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修一の決意に刺激された夏海も
”よし、私も……”
と何かを決意した。
数日後。
「修一。 夏海ちゃんからなにか、聞いている?」
修一の母親は不可思議な顔をしながら、
テレビゲームをしている修一のもとにやってきた。
「いやぁ。何もきいていないけど…… どうして?」
「そう…… なら、これは嘘ね!」
修一の母親はそう言うと修一のそばにある
リビングのテーブルに一冊の週刊誌を置いた。
そこには夏海の電撃引退の文字が躍っていた。
『えっ?……』
修一は夏海の引退の文字に驚いた。
修一は夏海から真相を聞こうと夏海の携帯電話に
電話を掛けるが夏海には繋がらなかった。
『なんで出ないんだよ!』
修一がイライラしていると
「やぁ!」
修一の家の裏口から何事もないように夏海が
修一の前に現れた。
「お前、ここで何してんだよ?」
修一が目を丸くして、夏海に言うと
夏海はいつもの明るい表情で
「良いから。良いから…… さあ。お祭りに行こうよ!」
修一と約束していた祭りに行こうと
修一を祭りに誘った。
修一は少し呆れた顔で
「バカ!行けるか…… お前のせいで外は大騒ぎじゃないかよ」
夏海を怒った。
「ええぇ…… 楽しみにしてたのに……」
夏海はがっかりと落ち込み、しょんぼりし、
再び修一の裏口から帰っていった。
それから暫くして、夏海の引退もいつの間にか、忘れ去られた。
すると、夏海はいつものように修一の家にやってきた。
「さあ、修一。 遊びに行こう!」
修一を遊びに誘いに来た。
修一は夏海の声が聴こえないかのように懸命に自らの力で
車椅子から立ち上がろうとしていた。
立ち上がろうとしていた修一だがバランスを崩し、
倒れこみそうになった。
「あ、危ない!」
夏海は修一に駆け寄り、修一のことを抱きしめた。
「あっ! ……ごめん」
修一は夏海にそう言うと車椅子に座った。
「ごめんじゃないよ! 一人で危ないじゃない……」
夏海は怖い顔で修一のことを睨み付けた。
修一はあまりの夏海の怖い顔に
「ご、ごめん……」
と素直に謝った。
修一と夏海の間に気まずい、空気が流れた。
夏海に怒られ、落ち込む修一に悪い事をしたと思い、
夏海は
「散歩にでも行こうか?」
と言い、修一を外に誘った。
「う、うん……」
修一も小さく頷くと車椅子を反転させ、玄関へと向かった。
「修一、待ってよ!」
夏海も修一の後を追いかけた。
修一は自分の家から元気よく、飛び出してきた夏海に
「何処に行く?」
と言った。
「海に行こう! 海……」
夏海は勢いよく、修一の車椅子に飛びつくと
修一の車椅子を押し、海の方に駆け出した。
「あ、危ないよ。夏海」
夏海に子供っぽい行動に修一は身体を強張らせていたが
本当はとても楽しかった。
「さあ。行くよ!」
海へと続く長い坂の上まで修一の車椅子を押しながら、
やって来た夏海は修一の車椅子の後ろに飛び乗ると
一気に坂を下った。
「ぎゃあぁぁ……」
修一の悲鳴の声とは対照的に
「キャハハハァ……」
夏海は楽しげに笑っていた。
そんな二人を優しく包むように海からの潮風が流れてきた。




