23 絃が"語る"!?
「それは・・・・・・
私には、弟がいるんです。」
静かに、麗央さんに話し始めた。
この話を自分から誰かにするのは、初めてだ。
どうしても少し声が震えてしまう。
でも、麗央さんの優しい眼差しに安心して、言葉が溢れ出てしまう。
「半年前・・・両親と弟の乗った車が、信号無視をした車とぶつかって・・・」
——そう、あれはお正月が明けて間もない、冬休みの日だった——
「絃〜!響〜!お父さんと一緒に、ちょっと買い物にいってくるけど、あなたたちはどうする?」
「俺、消しゴム買いたい。一緒に行くよ。お姉ちゃんは?」
「えー・・・。今ドラマいいとこだからっ!みんなで行ってきて!あ、ついでに雪餅大福アイス買ってきてねー♪」
「はいはい。絃のお正月は毎回、寝正月ねっ!ダラダラしてー!」
「お正月はダラダラするからいいんじゃん〜!早く行ってアイス買ってきてねっ♪」
「まったく。じゃあ行ってくるわね。」
「行ってきます。絃、コタツで居眠りするなよ。」
「お姉ちゃん。行ってきます。」
「はいはーい!いってらっしゃーい!!」
家族の中で私だけ、ドラマの再放送に夢中で買い物にはついて行かなかった。
それが、両親と話す最後になるなんて、その時は思いもしなかった。
——♪〜♪〜♪〜——
私のスマートフォンが揺れている。
もうっ!いいところなのに!
・・・知らない番号からだ。誰だろ?
「はい。」
「こちら、練馬区にあるひかり総合病院と申します。神楽慎一さんのご家族の方でお間違いないしでしょうか?」
「えっ・・・神楽慎一は私の父ですけど・・・」
スマホを持つ手が震える。
病院から電話・・・?
もしかして、何かあったの・・・?
「先ほどご家族の方が交通事故に巻き込まれて、救急搬送されました。すぐに来ていただけますか?」
・・・!
訳もわからぬまま、急いで病院へと駆けつけた。
でも、私が病院に着いた時には、お父さんとお母さんはすでに帰らぬ人となっていた・・・。
「お父さんっ・・・、お母さんっ・・・!うそでしょっ・・・そんな・・・」
余りに急な出来事で、頭が働かない。
何が起こっているのか分からない。
さっきまで元気だったのに。
買い物に行って・・・アイスを買ってきてくれて・・・お母さんの小言を聞きながら、お父さんと響の呆れた顔を見ながら、アイスを食べるはずだったでしょ?
どうして?
呆然と立ち尽くす私に、病院の先生から声がかかった。
「神楽響さんのご家族の方ですか?
・・・響さんの手術は無事終わりました。なんとか一命を取り留めましたが・・・一週間が、山場だと思ってください。」
それからの一週間は、ほとんど覚えていない。
私が呆然としている間に、お父さんとお母さんのお葬式は終わっていた。
お父さんもお母さんも地方の出身で、お父さんの父、私のおじいちゃんが喪主を務めてくれた。
お父さん方の祖父母も、お母さん方の祖父母も、うちにおいで、と何度も誘ってくれていたけれど、その度に私は首を横に振っていた。
絶対に、響の近くにいたかったから。
しかし、一週間を過ぎて容体が安定しても、響きが目を覚ますことはなかった。
お医者さんからは、もう目覚めないかもしれないと言われた。
延命治療をするか?なんて、そんなの・・・決まってる。
響は今も、一生懸命生きている。
生きようとしている。
それなら、私に出来ることを一生懸命やりたい。
幸い、両親がしっかりと貯金をしてくれていたようで、金銭的に困ることはなかった。
(実家の方は父方のおじいちゃんが、管理してくれている。)
それから私はすぐに、病院近くのアパートへと引っ越して一人暮らしを始め、学校も響の病院から近いところへと転校した。
引越しして新しい生活に慣れてきたと思ったところで、ダンジョンが出現したのだ。
ダンジョンでエクストラボスを倒してしまったけれど、わざわざ危険な冒険者になるつもりもなかった。
響が目を覚ますことを願いながら、平穏な生活を送る予定だったのだ・・・。
そうして今・・・ダンジョンで治癒スキルが手に入るかもしれない。
響を治せるかもしれないという、少しの希望が見えてきたことによって、私の人生が激変した。
私が冒険者になって、治癒スキルを手に入れられる可能性が少しでもあるなら、
ほんの少しの希望でも、その希望に縋りたい。
諦めたくない・・・!
最後まで読んでくださってありがとうございます✨
絃の悲しい過去・・・。
自分でウルウルきちゃいました・・・。
そんな悲しい過去を乗り越えて、前を向いて進もうとする絃ちゃんを書いていきたいと思います!
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それでは、また次の話でお会いしましょう!!




