109.マサツグ王の親征
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「『枝分かれ』する未来が少し見えるので、時どき合流する面白パーティーのふりをして、主人公たちをちょっと助けようと思う」
を同時更新しています。こっちも孤児院レベルに仕上げてますよっ。
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109.マサツグ王の親征
俺は早急に旅立ちの準備を始めることにした。
「なんと感動的な光景でありましょう。まさかマサツグ王御自ら親征されるとはっ!」
執事のセバスが大げさに言った。
同じ部屋にいたリュシア、エリン、シー、シルビィ、ラーラ、クラリッサ、ミラも頷きながら、
「ついにご主人様みずから動くのですね。運命が動くというべきでしょうか」
「エルフ族の生き残りすべてがマサツグ様に喜んでしたがいますよ!」
「自然界の神々もマサツグさんの手足となって協力する~」
「ギルドもナオミ様の救世を全力で支援いたします」
「もちろん魔族一同も、人間への長年の因縁を超え、マサツグ殿を助けるのじゃ!」
「ドワーフもあらゆる武器、防具をマサツグのために作る。いいえ、ドワーフ一族の名誉のためにも作らせてほしい」
「主様の手足となって戦う。武人としてこれ以上の喜びはありません!」
などと言う。
今までいがみあってきたすべての種族が俺を中心にまとまろうとしている。
それは歴史的、いやこの星として重大な意味を持つ「事件」だろう。
つまるところ、これは神話なのだ。
今後、俺たちの子孫たちが語り継いでいく現場に、その中心に俺がいるだけの話。
だから、皆の熱狂を俺は冷静に受け止める。俺が運命自身なのだと。
・・・・・・無論、まったく望んでいないが。俺は目立たず、一人でゆっくりと本でも読んでおければ良いという人種だ。
こんな世界の中心になるつもりは微塵もなかったし、興味すらない。まったく、誰かに譲り渡せるならそうしたいものだ。
無論、そんな人間はいない。一度俺という高みへバトンを渡してしまった以上、世界が俺を離すことはない。世界はあらゆる手段を用いて、俺をこの世界の命運の渦中へと誘うであろう。
やれやれ世界め。やっかいなやつだ。
「救世主様、作戦を考え中ですか?」
「いや、世界を救うというのも面倒だと思っていただけだ」
「そうおっしゃらず。この世界を救えるのはナオミ様しかいらっしゃらないのですから!」
「ははは、焦るな焦るな。すまなかった。もちろんだ。俺以外にそんな役割を負えるやつがいるわけがないだろう」
「それもそうでございました」
シルビィは一度赤面したあと、花のように微笑んだ。
さて、ところで、なぜこの7人がこの部屋にいるのかと言えば、俺と一時であっても離れるのが耐えられないと言われたからだ。
ほんの何週間だと伝えたが、泣いて嫌がられたのである。
ならば、王など辞めて孤児院長にさっさと戻ろうとしたのだが、今度は城の者たちに泣いて止められてしまった。
今、俺を失うことは、国が滅ぶことに等しいとかなんとか。
俺抜きでも国政が維持するくらい何とかしてほしいのだが・・・・・・。
だが、前王がいたときと比べて、政治は安定し、経済は向上し、外交関係も盤石になった。
大したことはやっていない。
当たり前のことを、当たり前にやっただけだ。
だが、周りの者たちにいわせれば、
「当たり前のことができないから難しいのですが・・・」
とのことであった。
ふうむ、そんなものだろうか? 俺にはやはりよくわからないのだがなあ。
まあ、そんなわけで。あれほど懇願されては仕方ない。渋々ながら王を続けることにしたのである。
だが、孤児院こそが優先だ。王などというしょうもない仕事に比べれば、孤児院長の仕事のほうが難しく、またやりがいもある。
よって、妥協案として、王城の一室に俺たちルーナ孤児院のための部屋を誂えさせたというわけである。その部屋には、孤児である皆が寝起きしている。まあ、シルビィは厳密には孤児ではないのだが、いつの間にか転がり込んできて、なにをどういっても、「私はナオミ様のもとを離れませんので」と極上の笑顔で言ってきかないのである。
「ところで、そもそもなんで王城なんかに住みたがるんだ?」
やはり、一度はお城というものに憧れたりするものだろうか。女の子なわけだし、お姫様に憧れるような感じで。
だが、彼女たちは俺の顔をまじまじと見た後に、
「はぁ・・・・・・」
と、いやに感情のこもったため息をついたのだった。
まったく、どういう意味だろう?
と、そんな会話をしながら準備をしていたときである。
俺と孤児たちの部屋に思わぬ珍客が現れたのだ。
「マサツグ王! なんで俺たちを連れて行ってくれないんですか‼」
それは顔を涙に濡らしたクラスメイトたちだった。
エヅカ、カツラギ、ヨシハラなどほとんどのクラスメイトたちがいた。
その表情は怒りや悲しみ、悔しさがないまぜになったものである。
「貴様ら! ここが王の居室であると知っての狼藉か‼」
筆頭家老であるセバスが激怒する。
だが、
「セバス、いいんだ」
「で、ですがマサツグ王・・・・・・」
「王が自らでるというんだ。そして今回の親征はこの世界の命運を決めるもの。俺についてくることは神話に身を投じる野と同じ意味を持つ。俺を慕ってるやつほどついてきたいと思うのは仕方あるまい」
「マ、マサツグ王。それほどの深謀遠慮がありましたとは。このセバス不明を恥じるばかりです。さすが、マサツグ王です」
そう言って尊敬の眼差しを向ける。
やれやれ、俺は当たり前のことを言っただけで、全然たいしたことはしていないのだがなあ。
だが、今はそんなことはどうでもいい。
クラスメイトたちへの対応をせねばならん。
「おいおい、お前たちいきなりどうしたんだ」
「どうしたもこうしたもありませんよ!」
そうエヅカが言うと、
「そうですよ! なんで私達を連れて行くのを拒否したんですか!」
カツラギも間髪入れずに続いた。
「わ、わたしは別に心配してるわけじゃないんだからね! でもどうして・・・・・・・」
ヨシハラもそういいながら、目に涙をためている。
そう、今回の親征は、この俺と孤児たちだけで行う予定なのだ。その理由は・・・・・・、
「お前たちの気持ちは実に嬉しい。俺とともにありたいという気持ちも理解している」
「マサツグ王・・・・・・それなら!」
「だが、お前たちには銃後を任せたい」
俺は厳然とそう言ったのだった。
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