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「ねぇ、夏海ちゃん。ちょっと、修一のことを
見ていてもらえるかな?…… おばさん。ちょっと家に帰って、
修一の着替えを取ってくるから……」
修一の母親は夏海に修一のことを見てもらうように
頼み込んだ。
夏海は寝たふりをしている修一のことを横目で見ると
「良いですよ!」
と頷いた。
「良かった。じゃあ、ちょっと行って来るわね!」
修一の母親は喜んだ顔をし、イソイソと病室を後にした。
『見つからなくて良かった!』
夏海はホッと胸を撫で下ろした。
修一も病室から母親が完全にいなくなったことを確認すると
ベットから飛び起き、
「なぁ。頼むよ!……」
夏海の手をギュッと握り締め、外に連れ出してくれるように
頼み込んだ。
「もぉ! しょうがないんだから……」
修一の強引さに負けた夏海は廊下に置いてある車椅子を
借りてきた。
そして、夏海は借りてきた車椅子に修一を乗せると
病院の中庭に連れ出した。
久しぶりに狭い病室から出た修一は大きく、深呼吸をした。
「ああぁ…… やっぱり、外の空気はウマイなぁ!」
久々に青空を見た修一は笑みを浮かべた。
「そう。それは良かった!」
夏海も修一につられ、目を瞑り、大きく深呼吸をした。
「なぁ! 俺って、いつ頃に退院できるんだろう?
早く、退院してまた、サッカーがしたいんだけど……」
修一は青空を眺めながら、独り言のようにポツリと呟いた。
「……」
夏海はなんて答えた良いのか、困ってしまった。
それから夏海はアイドルの仕事が忙しくなり、修一のところに
いけなくなった。
修一のことは気になっていたがアイドルの夏海には
修一のところに行っている暇はなかった。
だが、数日後。
夏海は久しぶりに丸一日、休みが取れ、ルンルン気分で
修一のもとを訪れ、病院の中庭を通り、修一の病室に向かおうとすると
その中庭に修一が一人、車椅子に座り、悲しげに空を見上げていた。
夏海はニコニコしながら、中庭の木の陰に隠れ、修一の携帯電話に
電話をした。
突然、鳴り出した携帯電話の着信の運に修一はポケットから
携帯電話を取り出すと
「はい。もしもし……」
と元気ない声で夏海からの電話に出た。
夏海は木の陰からちょこちょこと修一のことを
見ながら
「もしもし。修一、元気?」
と修一に話しかけてきた。
「なんだ。お前か……」
修一は夏海に興味ない声で素っ気なく、
夏海に言うと素気ない修一に怒った夏海は
「なんだはないでしょ! 失礼しちゃうわ!」
と文句を言いながら、思わず、木の陰から飛び出した。
「なんだ。やっぱり、そこにいたのか……」
修一は携帯電話を切るとまるで抜け殻のように
ぼんやりと再び、空を見上げた。
「あれ? やっぱり、バレちゃってた!」
夏海はいつものように明るく、修一のそばに近寄った。
修一は夏海の方に振り向くことなく、
「ああぁ…… バレバレだよ!」
と呟くように夏海に言った。
「あれ? 今日は何だか、元気がないね! どうしたの?」
「……」
修一は何も答えなかった。
夏海は修一との間に遠い距離を感じた。




