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103.(勇者ミヤモト編)復活、英雄ミヤモト

・ついに第2巻が発売されました! Web版とはまた大きく展開が異なりますので、どうぞお楽しみください!

・ミヤモト君も大活躍しますよ!

・第3巻も発売決定です! こちらはまた進捗を活動報告でご連絡いたします!!

103.悪の才能




「何をっ……わけの分からねえことを言ってやがるぅぅううう!」


 俺は怒声を上げた。


 当然だろう。こいつは俺を邪悪な奴だなんだとのたまいやがった。


 そんなことねえことは明らかだっつーのによお!


「俺は勇者! 英雄ミヤモト・ライズ様だぁ! てめえが言うような悪の道には決しておちねえ正義の味方だぁ!」


 するとルイクイの奴はキョトンとした表情を浮かべてから、


「ああ、ああ。うーんそっかあ。まあそうだよねえ。何はともあれ前向きな気持ちにさせることこそが大事かあ。そこはあえて言わない、というのも、この私の役目というところかなあ。うん、英雄には間違いない。英雄ということだけは間違いないんだから、さ」


「なにをぶつぶつと言ってやがる!」


 いやさ失礼、と邪神は咳払いなどをしてから、


「さっきの言葉は忘れてくれて結構よ。いやいや、英雄をつかまえて御託は不要だったわ。私は単にこう言いたかっただけなの。ミヤモト・ライズ君。あなたは才能の塊だってこと。この世界でも有数の潜在能力を持つ人間だと言うことなのよ」


 才能⁉


 能力!


「そうよお。あなたは才能の塊よ。この邪神が保証するわよ。あなたほどの(悪の)レベルの人間はこの世界には存在しないの」


「才能の塊! やはり天才だったのか俺はぁ! マサツグなんかに! マサツグなんかに負ける器ではやはりなかったんだな⁉」


「ええーっと、うーん」


「どうなんだ!」


 俺の詰問に邪神ははっきりと、


「(まあ彼には私の力は属性違いで受け入れられないから、そういう意味では貴方は邪神の力を受け付けられる器を持った唯一無二の存在であることには違いないわけだから、ある意味)そうよ」


「やはりそうかああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼」


 俺は歓喜の声を上げる。


 当たり前だった!


 当然の帰結だった!


 分かり切った回答だった!


 だが、愚民どもは、愚かなクラスメイトどもは、こーんな分かりきったことさえ理解していなかった!


 それによって!


 あろうことか!


 あろうことか!


 俺すらも!


 若干、少しだけ、不安に思ってしまっていたのだ!


 まさかまさかまさかまさかまさか、俺が、この俺様が。英雄が、英雄の権現であるはずのこのライズ様が。


 まさかあ!


 ナオミ・マサツグのクソ野郎にに劣るとでもいうのかとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおうおおおおおおおおおおおお!


 だがぁ!


 今判決は下ったぁ!


 神は言った!


 邪神が保証したのだあ!


 俺のほうが優れている!


 俺が奴に勝っている!


 世界を統べる存在だと!


 誰よりも王にふさわしいのだとお‼


 ならば!


 ならばならばならばあ!


「俺が逃げる道理はねええええええええええええええええええええええええ!」


「うっるさああああああああああああああああああああああああああい!」


 と、俺が勝利の雄たけびを上げていると、スキュラ・シェリルが舞い降りて来た。


「逃げるならさっさと逃げてくれよねえ! こっちは世界征服のために進軍開始って感じで引きこもってる眷属たちを糾合しに大忙しになるはずなんだからさあ! なんなら奴隷の身分で手伝ってもらっても……て、その方は、どちらさまかな?」


 シェリルが首を傾げる。


 黒髪の方は生真面目に頭を下げながら、


「こんにちは。神番1番の邪神ルイクイよ。よろしくね」


「はっはっはっはっはっは、こいつぅ、面白い冗談だねえ。って言いたいところだけど、まじゃん! うるさいと思って来てみれば、果ての玄室にいるはずの邪神じゃん! 分体だろうけどさ! 何この悪夢! なんでいるんだよう! またアモン様を封印しにきたのかあ!」


 シェリルが間合いを取って構える。


 だが、今度はルイクイが首を傾げ、


「どうして私が戦わないといけないの? ここに既に英雄がいるというように。神を殺すのはいつも人間なのですよ?」


「ええー? ライズ様があ? アモン様が復活してた衝撃でおしっこちびってたしなあ。それはないね。うーん、なしなし」


 大笑いをする。


 俺が冷静にそれを否定しようと口を開こうとするが、


「田舎の神が何を言っているんですか? ミヤモト君はあれですよ? 私の端末になれるほどの逸材です。どうあがいても、アモン如きが太刀打ちできるはずがありません。蛇の化け物ごとき地霊の進化体が馴れ馴れしくその忌み名を口にするものではありませんよ?」


「ぎえッ⁉」


 と、邪神が俺の才能を滔々と語った瞬間、スキュラがまるで窒息するようにあえぐ。


 血走らせた目を見開き、手で空をかくようにする。口からは涎を垂らし、下半身で蠢く蛇の頭たちもだらしなく地面に倒れこむ。


「だ、だずげで……」


「それは構いませんが、別に私に許しを請うべきものではありません。すべては英雄ミヤモト・ライズ君の成していることなのですから」


「お、俺が⁉」


 そんな自覚はねえが。


「いいえ、今はその力の使い方を忘れてしまっているだけですね。そもそも、そもそもですが、あなたはこれしきの『超上級』モンスターにやられるはずがないのです。それほどの力があなたにはあるのです」


「もちろんそうだろうな。だが、そうなのか?」


「そうですよ、そうですともですよ。だって考えて下さいよ。というか私も結構すごい神なのですよ。いちおうこの世界を司っているわけで、その端末……要するに私の力を受けられるだけの器。そんなものが人間にあること自体、ちょーっと考えられないことなのです。一度解剖したりしてゆっくり研究したいところですが、しません。異世界の人間ゆえ、あっちと戦争になりますからね。まあ、そこはそれ。それで、どうされますか、このシェリルとかいうモンスター。やはり煮ますか?」


「煮るか!」


 俺は怒鳴り返しながらも、


「俺に才能があるなんてのは最初から分かってた話だ! 今更どうかなんて欠伸が出るぜ! そのシェリルって奴は俺にたてついた! 王になるべき俺にたてついた! だから死刑だ!」


「ぐへええええん‥‥…」


 おだずげええええ……。


 くくく、苦しめ、苦しめ!


 俺は愉悦の笑みを漏らす。


 が、まあ、今はそんなことにかまけている暇はねえ。


 それに、だ。


「ひーひひひひひひ、それにあっさりと殺しちまっちゃあ、お楽しみが減っちまうってもんだああ。あのアモンっていう魔神? 魔王? なんかよくわからねえがデカ物を倒してからじっくりとなぶり殺しにしてやるぜえ」


「さ、さすがミヤモト君です……」


 邪神は若干距離を取りながら、


「さてでは、ではさて。あなたの忘れてしまった力を取り戻しましょう。ええ、よくあることですよ。慣れていたはずの技術を、ふとした拍子に忘れてしまう。優れた者ほどよくあることなのです」


 なるほどな。だが、


「どうすりゃ、俺は力を取り戻せる。最も優れた俺に戻るにゃあ、どうすりゃあいい⁉」


 俺の叫びに、邪神はニコリと微笑むと、


「もちろん、こうですよ!」


「ぎあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 俺は絶叫を上げる。


 あまりの激痛に。


 あまりの仕打ちに!


 また裏切りられたという憎しみにいぃぃい!


「げふぅぅ……、ル、ルイクイ、てめえ、裏切りやがった……な」 


「なあにをおっしゃるんですか。失敬な。オルティスさんじゃああるまいし」


 俺の心臓を楽々と貫きながら、ルイクイは不機嫌そうに眉をしかめた。


「やはり馬鹿は一回死ななきゃ治りませんからねえ。大丈夫、すぐに生き返りますから。単に一回死ぬだけですよ。支障はありません」


「いやだああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 ばりぃ!


 俺の、心臓が、引き抜かれた。








 黒。


 赤。


 様々な色。


 記憶。

 

 俺の中にあった澱みのようなものが、意識の底から吹きあがってきた。


「さて、これでまた一つ、杭が増えましたね」


 そんな声が聞こえた。


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