表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

第4話 相打ち

 俺は久々の二択の啓示を息を呑みながら待つ。


 は、早く出ろっ!


 で、出た!


 次のうち、ひとつを選択してください


 筋力E

 雷属性魔法E


 えええ~っ!


 どっちだ、どっち~!?


 ゆっくり考えている猶予は無い!


 決めた!


 雷属性魔法Eを選択します!


『二択の勇者様の選択は受理されました、雷属性魔法習得の手続きを致します』


 見ると、オークの手がもうシンディの喉にかかろうとしている。


 幸いにも俺の身体は動くようだ。


 すかさず雷撃魔法をイメージする。


 しかし、どうやって魔法を撃てばいいのか、分らない!


 南無三!


 仕方なく全身に雷を纏わせる!


 し、死にそうだ!


 俺は痛みを耐え、全身に雷を纏いながら、オークに突っ込んでいったのだった。


 俺がオークに当たった時に俺と奴の身体が遠くに吹っ飛んだような気がするが、よく分らなかった。


 ごわごわした体毛の感触、1ヶ月も風呂に入っていないような獣の悪臭。


 気色悪いが、そんな事は言っていられない。


 俺は小さな手でオークに必死にしがみつく。


 何かが焦げる臭いもする。


 俺が強く強く念じると、ばりばりと空気が裂けるような派手な音がした。


 同時に断末魔の叫びを聞いた瞬間、俺は意識を手放したのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 あれ?


 ここは?


 今、俺が居るのは何も無い真っ白な空間。


「ま~た、俺、死んだのか? 折角、二択の勇者になったのに……」


 俺は誰も居ない空間に向かって1人ごちた。


「ふふふ、な~に、言ってるのよ。見直したわよ、あんな事するなんて」


 聞き憶えのある声だ。


「そうよ、まさか忘れちゃいないでしょうね?」


「誰だっけ?」

「怒るわよ!」


 俺が軽く突っ込んでみるとマジギレしそうな負の感情が襲ってきたので慌てて、前言を撤回する。


「す、すみません」


「まあ、良いわ。それより君、さっきも言ったけど凄い事したじゃない。碌に魔法も使えないのにオークに雷撃をまとって突っ込むなんて、普通出来ないわよ」


「あの、そんな事より……マリアンヌ、ひとつ聞いていい?」


「ええ」


「妹は―――シンディは助かったのかな?」


「ええ、無事よ、でもこれで君の運命が変わったわ」


「え?」


「ただひとつ、これだけは、はっきり言えるわね。君が、ううん、もうタイセーって呼ぶわね。タイセーがシンディを助けた事でまた運命が変わったのよ」


「運命?」


「そうよ、私の見立てでは、あの場をタイセーは逃げるか、助けようとしてもオークに返り討ちになってあっさり殺され、シンディも攫われて殺されるという予測だったのよ。それをタイセーがシンディを助けた事で彼女はとりあえず残りの人生を歩めるって事」


 怖ろしい事をしれっと言うな、でも兎に角、よかったよ。


「…………」


「これもあの時、雷属性魔法をチョイスした結果ね。タイセーはあの時MPの殆どを一気に雷撃1回に使ったから、そりゃオークも即死するわ」


「もし、筋力を選んでいたら?」


「殺されていたわね、確実に、多少の筋力を得たって、流石に3歳児が筋力でオークには勝てないもの」


「…………」


「分ったでしょう? 二択の勇者って一瞬の決断力と運が求められるのよ」


「……さっきからの話だと俺は生きているの?」


「ふふ、勿論よ。さあ、そろそろ帰りなさい。そうそう帰ったら今回のイベントクリア特典が届くから、楽しみにね」


マリアンヌの最後の声がエコーしながら俺を送る。


その涼やかな声を聞きながら、俺の意識はまた遠くなって行った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「う~ん」


 気がついた俺は自室のベッドに寝かされていた。


 すぐ脇に居るのは近くの村から来た司祭らしかった。


 この世界ではこういった司祭や僧侶が医者の役割を担っているのだ。


「あ、ああっ! 気がついたか! 神よ、貴方に感謝致します」


 この声は―――確か、ザヴィアー男爵だ。


「ち、父上?」


「お、おお、ジョナサン、我が息子よ。よくぞシンディを救ってくれた!」


「ああ、ジョナサン! ありがとう、ありがとう!」


 こっちはザヴィアー夫人か、2人ともこんな顔していたっけ?


 そして碧眼の目に涙を一杯溜めて、俺の手を握っていたのはシンディだった。


「お、お兄ちゃ~ん! うわああああああん!」


 オークほどの魔物を殺すほどの雷撃を無防備な身体に纏った筈なのに俺は死の淵から生還した。


 そしてこの日を境に流石のザヴィアー男爵夫妻も俺を改めて義理の息子と認めてくれたのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ