107.(勇者ミヤモト編)エピローグ ~新たなる冒険~
・これにて勇者ミヤモト編は一旦終了です! 今回はエピローグ。いかがでしたでしょうか、ミヤモト君の英雄譚は? 彼の行く手にはまだまだ様々な困難が待ち受けています。ですが、彼は持ち前の正義感とパワーでそれをはねのけていくでしょう!
・異世界孤児院第2巻(2/10発売しました!)でも、ミヤモト君が大活躍していますので、よろしければそちらもお楽しみください。
・Web版とはまた全然違う展開ですが、さすがミヤモト! となること請け合いですよ~。
107.エピローグ ~新たなる冒険~
「んぎヒいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい。か、体中がいてええええええええええええええええええ。いでえええよおおおおおおおおおおおおおおお‼」
俺は焼け焦げ、草木一本なくなった地表の上でのたうち回っていた。
なんでだぁ!
どうして俺がこんな目にあわなくちゃならねえ!
巨悪を打倒し、正義を実現した。
神であり英雄!
人類の希望!
世界平和の使者ぁ!
そんな俺がどうしてこんな激痛にさいなまれなくちゃならねえええええええええ‼
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼ いてえええええええよおおおおおおおおおおおおおお‼ おおおおん‼」
「やかましいですね~」
と、いつの間にか姿を消していた邪神とシェリルが目の前につと降り立った。
そうだ!
そうだあ!
もとはと言えばコイツらのせい!
こいつらが諸悪の根源じゃねえかあ!
「何とか、何とかしやがれえええええ‼」
うおおおおおおおおおおおお‼ と、俺は相手に掴みかかろうと体をうごめかせる。
だが、巨悪を倒した後遺症で、体が全く思い通りに動かない!
俺は地面をのたうち回ることしかできない!
なんでだぁ!
どうして英雄であるはずの俺がこんな目に遭わなくちゃならねえ!
うおおおおおおおおお
「静かにしなさい。まったく。風紀が乱れますね。はいサイレント」
「――――――――――――――――――! ――――――――――――――――⁉ ―――――――――――――――‼」
「やれやれ。委員長も大変です」
「委員長? なんなんですそれって?」
「いえいえ、何でもありませんよ」
「さて、と」
邪神ルイクイ。
諸悪の根源。
世界を破滅させる邪悪なるもの。
それが俺に背を向けて歩き始める。
「んむううううううううううう! むむううううううううううううううううううううううううううううううう!(この傷を治していきやがれえええええ‼)」
俺は絶叫する。
「あのう、何か言っているようなのですが?」
「やれやれです。邪神のサイレントにまで半ば抗うのですねえ。この新しい邪悪の化身様は」
「じゃあ、助けてあげるんです?」
「いいえ、答えはノー! 返す言葉は残念ですの一言です!」
「んおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
俺は抗議の叫びをあげる。
いでえ!
いでえええ!
頭が!
脚が!
腕がぁ!
心臓がああああああ!
全身がいてえええええええええええよおおおおお!
なのにどうして助けてくれねええええええええ!
この英雄であるミヤモト様をおおおおぉおおぉおおおおお!
「て、てめえはあ! 俺を助けに来たんだろうがあああああああああああ!」
なのにどうして助けてくれねええええええええええええ‼
俺はあまりのことに涙を流しながら絶叫する。
だが、
「え?」
邪神はキョトンとする。
え?
「え?」
「え?」
お互いが「え?」と言い合う。
「ふ、ふざけ、ふざけ」
「ふざけてなんかいませんよ?」
邪神は申し訳なさそうに眉をしかめる。
「勘違いさせてしまったのかしら……ごめんなさい」
深く頭を下げてから、
「わ、わたし、マサツグ様にチョコレートを届けないといけないの。だから玄室から出て来たのよ。わたしの気持ちを伝えなくっちゃって!」
ルイクイはそう言うと「えへへ」とまるで恋する乙女のように笑った。
邪神らしからぬ笑み。
世界を滅亡に導く邪神らしからぬ挙動。
だが、何より俺の度肝を抜いたのは……、
「マ、マサツグ様……だと?」
「ちょ、ちょっと。やめてよ。照れちゃうじゃない。ああ、でも、マサツグ様だとちょっと他人行儀過ぎるかなあ。会うのは初めてだけど、お互いいっぱいコミュニケーションはとってきてるわけだし。決めた。今後はマサツグ君って呼ぼうっと♡」
俺は意識が飛びそうなる。
いいや、実際に石像のように固まった。
よりにもよって、俺の才能をある意味認めていた邪神が、よりにもよって、よりにもよって!
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! マサツグゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウ! やっぱり許さねえぞおおおおおお‼ ゆるさ」
「はい。サイレント」
「――――――――――――――! ――――――――――――――――――⁉」
邪神は微笑みながら遠くへと目を向ける。
まるで俺のことなど眼中にないような仕草だ!
俺は怒り狂うが、邪神は今度こそ背を向ける。
そして、ふわりと浮き上がった。
「うふふ、待っててくださいね、マサツグ君♡ 今から行きますよー。この邪神のハッピーバレンタインを!」
「んがあああああああああああああああああああああああああ!」
俺の絶叫が奴の魔法を打ち破り、死の荒野と化した大地へと轟く。
だが、既に邪神の姿は遠くに消えている。
残されたのは満身創痍。一ミリも動けない俺と、
「んんー。これは困ったねえ。こうして残されてしまったよお。んー、どうしようかなあ。保身も大事だが、ここはあれだ。袖すり合うも他生の縁。というか、アモン様も倒されちゃったし、我が眷属も主上を変えるべきときかねえ。実際に」
蛇の化け物はこっちを悩まし気に見ながら、
「ミヤモト・ライズ様の穴はとっても良かったからねえ。また楽しませてもらおうかなぁ。おおっと勘違いしないでくれ。もちろん献身も忘れない。男だからと言ってできないことはない。いいや、男だからこそ分かることもある。ね」
そうだろう? とスキュラが近寄ってきた。
動けない俺に向かって。
「や、やめろ! 近づくな!」
「うふふ、分かっているよ! 恥ずかしがるなんて君らしくもない。さあさあ、アバンチュールだ。くふふ、さあさ、あまーい夜を過ごすとしようねえ」
「い、い、い」
いやだああああああああああああああああああああああああああああああ‼
英雄の絶叫が轟いたのである。






