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坂から勢いよく、下りきった修一と夏海は
「きゃあぁ……」
と悲鳴声と共に海へと飛び出した。
だが、修一たちは空中でバランスを崩し、
海の手前の砂浜へと堕ちた。
「ハハハァ……」
修一はとても怖かったが何だか、夏海と
とても楽しくて、勝手に笑いが込み上げてきた。
夏海も修一の横で真っ青な空を見上げながら、
「ああぁ。楽しかったね!」
とポツリと呟いた。
修一も夏海と同じように仰向けになり、青い空を
見詰めながら、
「全く、無茶して…… でも、楽しかったよ。夏海」
と夏海に言った。
「ご、ごめんね! でも、修一と一緒だったから
私は全然、怖くなかったよ!」
夏海はそう言うと修一の手の上に自分の手を
優しく置いた。
修一はドキッとしたが、夏海の方に振り向くと
何も言わずに夏海の手をギュッと握り締めた。
嬉しかった夏海は修一のほっぺにチュっとキスをした。
修一が夏海と一緒に行った海から帰ってから
夏海と約束していた祭りに一緒に行く為に一人で
歩く練習をしていると修一の携帯電話が突然、鳴った。
「はい。もしもし……」
修一が携帯電話に出ると修一の携帯電話の向こうからは
「もしもし。今、何をしているの? 修一君」
と真美の声が聴こえてきた。
「な、何でしょうか?……」
修一は電話の主が夏海でなかったことに少しがっかりし、
明らかに迷惑そうに真美に話しかけた。
「あれ? つれないのね…… お姉さんね。今日、休みなの。
私とデートしない?」
真美は修一をデートに誘った。
「あの…… 僕は……」
修一は真美のデートの誘いが迷惑だった。
修一が真美のデートを断りきれずに戸惑っていると
「修一、いる?」
夏海がいつものように修一の家に遊びに来た。
夏海は携帯電話を持ったまま、困った顔をしている
修一を見て、
「誰?……」
修一に訊いた。
修一が夏海に答えることができずにいると夏海は女の勘で
修一の電話の主が女性だと感じ取った。
夏海は修一から携帯電話を取り上げ、
「誰ですか? 迷惑なのですけど……
もう(電話を)掛けて来ないでくれます!」
と言うと修一の携帯電話を切った。
『ああぁ……』
修一が夏海の行動に驚いていると夏海は怖い顔で
修一のことを睨み付けた。
修一は何も悪い事をしていなかったが
「ご、ごめんなさい……」
夏海に素直に謝ってしまった。
長い長い冬が過ぎ、修一は春先にゆっくりだけど、
松葉杖で歩けるようになった。
「よ、良かったね! 修一、歩けるようになって……」
夏海はまるで自分のことのように修一が
少し歩けるようになったことを涙を流し、喜んだ。
「な、泣くなよ!」
修一は夏海が自分のことのように歩け出したことに
嬉しい反面、少し照れ臭かった。
夏海は涙を拭いながら、
「うん! この調子なら、夏に一緒にお祭りに行けるね!」
と修一に優しく微笑んだ。
「ああ。去年、行けなかったから二人きりで祭りに行こうな!」
修一は松葉杖を突きながら、ゆっくりと夏海に近寄ると
夏海のおでこにキスをした。
夏海は頬を赤らめながらも少し背伸びをすると修一にキスをした。




