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第6話 魔術書を読もう

 事件から1ヵ月後……


 やっと俺は起きられるようになった。


 寝ている間は、はっきり言って退屈を持て余していたので、乳母のボニーさんに頼んでこの家にある本を出来る限り持ってきて貰った。


 殆どが父親であるザヴィアー男爵の所有している本である。


 この世界にはまだ印刷技術など無い。


 全てが手書きの本である。


 その為、本は高価だ。


 辺境の貴族は普通、本などにお金をかけたりはしない。


 しかし、ザヴィアー男爵は意外にも読書家でいろいろな本を揃えていたのだ。


 シンディを助けて次期当主予定・・・・・・として発言権を増していた今の俺には多少の我侭も許されている。


 ボニーさんから見て、いわゆる幼児に不適格な、いかがわしい本はオミットされた。


 本の種類は歴史書、政治経済書、戦術書、武器防具の書、農産物の書、生活書、そして魔物の書などで当然の事ながら全てが大人向けに書かれたものだ。


 それらの本を教材としてこの1ヶ月の間、俺はボニーさんを先生としてある事をやっていた。


 飛翔魔法と一緒に選択肢として出た文字解読のスキルが取れなかった為、この世界の文字を習っていたのだ。


 この世界の会話は何故か皆、日本語だ。


 かといって文字は漢字かといえばそうではなかった。


 アルファベットを崩したような文字である。


 どちらかと言えば北欧神話のルーン文字に似ているのだ。


 俺は会話と文字の付け合わせをしながらどんどん文字を覚えていった。


 そして1ヶ月の間にボニーさんが父であるザヴィアー男爵から借りてきた、15冊ほどの本を全て読破してしまったのだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 そうなると、更にザヴィアー男爵は俺に対して欲が出てきたようだった。


 それは仕方が無いことであろう。


 何せ、3歳児が文字を読めるのである。


 それどころか、大人向きの難しい専門書を読めてしまうのだ。


 鉄は熱いうちに打てと言わんばかりに夫人であるアデリンと共に3歳児の俺にいろいろな事を教え始めたのである。


 そうなると俺はシンディが心配だった。


 俺にかかりっきりになるザヴィアー男爵夫妻。


 それが、今まで両親の限りない愛を受けて育ってきた彼女にどんな影響が出るのか?


 だが、心配は杞憂だった。


 回復してから殆ど、シンディは俺の部屋に入り浸りになっていたからだ。


 そして俺とボニーさんが本を元にやりとりをしている時にじっと耳をすまして聞いていたりするのだ。


 俺は1回、聞いた事がある。


 こんな話を聞いていて、つまらないだろうと?


 しかし彼女はにこりと笑って、俺の傍に居るだけで楽しいと言いやがった。


 なんだよ、この俺の天使様は―――可愛すぎるぞ!


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 それからまた1ヵ月後、ザヴィアー男爵はまた粋な計らいをしてくれた。


 俺の為に遠い王都に使いを出して魔法の本を取り寄せてくれたのだ。


 そもそも俺は魔法の体系や修行方法に関しては全くの素人だ。


 俺は早速、その本を読む。


 おかげで、この世界の魔法の体系を覚える事が出来た。


 この世界の魔法は水・風・火・土の精霊によって加護された四大属性精霊魔法、聖なる存在の加護による光属性魔法、そして混沌なる存在の加護による闇属性魔法、そして様々な理から生まれる無属性魔法の7つである。


 一番、多いのは無属性魔法で瞬間移動や収納、索敵、そして鑑定などと多種多様だ。


 ちなみに俺の使える魔法のうち、雷属性魔法は神の裁き等で大神が主に使う為、光属性の系統に入り、、飛翔魔法は風属性の精霊魔法になるそうである。


 俺はその本を何度も何度も、そして一生懸命読み込んだ。


 何せ、ランダムに二択の啓示が来る身としては提示された魔法の内容を知らなかったでは話にならず、選択の判断を誤れば死を招く事となるからだ。


 魔法の修行方法も書いてあった。


 魔法に関して一番大事なのはまず集中力である。


 体内の魔力オドを固められるか


 次には感覚イメージ、つまりは想像力だ。


 固く練られた魔力を今度は最適な魔力波オーラに変換できる魔法感覚を持っているか。


 これらを繰り返し、繰り返し、魔法を発動することが上達への道であると……


 何だ、俺がやっていた飛翔魔法の修行方法と変わらないじゃないか。


 俺はずっと同じやり方でやって来たからね。


 継続は力なりだな。


 俺が魔術書に夢中になっていると服のすそを誰かが引っ張る。


 こういう事をするのは―――やはりシンディである。


「まほうのおべんきょう?」


「ああ、そうだ」


「あのときのこと、おぼえてる」


「そんな怖かった事、早く忘れろよ」


「ううん、わすれない。おにいちゃん、つよかったから」


「そうか、お兄ちゃん、もっと強くなるからな。お前を守る為に!」


俺はシンディを見詰めると、はっきりと心に誓ったのであった。

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