そうしルビィが説明してくれた。一ヶ月程度の旅程になりそうだとも。
「他の貴族の領土に、通ればおそらく只ではすまないような天然の要害か」
「ご主人様以外が今回の任務にあたっていたら、おそらくすぐに命を落としていたでしょうね・・・・・・」
「その意味でもマサツグ様しか今回の事態に対応することはできなかったですね」
「そりゃそうだよ~、マサツグさんじゃなかったら、そもそも辺境の街が消滅したって聞いた時点で大混乱だよ」
「前の王ならそうじゃったろうなあ」
少女たちが口々に言った。
なるほど、前の無能王か。
俺は久しぶりに前の王であるワルムズ王を思い出した。
そういえばいたな、そんなやつが。
「国が滅ぶかどうかという時に何も決められない無能者でございましたね。それどころか救世主様の邪魔をしようとしたとんでもない罪人と言えましょう」
「マサツグを認めない節穴王」
「覇気もなにもない王だったと聞いております。主殿の真逆ですね」
残りの少女たちが言った。
「ひ、ひどい評価だな」
と、口には出すが、とはいえすべて本当のことなので、さすがの俺も反論することができない。俺であっても真実をねじまげることはできないからだ。いや、俺という正直者にはというべきか。
だが、一つだけ良い点もあったのである。
「あの無能が俺を追放したおかげで、孤児院の院長になって、お前たちに会うことができた。そのことだけは感謝してやらないとな」
俺がそう言うと少女たちは、驚いた顔をして、
「そ、それはそうですね。前の王様が無能だったおかげで、ご主人様と会えたんですね!」
「マサツグ様を追放するなんて信じられないけど、それくらい無能だったおかげで私達は出会えたんですね!」
「でも結局~、それもこれもマサツグさんが運命を味方にする才能持ちだからだと思うけどね~」
「無能だからこそ、才能のあるマサツグ殿に嫉妬して放逐したのじゃろうからのう。無能でよかったよかった♪」
みんなそう言ってはしゃぐのであった。
ふっ。確かにそうだな。
俺は少女たちの屈託のない笑顔を見て微笑む。
こうして孤児の少女たちと出会い、俺自身大きな成長をとげることができた。
元の世界ではただのいじめられっこだった高校生の俺が、今は本来の才能に目覚め、生来の人柄の良さや精神的な豊かさなど、様々なポテンシャルを発揮して少女たちを守り、育くんでくることができたのだ。
もとの世界は俺には狭すぎた。
こうして異世界に来て、本来の力が試される土壌になったとたん、俺は誰にも邪魔されず自由に人々を守り、慕われ、こうして世界の命運を託されるまでの人間・・・・・・いや、人によってはすでに神らしいが・・・・・・・しかし俺は神になど興味がない。人間であるからこそ、こうして弱者たちの怒りや悲しいに心を向け、共感し、悪をくじき、世界を救ってこれたのだから。
少女たちと久しぶりにそんなのんびりとした会話をしながら俺たちは進む。
一日進んだところで日もくれてきた。今日はこのあたりで宿泊すべきだろう。
「さて、そろそろ寝るとするか」
「はい、ご主人様。どうぞリュシアを抱きまくらにしてくださいね」
「あー、リュシアちゃんずるい~。エリンも、だ、だ、だ、だ、抱きまくらにしてください!」
「あら~それならお姉ちゃんが適任よね~」
「駄肉よりも、わしのようなピチピチなほうがよいのではないかなマサツグ殿には」
「では私は救世主様をお守りするために背中をお任せいただきます。ぴと」
「このアサシン・・・・・・狡猾!」
「わ、わたしも主殿のために寝ずの番をします。足だけで十分です。だき!」
「やんややんやとやかましいなあ。寝れないだろうが」
「「「「「「「だって~」」」」」」」
と少女たちは声をそろえて抗議の意思を表明する。
やれやれ。
と、そんな会話を繰り広げていたときである。
「危ない!」
俺は一瞬で簡易布団から移動すると、馬車の外から投擲されたナイフをつかみとったのである。
そして、それを投げてきた方向に投擲しかえした。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
闇夜に絶叫がとどろく。
そして、ずるりずるりと正気を失わせるような、粘性の高い、へどろのような臭気をただよわせる何かが、ゆっくりゆっくりと近づいてきたのである。
「お、お前は・・・・・・」
俺ですら、その姿を視認した際には驚愕の声をあげてしまった。
なぜなら、そう、その姿は・・・・・・
「ワルムズ王・・・・・・」
それは変わり果てたワルムズ王、その人だったからである。
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