106.(勇者ミヤモト編)英雄の慈悲。涙。そして許しと和解
・ついに2/10に第2巻が発売されました! Web版とはまた大きく展開が異なりますので、どうぞお楽しみください!
・ミヤモト君も大活躍しますよ!
・第3巻も発売決定です! こちらはまた進捗を活動報告でご連絡いたします!!
106.英雄の慈悲。涙。そして許しと和解
「うっらああああああああああああああああああ」
「ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい⁉⁉⁉」
ドッゴォォォォォオオオオオオオオオンンンンン……
俺の会心の一撃に、偽神アモンの耳が吹き飛んだ。
当然の報いだ!
世界を滅ぼそうなどと考えた悪魔にはふさわしい末路!
何よりもおぉ! この英雄ミヤモト様に少しでも脅威を感じさせやがったことがああああああああああ!
「絶対に許さねえぞおおおああああああああ! この雑魚がああああぁぁぁあああああああああああああああ」
正義を愛する心ぉ!
世界を守りたいという勇気ぃ!
何者にも負けないという覇気ぃ!
勇者ぁああ!
英雄ぅぅぁああああ!
そんなああああああああああ!
神ぃ! 神たる俺にぃいいいいいいいいいいいい!
「恥をかかせやがってえええええええええええええええええええええええ! 絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に絶対にいいいいいいいいいいいいいいい‼」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああ」
「絶対に許さねえええええええええええええええええええええええええ! この雑魚がぁあああああああああああああああああぐあああああああああああはははっはははははははははっはあっははっはああああ」
俺の正義の鉄槌が奴の右目をえぐる!
血の涙を流す相手!
だが許さねえ!
恨みはなにもねえ!
思えば哀れな奴だ!
悪に染まった邪悪! 邪悪に生まれついた悪!
それだけのことだった!
こいつにも俺のように正義を目指す道があればよかった!
だが、あろうことかコイツは俺と言う英雄に立ちふさがった!
誰を痛めつけようが世界を破壊しようが、女を犯し、赤子を殺し、何を奪おうが許される可能性は0じゃねえ!
だが!
俺だけはだめだ!
俺だけは神に愛され、世界に求められた聖域ぃ!
サンクチュアーリなんだ!
絶対に守るべき世界の宝! 生まれときから英雄になることを定められしレジェンド!
だというのにてめえはぁ!
「自分の犯した罪を詫びながら死ねええええええええええええええ‼」
「ぎひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい‼」
顔面を叩き潰す!
醜い!
醜すぎる!
げへへへへへへへへ!
こんな醜悪な怪物に俺が負けるはずもなかった!
この英雄が負けるはずがなかった!
当然だ!
奴を油断させるための罠だったんだからなあ!
「油断したなあ、猿野郎があ」
「ぎいいいい」
残った左目は憎しみと、わずかだが俺という強者を恐れる怯懦の光が見て取れた。
ぐひひひひひ。
「だめだぁ」
「⁉ おあっぁあああああああああああああああああああ」
俺は勢いよく飛び出すと左目も潰す!
ああ、ああ。
悪を潰すのが気持ちがいいなあ。
世界を救う快感によっちまいそうだぜえ。
ふ、ふへへ。ふへへへへへへへへぇ。
「油断させるために俺はお前に吹っ飛ばされて満身創痍のフリをしていただけだからなあ。そして、てめえの油断を誘ったぁ」
ああ、そうだ。
俺は最初からここまでを計算していたぁ。
油断させるためにあえて傷を負ったふりをした。
そして、相手の油断の隙を突く条件を見事整えたのだあ。
まさしく英雄。
まるでヤマトタケルがヤマタノオロチを倒した時の逸話の再現のようじゃねえかあ!
英雄!
神ぃ!
ああああああああああああああああああああ‼
「ぐ、ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「んぎ⁉ ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
俺は突然走った激痛に思わず声を漏らす。
なんだ⁉
何をしやがったぁ⁉
体を見下ろす。
すると、奴の体毛一つ一つが蛇となり、俺の体に喰らい突いていた!
ぐああああああああああ!
「こらー、油断しすぎですよ! ミヤモト君‼ 相手は神様なんですから! いくらでも一矢報いるチャンスはあるんですからねー! スキュラの神様なんですから、蛇の神様でもあるんですよー」
「早くいえええええ!だがぁ! 生意気すぎるぁぁ! 最強の俺に一矢報いるだとおおおおおおお⁉」
「GRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR‼」
「うるせええええええええええええええええええええええええええええ‼」
俺は痛みに耐えきれずに体をぶん回す。
体に喰らい突いた蛇ごと引き千切る!
「いでああああああああああああああああああああああ」
牙が食い込んだところから出血する!
くそう!
ちくしょう!
なんで俺がこんなひどいめにあわなけりゃならねえ!
許さねえ……。
許さねえぞおお!
この下等生物があああああああああああああああああああああああ‼
「猿野郎があ。死にやがれええ」
俺は奴の顔面から距離を離す。
アモンは俺が離れた隙に失った下半身を復活させようと、体をうごめかせた。
だが、俺がそんな時間を許すと思うか!
生かして返すと思うかぁ!
この猿野郎がああああああああああああああああああああああ‼
「宮本くーん。ここはまだ破壊する予定の土地ではありませんよー。1200年後に死地に返す予定の場所ですからちょっとその全力は勘弁してもらわないと」
「うるせええええええええええ‼ 俺に指図するんじゃねえええええええええええええええ‼」
「やれやれ。これはダメですねえ。減点1、と。さ、シェリルさん、退避しましょうね」
「た、退避って、どこに逃げればいい感じっすかね?」
「ゆっくりしていては巻き込まれますよ。半径100キロは魔界化しますからね」
「そ、それは困る! 困るよぉ! わたしったら満身創痍なんだからぁ! スキュラ族復活の悲願だってまだ未達成なのに! うえーん!」
「泣いたり笑ったり大変ですね。では少し跳びますのでつかまってくださいね」
「へ? 跳ぶ? 跳ぶってど」
フッ、と。二人の姿が掻き消えた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお‼ 灰燼に帰せええええええええええええ‼ 塵も残すなあああああああああああ‼ 俺を傷つけるような不完全な世界は消えてなくなれええええええええええ‼ |世界を焼却し、俺だけの楽園へと変われ《レクイエム・ゼロ》! おあああああああああああああああああああああああ‼」
俺はあふれ出るドロドロとして黒い(恐らく正義の心が可視化した)魔力を練り上げると、地表を焼き尽くし、新しい秩序と平和をもたらすことを願って解き放った!
「見なさいシェリル」
「……」
「あれが悪魔の所業というものですよ。これが焼かれた地表というものです。世界を覆う生命が完全にはがれ、何もない、絶望と嘆きと、熱も冷気もない虚無。これこそが世界の崩壊。終わりの始まりなのです」
「これはやばいやつだね。うん、私も久しぶりに嫌な物をみたなあって気持ちだよ」
「よい勉強になりましたね」
そう言って邪神はうんうんと頷く。
爆心地からは相当離れた場所へ瞬間的に転移した。
そんなことができるだけでも、もはや普通ではない。
が、一番恐ろしいのは邪神のその顔だった。
何せ、彼女はくったくのない本当に美しい笑顔で微笑んでいたのだから。
虚無を眺めて微笑む神性。
それこそが……。






