桜咲き散る
フラフラと見知らぬ道をアテも無く歩き続ける少年が居た。
最近春が近いおかげか、誰でも眠りを誘うぽかぽかとした陽気のせいで、彼も眠たそうな顔をしているが、突然、ふっと前を猫が横切るだけで先ほどまでねむそうな目をしていた彼は、とっさに首からぶら下げていたカメラを向ける。
しかし、後一歩のところで逃げられたようで、彼はカメラを残念そうに下ろすとまたフラフラとアテも無く歩き始めた。
しばらく先ほどと同じようにフラフラと歩いていた彼だが、途中、急にピタッと足を止める。
すると、それを見計らったように風がヒュッと吹いた。
それにつられ近くに桜の木があったのか、仄に甘く香る綺麗なピンク色の花がまるでその彼の周りを踊るように舞う。
しばらくそれをどこか悲しげな目で見つめると、彼はゆっくりとカメラを構え、それをカメラに収める。そして、
また歩き始めた。
そしてしばらくすると、彼の前には深い森へと続く一本の小道が見えた。
彼は、何にも迷うことなくその道へ突き進む。
またしばらく歩くと、今まで生い茂る木々のおかげで陰があった小道が、急に先ほどと同じように春の日差しがほどよく射す小さい広場のような場所にでる。
一瞬急な眩しさによって、何度も深く目を閉じては薄く開くのを繰り返すとようやく光に目が慣れたのか、小さい広場の奥にある一本の木の前まで行くと、そこでピタッと止まる。
しばらくじっとその木を見つめると、突然彼はその大きな木の前で、
まるでその木に語りかけるように口を開いた。
「櫻咲き いつか花散る それまでを、
叶うことなら 私は見守る」
「いつまでも―――」
そう彼が言い終わった瞬間、先ほどとは比べ物にならないほど強い風が吹く。
しかし、彼はそんな強風にも負けず木をじっと見つめる。すると・・・
急に風が止み、彼が見ていた木の蕾が花開く。
そしてみるみるうちに先ほどまでただの一本の木は、その一瞬のうちに大きな桜の木となる。
それを見届けた彼は、今までのどこか悲しげな顔から、とてもおだやかな笑みをうかべると、その桜の傍により、その樹にもたれかかると、そのままズルズルと落ちていく。
そして、ぺたッとその場に座り込むと、今度は春風を全身に受けながら彼はボソッと誰かにつぶやいた。
「ただいま。またせて、ゴメン。これからはいつまでも貴方をここで見守るから。だから、」
いつまでも綺麗な貴方を見せてください。
私は、もうどこにも行かないから。
彼はそれを言い終わると、目をつぶり
「いいトコだ。俺もここで貴方と一緒に咲き散ろうかな・・・」
と呟くと、
桜は、まるでそれに答えるように枝々を揺らす―――
すいません、どうしても真ん中の・・・短歌?っぽいのが書きたかったんです。
私が考えていた意味は
桜がさいて、それはいづれは散ってしまうかもしれないけど、せめてその綺麗な花が散ってしまうそのときまで、この願いが叶うならば、私は貴方をずっと見守るよ。




