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やっと、夏海と約束したお祭りの日が来た。
だが、修一は松葉杖なしでは歩くことは出来なかったが
夏海とお祭りにいけることで朝からソワソワしていた。
「ねぇ、お母さん。あれ何処にあるの?……」
修一は忙しなく、お祭りに行く準備をしていた。
すると、修一の玄関の呼び鈴が突然、鳴った。
「あっ。来た!……」
修一は夏海が来たと勘違いし、玄関のドアを喜んで開けた。
だが、そこに立っていたのは夏海じゃなくて、
浴衣姿の真美だった。
「あっ!修一君、いた。 ねぇ。お姉さんと
お祭りに行こう!」
真美は修一の手を取り、修一を修一の家の近くの
神社の夏祭りに誘った。
修一は真美の手を振り払い、
「ごめんなさい。今日は約束があるので……」
真美の約束を断ろうとしたが
「良いから、良いから……」
真美は強引に修一の手を引き、近くの神社の夏祭りに
修一を連れ出した。
それから数分後に夏海は修一の家にやってきたが、
修一の母親に真美と一緒に夏祭りに行ったと聞かされ、
『う、うそでしょ……』
と思いながら、修一たちの後を走って、追いかけた。
夏海は懸命にお祭りで人ごみの多い、神社の参道を
修一を探した。
だが、夏海は中々、修一のことを見付ける事が出来なかった。
「もう、何処にいるのよ!」
夏海が諦めかけた立ち止まろうとしたその時、
目の前の金魚すくいの露店から修一が少し迷惑そうな表情で
出てきた。
『いた!』
修一を見つけた夏海は嬉しそうに修一に駆け寄ろうとしたが
修一の傍らには真美がいた。
「ねぇねぇ…… 修一君。次にあれに行こう!」
真美は修一を独り占めするかのようにべったりと修一に
抱きついた。
『何、あの人? ムカつく!』
夏海は激しく、真美にジェラシーを抱き、
修一と真美との間に割って入った。
「な、夏海……」
突然に現れた夏海に修一は驚いて、身体を強張らせた。
「……」
夏海は何も言わずに怖い顔で修一のことを睨みつけた。
「ご、ごめん…… 夏海」
修一は小さい声で夏海に謝った。
夏海は優しく、修一に微笑んだ。
夏海は真美のことを睨み付けると
「ごめんなさい。 修一と約束があるので……」
と言い、修一を真美から連れ去った。
修一は自分の手をぐいぐい、引っ張る夏海に
「おい、夏海。何処に行くんだよ!」
と言ったが夏海は
「内緒! 着いてからのお楽しみ!」
修一に言うと神社の裏の小山の山頂へと向かった。
途中で息を切らした修一は夏海から手から手を振り払うと
「ちょ、ちょっと…… 待てよ!少し、休憩!」
小山の中腹で立ち止まった。
修一の前で同じように立ち止まった夏海は
「もぉ!しょうがないなぁ…… もう少しだから頑張って!」
と言うと穿いているスカートの丈を少し捲し上げると
修一の後ろに廻り、修一の背中を押しながら、
再び、小山の山頂を目指した。
やっとの思いで小山の山頂を訪れた修一と夏海の
眼下には星空のような修一が住む街並みが広がっていた。




