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「良かった。来てくれて…… 夏海ちゃん」
修一の母親は夏海の胸で押し殺して、泣いた。
夏海は修一の母親の様子で修一がただ事でないことがわかった。
夏海はそんな不安を打ち消すかのように
「修一のママ。修一は大丈夫なのでしょ?……」
と修一の母親に訊いたが修一の母親は暗い顔をしたまま、
「夏海ちゃん。修一の容態はね……」
夏海に修一の怪我の具合を教えてくれた。
修一の怪我は足の切断は免れたが脊髄の一部を損傷している為に
両足に後遺症が残り、前のように活発に走れ廻れなくなったのだった。
しかし、そのことはまだ、修一は知らなかった。
「う、うそでしょ……」
夏海はその事実を信じることが出来なかった。
どうしても修一をが目覚め、会話が出来そうもなかった
夏海はそのまま、逃げるように修一の病室から帰っていった。
翌日。
修一のことが気になった夏海はアイドルの仕事を休み、
修一の病室を再び、訪れると修一は身体を起こし、
病室の窓から切なそうに雲が漂う青空の風景を眺めていた。
切なそうに外の風景を見ている修一に夏海は
なんて声をかけたら良いか、わからなかった。
病室の前で戸惑っている夏海のことに気が付いた修一は
「よぉ!」
明るく、夏海に声をかけてきた。
「よぉ! 怪我したんだって……」
夏海も修一に足のことを悟られないように
精一杯、明るく振る舞い、ベット横の椅子に腰掛けた。
「うん。ちょっと、ヘマをやっちゃって……」
修一は明るく笑いながら、怪我した足を擦った。
「ドジねぇ!」
夏海は修一の肩を叩きながら、修一のことを笑い飛ばしたが
夏海の心は複雑だった。
「ハハハァ…… まったくだよ!」
修一も夏海につられて、笑った。
夏海と修一の笑い声で修一の病室はたちまち、明るくなった。
夏海には修一の屈託のない笑顔が救いだった。
「なぁ…… 夏海、今日は仕事は?」
「うん…… 休んじゃった!」
夏海は修一の唐突に話しかけた事に思わず、
修一から顔を逸らし、嘘をついた。
「そうなんだ。 じゃあ、今日はゆっくり出来るんだ!」
修一も夏海に素っ気なかった。
「うん!」
夏海も頷いたが二人とも何か、ぎこちなかった。
「じゃあ。頼むよ! 夏海。車椅子を借りてきてよ!
外の空気が吸いたいんだ」
修一は顔の前で手を合わせ、夏海に車椅子で外に
連れてもらうように頼み込んだ。
『え?……』
夏海は修一の頼みごとに困った顔をすると
そんな修一の病室の中に修一の母親が入ってきた。
修一は母親を見つけると慌てて、夏海の手を握り、
寝たふりをした。
夏海はドキッとして、身体を強張らせた。
「あら…… 夏海ちゃん、来てたの?」
修一の母親は身体を強張らせている夏海に
優しく、声をかけた。
「は、はい……」
夏海がぎこちなく、返事をすると修一の母親は夏海の肩に
優しく手を載せると寝たふりをしている修一の顔を覗き込んだ。




