第四話 ログアウト
絶賛無双中!
序章
第四話 ログアウト
☆
俺は昔から争い事が大嫌いだった。だから喧嘩なんて殆どした事が無かった。保育園のころ可愛らしい掴み合いが記憶にある位なのだ。大人になってからは基本的に人と争いやすい性格だった訳でも無く、そもそもそんなトラブルに巻き込まれる事も殆どなってかった。
だから俺は自分がどんな奴かなんて、今の今まで考えた事すら無かった。
そう
今の今まで
♢♢♢
「うおおおおおっ!」
タイムアウトで[魂の器]に飛び込んだ俺は、追い縋るゴブリンの群れを蹴散らす為に、ショートソードとナイフを装備し、[身体能力強化LV3]、[剣技LV3]と[投擲LV3]を取得し、再び森の中の修羅場にーーログアウトした。
一瞬視界が歪む! 「ぐううっ!」 虚空に浮かぶ暗い遺跡の中から緑の中に意識を取り戻した俺は全力で疾走していたその速度を右足一本でゼロにしてーーそのまま背後も見ずに旋回した。
(先ずは八匹か)
突然踏み止まった俺に虚を突かれ先頭を走るゴブリンは慌てて立ち止まる。俺はそのままショートソードを横薙ぎにしてゴブリンの首を斬り飛ばした。
(一匹目!)
首を飛ばされ硬直して身体を痙攣させるゴブリンを二匹目に向かって蹴り飛ばし、仲間をぶつけられで体勢を崩した所へナイフを喉に突き立てた。(二匹目!)これで即死の筈だ。そのまま身体を回転させてナイフを引き抜き、三匹目のゴブリンを無視して四匹目のゴブリンの顔にナイフを至近距離から直撃させた。「ギイッ!」と呻くゴブリンを無視して三匹目を袈裟斬りにする。鮮血が舞う中をさらに加速する
その時『ゴブリンアーチャー!』アルマが叫ぶ!六匹目にいたゴブリンアーチャーが鉄の矢を放った。「ちっ!」舌打ちした俺は四匹目に突き刺さったナイフを掴みそのまま身体を左にターンさせ《ヌグッ》と言う滑る音と共に一気に抜いた。《ヒュンッ》と、風切りが頬を掠める!
色々と美味しい異世界ハーレム転生記!
その時ーー鉄の矢が頬を掠めた瞬間、[身体能力強化LV3]がその秘めた力を爆発させた。そのスキルは単に力を強化するだけでは無かった。筋力、反射神経、耐久力の全てを底上げする上位スキルなのだ。極限の危機感がそのスイッチとなり、俺は周囲がゆっくりと流れる様に動くのを感じていた。まるで全ての音が消え失せたかのような錯覚に陥りそうになる。鉄の矢を躱しゴブリンの顔に突き立てたナイフを引き抜きーーそのまま五匹目を胴薙ぎにした。
(五匹目!)
弓を構えようとするゴブリンアーチャーの首を跳ね飛ばし剣を振りかぶって飛びかかってくるゴブリンをショートソードで貫くと
『タイムアウト!』
[ゴブリン討伐クリア! ギフトを受け取りますかYESorNO?]
[YES]
次の瞬間ーー俺は虚空に立っていた。
アルマが嬉々とした顔で飛び付いて来た。
『ゴブリンアーチャーはあと四匹です。ゴブリンアーチャーには特別な報酬を用意塩ておきますね! さあ、佐藤さん、どのスキルを習得しますか!』
俺はスキル一覧を確認する。
「……魔術スキルは取得できるんだな?」
『はい。現在佐藤さんが持つ[剣技LV3]と[投擲LV3]そして[身体能力強化LV3]は近接戦闘系の中でエントリースキルとして習得出来る物の中では最上級のスキルです。だからバランス型を目指すなら、武術系では無く魔術系スキルを選択するべきでしょうね。どの系統の魔術スキルを取得するにしても、一つは極めるべきです。『三つの中レベルより一つの高レベル』が基本的な考え方ですね』
「……特化か」
俺は勇者と魔王の反則コンビである桐子と雪代の事を考えていた。あの二人はたとえ何らかの曰くありの勇者と魔王の身であれど、神の創りしアーティファクトを難なく破壊し、強力な結界を難なく潜り抜けて見せた。そして俺はまた彼女達と遣り合う可能性が高い。いや、必ずと言っていいだろう。
俺は暫しの思案の後
「[超能力LV3]を取る」
『……分かりました。ではゴブリン討伐クエストのギフト、一つ目には[超能力]を選びます』
「頼む。使えるんだよな?」
『はい。でもいきなり際どい使い方は止めておいたほうが……』
「……ああっ、心掛けて置く」
頭上に発生した魔法円がゆっくりと俺を包み込む様に降りてきた。頭の中に光の奔流が流れ込む様な感覚ーー何かが刻まれていった。
そして〈キィン〉と言う何かが弾ける様な音が響く。
『……ダウンロード完了しました』
俺はスキルを選択、[超能力LV3]を選ぶ。
「ここはテレキネシスだな」
『はい。発動時間が圧倒的に短いのが[超能力LV3]の強みです。殆ど属性攻撃が無いのが欠点と言えば欠点ですが』
「どんなスキルでも使いこなせなければ同じだ」
そして今は多く弾ける望めない。俺弾ける目の前の石の様な素材で出来た机にテレキネシスを使った。
「ぬうっ!」ーー《……ギッ…ギッギィ!!》
『…………』
一トン近い石の机が軋みながら動いた。ゴブリン程度なら造作も無く吹き飛ばすだろう。
「…よし、思ったより使い易いな」
『ではログアウトしますか?』
俺は周囲を確認する。そしてショートソードとナイフに神経を集中して
「よし! ログアウト!」
『了解! ログアウトします!』
血しぶきの舞う森の中へ戻った。
♢♢♢
ゴブリンアーチャーの首が飛んで行き、飛び掛かって来たゴブリンにナイフを突き立てた俺の後方からさらに飛び掛かって来た。
(なんだ?ゴブリンのくせに連携か⁉︎)
俺は身体を回してその遠心力を利用して切り裂こうとしたその刹那ーー「ーー殺気か!」[剣技LV3]が俺に危機を伝えて来た! 後方の一二匹の集団との距離が接近していた。その群れの前から三匹目にゴブリンアーチャーが居たのを[剣技LV3]は察知し、鉄の矢を放った事を殺気として伝えて来たのだ。
(さすがは[剣技LV3]だ。技だけでは無いのか)
そして俺は最適な身体のさばきを選択しーーまるで全自動殺陣機械の様に実効に移した。振り向くと目の前に迫る鉄の矢を感知出来る! 咄嗟にナイフを振りかざし《ギィンッ!》至近距離からの鉄の矢を弾き落とすとそのままショートソードを振り抜いた。肉を切り裂く抵抗がスルッと抜けたかと思うとゴブリンの身体がくの字に折れて真っ二つになっていた。(八匹目!)そしてーー鉄の矢を弾いたナイフをゴブリンアーチャーに投げ付ける![投擲LV3]は確実にゴブリンアーチャーの急所を穿ち後ろに仰け反る様に頭部にナイフをうけ絶命した。(九匹目!)
第二波か
俺は〈スゥッ〉と軽く息を吸い込み先頭の二匹の間に踊り込んでいく。[剣技LV3]と[身体能力強化LV3]に慣れて来たのか加速する俺は風の様に一瞬で間合いを詰めることごとが出来る。振りかぶってくるゴブリンのショートソードを弾き返しその勢いのまま前後の二匹を切り裂くと身体を回転させ周囲を視認する!(十、十一匹!)
三匹を無力化し左右に展開する二つの群れを捉えた。さすがに囲まれると厄介だ。今斬り込んだ群れの中にはもうゴブリンアーチャーはいない。右が二匹、左に最後の一匹が確認できる。
その時ーー視線の先に一匹のゴブリンが目にとまった。群の一番奥に見えるその姿は……
(でかい……普通のゴブリンの1.5倍位あるぞ!)
そこでアルマが叫ぶ
『タイムアウト』
[ゴブリン討伐クリア! 報酬を受け取りますか? YESorNO?]
[YES!]
再び虚空に戻る
♢♢♢
『……佐藤さんは戦闘経験があるんですか?』
「あるわけ無いだろ! スポーツは卓球くらいしかした事はねえ!」
『いかに獣人とはいえ、ゴブリンを殺すのに全く躊躇がありません。しかも命の危機で極限状態なのに……』
「そんな事は後だ! それより、一匹だけ変な奴がいたんだが、あれはボスか?」
『……よく見つけられましたね…確認してみます』
アルマはジッとウィンドウを開き確認を始めた。そして……
『!!!!! ま、まずいです! アレは上位個体です! しかもかなりレベルが高い。囲まれて相手どるのは流石に危険過ぎます』
やはり危険な相手か……
「このタイミングで超能力で逃げがうてるとおもうか?」
『……無理でしょう。特にあのゴブリンウォーリアがそれを見過ごすとは考え難いです』
「ボスがいるのか」
俺は一瞬だけ呼吸を止めた。
中央のゴブリンはあと九匹
左右に十匹以上が包囲を仕掛けて来ている。
そして[剣技LV3]と[身体能力強化LV3]があっても危険なゴブリンウォーリア
「今からマグロ漁船て訳にはいかないだろうな」