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銀髪ツインテールメイド その一

衝撃的な出会い。

物語が始まります。

1


 寂れた路地裏。

 あたしは立ちすくんでいた。

 思わず手に持っていた傘を取り落としそうになるほど動揺していた。

 雨が強い。雨はコンクリートの地面を激しく打ち鳴らしている。

 表通りにある街灯がささやかにあたしの場所を照らし出す。

 あたしは眼前のそれに向かって足を踏み出す。

 青いゴミ箱が横倒しになり、ゴミが辺りに散乱している。嫌な臭いが鼻を突く。

 ゴミとゴミの間をぬうように、水に濡れて濃い黒になったコンクリートと対照的な、真っ白な裸体がうつ伏せに横たわっていた。

 きめ細やかで、触ればきっとスベスベなんじゃないかと思えるほど綺麗な肌の裸体だ。

 小さなお尻が可愛く、そのくせうつ伏せになっているせいで潰れている胸はやたらと大きく身体とコンクリートの間からはみ出している。

 そして髪の毛は銀色だった。肩よりも少し長い。銀の髪は一本一本が外灯に照らされて、まるで針金のようにキラキラしている。そんな髪を、あたしは生まれてこの方一度も見たことがなかった。


 あたしはその裸体に手を伸ばす。

 でももし、それが死体なら、あたしは生まれて二回目の死体との接触を果たしてしまうことになる。

 あのいんらんの母の死体は異様に固く、冷たかった。小さい時もあの人の手を取った覚えはないから生きていた頃の体温は知らないけど、死体は冷たいものだってことは否が応でも理解した。

 死体は冷たくて、切ない。

 いんらんのあの女は大嫌いだったけど、あたしは無性に泣いてしまったのを今でも鮮烈に覚えている。


 もし今死体に触れてしまったら、あたしは年甲斐もなく泣いてしまうかもしれない。

 そんなのはゴメン。なんとなくだけど、今のあたしには泣くなんて役割は与えられていないよう気がする。

 だから泣いてはいけない。

 そう思っていると……


――ピクッ


 その裸体が微かに動いた気がした。

 あたしは心臓をバクバクさせながら、その裸体に手を伸ばした。

 温かかった。

 冷たい雨を浴びてすっかり冷えてしまってはいるが、それでもその身体からは体温を感じられた。

 あたしはなぜか泣きそうになっていた。微かにしかないのに、その温かさがあたしの心を掴んで離さなかった。


 あたしは頭の方に回り込んで、僅かに右を向いているその顔を覗き見た。

目を閉じていてもわかるほどの美少女だった。

 長いまつ毛に、すらっと高い鼻、そして控え目な大きさの口。

 あたしは一目で魅入られた。


 あたしはその子の顔を軽く叩いてみる。

 微かに嫌がるように顔を歪めた。

 その様子が愛くるしすぎて、あたしは眩暈を覚えた。

 唐突にお持ち帰り願望に襲われた。

 まるで小学生がおもちゃ屋で可愛らしい人形に魅せられるように、あたしはその子に引き込まれていた。

 不意にあたしは傘を投げ捨てた。

 息が出来なくなるほど雨は冷たい。

 あたしは寒さに体を震わせながらも、少女を背負った。

 身体はとても軽かった。

 胸のふくよかな膨らみが背中を刺激する。正直興奮した。濡れる。変な意味で。

 雨でべちゃべちゃになりながら彼女をしっかり背中に載せた。もう身体で濡れていない部分はなかった。変な意味じゃなくて。

 そこで思い当たった。

 裸の女の子をそのまま背負うのはまずくないかと。

 あたしは一度彼女を地面に降ろした。

 水を大量に含んだポニーテールを振り回しながら、あたしは着ていた茶色のカーディガンをその子にかけた。

 再び少女を背負う。

 雨が糊のようになり、カーディガンはピタリと少女の白い肌にくっついた。

 お尻のラインがくっきりしすぎているだろうが今は気にしていられない。

 大事な部分が見えないように、あたしはお尻をしっかり手で抑えた。


「くしゅん」

 寒かった。嫌がらせのように雨は降り続く。

 背負う少女が震えた。

 それにつられてあたしも震える。

 彼女を落とさないように一歩を踏み出してみる。

 足取りは軽い。

 あたしは、雨の中を家に向かって歩き出した。

裸の少女を背負い、夜の道を行く。

続きます。

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