第2話 異世界に転生しました
元の世界に戻れるかもしれないと聞いて、俄然俺はやる気が出て来た。
「そうかぁ、じゃあ頑張ろう!」
しかし、そんな俺の出鼻を挫く様なマリアンヌの一言。
「ふふ、でも気をつけてね、二択の勇者は完全体になるまでは不死身じゃないから」
「へ!?」
「当然、さっきのステータスを見たら、分るでしょう、この世界で死んだら魂も死んでそれっきりだからね。当然、元の世界にも戻れないし」
厳しいなぁ。
あ、……防御Eだったっけ。
頑健のスキルも無いし。
「不死のスキルがあるか、どうかも私の口からは言えないわ。まあこれからもたまにはフォローするからね」
言い忘れたが、今の俺は身体を持たない精神体らしい。
これから、マリアンヌの導きでこの世界の違う肉体に転生、いわゆる受肉するのだ。
ピンポーン
あら、早速だ。
転生先の選択をして下さい。
裕福だが、冷たい両親
貧乏だが、暖かい両親
ええっ!?
う、う~ん、これって?
「ほらほら、愚図愚図していると選べなくなりますよ」
「だってさ、ある意味、究極の選択だよ」
『あと30秒です!』
マリアンヌの機械的な声が鳴り響く。
ええっ!? 目の前にマリアンヌ、居るよ。
これって、マリアンヌの声じゃあないの?
「ふふふ、私のです、録音済みの自動音声なんですよ」
はぁ!? 自動音声って?
って考えている暇は無いぞ、 …………決めた!
うん、よし! いくら両親が優しくても貧乏は嫌だ!
「裕福だが冷たい両親で!」
『二択の勇者様の選択は受理されました、転生の手続きを致します』
マリアンヌの自動音声が流れると俺の身体が眩い光に包まれて行く。
「まったね~!」
マリアンヌが手を振っている。
俺も光る手を振る。
光が全てを覆い尽くした時、俺の意識は遥か遠い所に運ばれていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おぎゃあああああ」
「あらあら、お腹が空いたのかしら?」
気が付いた俺は……今、赤ん坊となって小さなベッドに寝かされていた。
「でもあんたも運が無いわね、孤児院から引き取った後に奥様にお子様が生まれるなんて」
今、俺の傍で話をしている女性はこの家の奥様でもなく俺の実母でもなかった。
「さあさあ、今、おっぱいをあげるからね」
胸をはだける。
牝牛のような逞しいおっぱいだ。
この年齢が30歳前後の恰幅の良い女は、どうやら俺に付けられた乳母のようである。
俺は相当に腹が減っていたらしい、強く強く乳母のおっぱいを吸う。
「こうしていると情が湧くよ、もし奥様がこの子を要らないと言ったら私が引き取ろう」
どうやら優しい人らしい。
俺はホッとしてお腹が一杯になったら、だんだんと眠くなってきた。
「あらあら、もうおねむなんだね。ぐっすりおやすみ」
優しい声の子守唄を聞かされながら、俺は深い眠りに落ちて行ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
次に目覚めた時は夕方になっていたらしい。
俺が居る部屋の窓から夕日が差し込んでいたからだ。
乳母の姿も見えない。
ほうと俺は溜息をひとつ吐く。
とりあえず現状把握だ。
ステータスオープンしよう。
俺が調べると現状のステータスは次のようだった
称号:【二択の勇者】LV.1
仮称:ザヴィアー家養子
名前(本名):タイセイ・ミフネ
名前(仮名):ジョナサン・ザヴィアー
HP:100 / ? 、MP:150 /?
疾走:C、スタミナ:E、防御:E
特記/ 女神の加護
仮称と仮名が入ったのか?
確かにあのままじゃあ、この世界ではおかしいしな。
ふうん、マリアンヌの加護もあるんだ。
ただこの前の能力アップ以外の効果は今の所、不明である。
しかし、今の俺は1歳の赤ん坊だ。
これじゃあ―――やれる事が無いじゃあないか!
ただ、はいはいは出来るようなので床に下りることさえ適えば、家の中を移動できるのだが……
そんな事を考えていた時だった。
ピンポーン
頭に例のチャイムが鳴り響く。
おお、二択か、転生して初めてだ。
果たして何だろう?
次のうち、ひとつを選択してください
飛翔魔法:E
文字解読:E
成る程、移動手段に情報取得手段の二択と来たか!
これは飛翔魔法だろう。
文字はあの乳母か、誰かにいつの日か教えて貰えば良い。
飛翔魔法が今後、選択肢に出てくるのか、覚えられるのかは分らないが、特別な魔法に違いないのだから。
第一、MPがあるのに行使できる魔法が無いのだ、これは勿体無い。
飛翔魔法を選択します!
『二択の勇者様の選択は受理されました、飛翔魔法習得の手続きを致します』
俺は再び、ステータスオープンを唱えてみる。
称号:【二択の勇者】LV.1
仮称:ザヴィアー家養子
名前(本名):タイセイ・ミフネ
名前(仮名):ジョナサン・ザヴィアー
HP:100 / ? 、MP:150 /?、
疾走:C、スタミナ:E、防御:E
魔法 / 飛翔:E
特記/ 女神の加護
おお、飛翔魔法が加わっている。
そして!
魔法もやっぱりスキルレベルがある事も知る。
そりゃ最初からすいすい自由自在には飛べないだろうな。
こうして俺はやっと魔法をひとつ手に入れて、魔法スキルの上達に励む事が出来る様になったのだった。