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第八話 森の中の襲撃者

少し話を進めよう!

序章


第八話 森の中の襲撃者


俺は気配を殺し周囲を伺う


時空魔術にはその為の呪文も多いが、[剣術LV3]があるとある程度は把握ができる様だ。


「……三重の包囲網か…六人、八、三人か」『三人は恐らくリーダーでしょうね』「恐らくな。手近な六人が三人づつ別れているから、これが寄せ手なんだろうが、弓を放って来たのは」『八人、このグループが円形に配置されていますね。弓兵がおそらく三人から五人、運が悪ければ魔法使い系が混じっていると思いますね』「だろうな」


さて、後手に回ったら今度もお終いだ。


[忍術LV3]から忍足LV3、隠密LV3をアクティブにする。効果のほどは相手のレベルにも左右されるから不明だ。そして地形的に[風水術LV3]に大変有利だ。


ではやるかな


俺は[リーフフォール]をリーダーの方面にいる三人と二重目の包囲網の四人に向けて唱え、続けざまに[スペルブランチ]を寄せ手の六人に唱えた。どちらも範囲呪文だが狙いは違う。[スペルブランチ]は樹木を利用した物理攻撃だ。鞭の様に蔦や小枝が範囲内の的を責め続ける。隠れた的を炙り出す意味がある。流石にどれだけ潜伏能力が高くても物理攻撃に晒され続ければ出て来ざるをえないだろう。そして[リーフフォール]は知覚阻害と行動阻害を狙う。いくらチート能力があったとしてもこの人数は相手取れない。ビシンバジンと打撃音と悲鳴が森の中に響き渡る。そして[リーフフォール]が視界を遮断し判断を遅らせる。当然弓兵の攻撃精度は著しく低下している筈だ。


そこへーー発動の短い[超能力LV3]を叩き込む。効果時間の長い[風水術LV3]とのコンボだ!


忍足LV3と隠密LV3を使い、俺は敵の包囲網の一端に飛びつく。

一瞬の隙を突き[サイコブラスト]を叩き込む! 「ぐあああっ!」範囲攻撃に三人を捉え至近距離からの一撃で吹き飛ぶのを視認し(ふむ、殺傷能力は低そうだが速いのがいいな)そのまま残りの三人にナイフを投げ付けた。《ビュンッ》と大気を切り裂く二人が倒れ込んだ。既に[スペルブランチ]で混乱状態になっており連携は完全に切れていた。


『二重目が動き始めました! [リーフフォール]をレジスト出来たのは二名!』


アルマが叫ぶ。「ちっ!」距離がある。二射された鉄の矢が正確に俺の頭に迫るのを(避けるかーーいや!)[超能力LV3]のテレキネシスを発動させーー空中で止めた!


「「!!!!!」」


驚く弓兵を放置し止めのナイフをさらに二本投擲し一重目を崩壊させ、俺は森の茂みに身を隠した。


「乱戦になったら隠密も意味が無いのか?」『攻撃にでればそこで切れてしまいます。持続させるには今の状態の様に隠れたまま背後から奇襲攻撃を加えるなどの工夫が必要です!』「なるほどな」


俺はそのまま二重目の包囲網に奇襲攻撃を加えるべくそっと茂みから茂みへと移動していく。




(く、くそ! 鉄の矢を空中で止めるなんて)


包囲網の二重目にいた男は必死に[スペルブランチ]を躱し、あの男を追っていた。


(何処に消えやがった!)


この男も決してレベルの低い戦士では無いのだが、相手が悪すぎた。


「はっ!」咄嗟に背後からの殺気を感じとったがーー次の瞬間ーーナイフが頚動脈を突き通した。


「ぐっ……」


一瞬だけビクリと身体を痙攣させーーそして生き絶えた。


『やりますね。二重目は散開していますから、[リーフフォール]と[スペルブランチ]の効果時間に一人づつ消していきましょう!』

「賛成だ」


消えゆく意識の中で男は二人の短い会話を聞いた。


(……だ、だめだ…に……げ…)


既に声は出ない。森の中で一つまた一つと命の灯火が消されていった。




隠密と忍足で車懸かりで包囲網を潰していくのは難しくは無かった。


[スペルブランチ]と[リーフフォール]の混乱を立て直す力はこの襲撃者達には無かったのだ。その隙をまるで小枝でも払うかの如く一人また一人と駆逐していく。


桐子や雪代ほどでは無いが佐藤もいくら[魂の器5/100]の助力があるとはいえ、並みでは無いのだろう。


手間の弓兵を飛ばし、奥の兵士に[サイコブロウ]が炸裂する! 初動も無く詠唱も必要無く、なんの音も立てず繰り出せる[サイコブロウ]は佐藤の隠密のおかげで容易く回復不能のダメージを与えていく。《ドズン》鈍い音が森の中に響きーー弓兵が矢をその方向へ構えたときーー背後からナイフが首筋に垂直に差し込まれる。《ズヌッ》低く滑った音が一つする度に包囲網はドンドン削られていった。


「な、なんでこんな」


この襲撃者を仕切る女盗賊[ジル]は焦っていた。最初こそその男を捉えていたが、不可思議な呪文を放たれてからはその姿は掻き消す様に消えていった。そして見つける事が出来ないでいた。そして一重目の包囲網の時はまだ追い掛けることが出来たその気配もーー既に森の中に吸い込まれている。


(ちくしょう! 仲間の気配はどんどん無くなっていくのに! 右に吹っ飛んだ仲間がいたと思ったら今度は目の前で首を掻き切られている! 何がどうなってるんだ!)


そう、この時までジルは[超能力]と[風水術]を見たことすら無かった。だから対策が立てられ無かったのだ。


《ドズン》そしてまた一人が叩き伏せられた。即死では無いのだろうがーーその身体は不可思議に歪んでヒクヒクと痙攣している。呻くことすら出来ないで苦しみ悶えている。


「だめだ! ジル、逃げよう!」「ばかやろう! 仲間を見捨てて逃げるのか!」「もう残っちゃい無い! 枝や蔦の音がしなくなったのはもう獲物が立っていないからだ!」「で、でも! どこへ逃げるんだよ!」「俺が囮になる! 後でアジトで《ズンッ》「カマロ、どうした!」


その時ーー背後から男をショートソードが貫いた。カマロと呼ばれた男は一度その自らを貫いたショートソードを見て、背後を振り返り、ジルと呼ばれた女に「……に…げ……ろ」「カマロ!」


「そうか、アジトがあるのか」

『みたいですね。ゴブリンキャンプを堕とした後で寄ってみますか?』

「そうだな。けだし名案だ」


そう言って男はショートソードを引き抜くと、ジルに突き付けてきた。


「さて、お前達はもう壊滅した。まともに動けるのはお前だけだ。さて、誇り高く死ぬか、俺のお願いを聞いてくれるか、心して考えてくれ」


「あ……き、きさま…」


ジルは圧倒的な力の差を感じとっていた。そして身動き一つ出来ずにーー目の前の男を見上げていた。

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