第六話 森の中の謀
いつになったら森の中から出られるのか( ̄◇ ̄;)
第六話 森の中の謀
☆
『す、凄いですう!』
虚空に戻るとアルマが飛び付い来た。
「なにが?」
九死に一生を得たが俺は森の中でゴブリンウォーリアに吹き飛ばされダメージは深い。一応は[風水術LV3]で足止めはしてあるがーーまだ楽観出来る状態では無い。分かってるのか? だが、この[魂の器]の助力が無ければ、言い換えれば、あの時桐子と雪代が襲って来なければこの緊急措置は使えなかったのだから、もしも俺が何事も無くこの場所に強制転移させられていれば、俺はここで死んでいた可能性が高い。いや、ほぼ死んでいただろう。全ては仮定でしか無いが
『[ハーム]で弓が壊せるとは思いませんでした! ゴブリンの弓が粗悪品なのを見抜いていたなんて、佐藤さんは凄いです! そしてそれを実行に移すなんて、ビックりしました! 短弓とは言えキチンとした状態ならああも簡単には折れませんからね』
「えっ! そうなの!(やばかったのか)」
『……もしかして気が付いて無かったんですか?』
「…………」
『……ま、まあ、ゴブリンウォーリアの魔力付与された剣が常時発動型じゃ無いのを見抜いたあたりは流石です! もしもあれが[剛力の腕輪]などの様に常に発動している魔道具だったなら、とても[超能力LV3]の[ハーム]くらいでは止められませんからね! こちらの世界では常識なんですけど、力のない者が強力な武具を手に入れて暴走しないように、攻撃時だけに発動する武具が殆どなんですよ! でも佐藤さんはユグドラシルに来たばかりなのに良く気が付きましたね!』
「えええっ! そ、そうなの!」
『……えっ? 気が付いて無かったんです…か?』
「…………」
『…………』
……本当にやばかったのか
『……佐藤さんて…もしかして出たとこ勝負だったの?』
「!!!!! ば、ばかやろお! 出たとこ勝負なんじゃ無い! 出てみたら勝手に勝負になってただけだろうが!」
『!!!!!』
唖然とするアムル……そうか、異世界転生直後から命の瀬戸際だったのか
「そ、それより、これから残りのゴブリンを掃討して、一旦ゴブリンキャンプに戻り、それからこの森を脱出するぞ!」
アルマがジト目で俺を見ている。
『……佐藤さん、あの根拠のない自信の源を是非教えて欲しいです』
アルマの深い失望が伝わって来る
俺は大変微妙なテンションで森の中に戻る事になった。
しかし、これであと五つのスキルが取得出来る。これでこの森の中から脱出し、生き残りを賭けた冒険の始まりだ。
「ではスキル取得は後でな。先ずは掃討を済ませるからな」
『……はぁ…[ログアウト]……』
何そのテンション!
そして俺は森の中に戻る。
♢♢♢
虚空より[ログアウト]した俺の目の前にはゴブリン達が[スペルバインド]により拘束されても掻きまくる非常にシュールな光景が広がっていた。
[風水術LV3]は基本的にその場にある自然を利用するものなので、その地形に適合していれば非常にコストが低い上に、効果時間は圧倒的に長い。反面攻撃力には癖があり、地形により使えない術も多いので出しどころが難しいのだ。が、LV3からでも範囲効果を使えるのは大きい。反面作用時間が少しかかるのが難点だ。
[超能力LV3]は逆に範囲効果は少ないものの、発動が一瞬なのが助かる。代わりに射程が短く、殺傷能力が低いのが難点だ。そして属性効果が無い、効果時間が一瞬しか無いなどの欠点があるが、呪文詠唱が無いので近接戦闘中でも工夫すれば使えそうなのが良い。
魔法系スキルはまあこんなもんだろう。本来なら火や氷の属性魔法を覚えたい所だが、どうせ撃ち合いになれば魔王や勇者みたいなチート持ち勝てるわけは無いのだから選択する訳にはいか無い。
ちなみに近接戦闘系は[身体能力強化LV3]と「剣技LV3]、そして[投擲LV3]があれば十分にやれると思う。このままLVを上げれば良いだけだ。
そんな事を考えながらゴブリンを始末していったら一時間くらい経っていた。
動け無いゴブリンに止めを刺すのは流石に気が引けるかと思ったが俺を嬲り殺しにしてやろうとした時の下卑た笑い顔を思い出したら案外さっくりやってしまった。
戦利品はナイフが十二本、ショートソードは使えそうなのが無かった。刃こぼれと言うか、棍棒みたいな使い方しか出来そうも無いのが殆どだった。
『佐藤さんのショートソードとナイフは何気に業物です』と言う事なので無駄な荷物はいらないだろうという訳で放置した。武具はーーちょっと嫌な臭いがしたしボロボロなのでこちらも放置だ。
そして
一番の得物がこれだった。ゴブリンウォーリアのドロップアイテム、魔力付与された忍刀[風切り丸]だ。鑑定の結果、これが優れものだと判明した。[風斬][破斬]などの技が繰り出せる上に、忍者が使う武具なので、特別な魔力隠蔽効果がついていた。恐らくは魔力感知に引っかからない為なのだろうとアムルが言っていた。
俺は[風切り丸]と[ショートソード(業物)]を二本腰に互いに挿し、[ナイフ(業物)]をベルトに引っ掛ける。
「こんなもんかな」
『……本当にゴブリンキャンプを襲撃するんですか? このまま離脱した方が良いのでは?』
「森の中の移動力はゴブリンも侮れ無いし、もしかすれば森から出られ無いかも知れ無い。そうなったら後方から追われたら厄介だろ? [タイムアウト]では休憩にもならんしな」
そう、[タイムアウト]は確かに便利だが完全に時間が停止している訳では無い。そして、前後に同期させる為のタイムラグが発生するのだ。ゴブリンくらいなら問題無いが、手練れの相手ならその隙を逃すとは思え無い。
それにまだお宝があるかも知れ無いし、襲撃するならまだゴブリンウォーリア達が殺られた事を知らないうちに奇襲をかける方が、追われるより余程楽だ。
『分かりました。それでは[タイムアウト]! 佐藤さんて何も考えて無い訳では無いんですね』
「余計なお世話だ!」
俺は虚空に戻る
♢♢♢
「さて、確認だがゴブリン討伐クエストでのが残り四つ、ゴブリンアーチャー殲滅が一つだな?」
『は、はい! あと、あのゴブリンウォーリアはどうやらネームドモンスターだった様です。こちらも特別報酬が貰えます』
お得だな
「では、[忍術LV3][時空魔術LV3][魔力量増加LV3][魔力回復量増加LV3]でいこう! 一つは保留だ!」
『はや! 即決じゃないですか! しかも火や氷や雷なんかの属性付き攻撃魔法が一つも無いし! ……佐藤さんて捻くれ者なんですか? あまりにも最大火力が足りない様な』
「男の勘だな!」
『か、勘! ……ま、まあ、多くは言いません。兎にも角にも佐藤さんは生き残ったんですから。その意見、尊重させていただきます』
そしてーー光の輪が俺を包む。ダウンロードも慣れれば大した事は無いな。
『あと、補足させていただきますと、現在の私は元の【魂の器】のご5%程でしかありません。残りはこのユグドラシルに四散しております。それらは[魂の欠片][魂の雫]としてこの世界の何処かにある筈です。それを集めて復活させなければ【魂の器】本来の力は発揮出来ませんので、協力をお願い致します』
「因みに緊急措置はどうなった?」
『あの裏技は流石に何度もは不可能です。無理をするとこの【魂の器5/100】すら崩壊しかねませんから』
「そうか……では」
『はい! [ログアウト]します』
そして俺は再び森の中に戻った。しかし目的は二つある。
一つはゴブリンキャンプの襲撃、そしてもう一つは……
♢♢♢
森の中に戻ると周囲には切り刻まれたゴブリン達だったモノが散乱している。生々しい限りだな。
そして俺はゴブリンキャンプへ戻る。しかしーーその前に
「アルム! 少し質問させて貰おうか」
俺はアルムに[風切り丸]を突き付ける。
『……何の真似ですか? 出たとこ勝負の佐藤さんにしてはきっちり[ログアウト]してからなんて少しは考えてるんでしょうかね』
「だろ、俺って少し複雑な奴なんだよな」
森の中で
再び修羅場に突入する。