18 ステータス獲得⑤!?
「・・・と!・・・いと!——ッいと!」
ハッ!
誰かに呼ばれて、慌てて目を覚ます。
「いと!何回も呼んでるでしょ!早く起きなさいっ。朝ごはん、出来たわよ。」
「お、お母さん・・・?」
「どうしたの?まだ寝ぼけてるんじゃない?支度して、早く降りてきなさい!」
「はーい。」
身体を起こしてどこにいるのか確認する。
そうだ、ここは私の部屋だ。
・・・なんだか、すごく嫌な夢を見ていた気がする。
時計を見ると時刻は7時を指していた。
ヤバいっ!早く準備しないとっ!
私は着慣れた制服に素早く着替えた。
あれ?制服ってこんなだっけ?
いつもの着慣れた制服のはずなのに・・・。
なんでそう思ったのかはわからないが少し、違和感を感じた。
「早く行かないとっ!」
バタバタバタッ!
いつものことなので、足を踏み外さないように駆け降りるのには慣れている。
階段を駆け降りリビングへと急ぐ。
「もー!絃は毎日毎日慌ただしいわねー!
響を見習って、もう少し早く起きる練習をしなさいっ!」
リビングに入るとお父さん、お母さん、響が座っていて、私を待ってくれていた。
「絃、早く座りなさい。食べるぞ。」
「お姉ちゃん、おはよー!」
「お父さん、響、おはよー!」
私は響の隣へと座る。
「「「「いただきます!」」」」
「はぁー・・・!お母さんのお味噌汁、美味しいー!体に染み渡るー!」
「なぁにババくさいこと言ってるのよ!毎日食べてるでしょ。」
そうだ。毎日食べてるはずなのに、どうしてこんなに懐かしい気持ちになるんだろう。
「お姉ちゃん、後ろの寝癖すごいから、後でちゃんと直しなよ。」
「ほんと⁈急いで食べなきゃー!」
「こらこら。ゆっくりよく噛んで食べなさい。」
「ほんとそそっかしいわねー!一体、誰に似たのかしら?」
「・・・絶対、お母さんでしょー!!!」
「「「「ぷっ、あはは」」」」
私の、いつもの穏やかな日常。
大切な——家族——
夢の中での私は、何か大切なものを失くして、ひとり孤独に戦っていたような気がする。
今まで悪夢を見てたみたい。
こっちが現実よ。
この暖かな日々が私の現実なの——。
「お姉ちゃん、僕、先に学校に行くからね。遅刻しないように、ちゃんと余裕持って出なよ。」
「響っ!わかってるよー!いざとなったら自転車ぶっ飛ばすから!任せといてー!」
「・・・それが危ないから言ってるんでしょ。」
「わかった!わかった!後で追いかけるからー!いってらっしゃい!」
「いってきます。」
可愛い一つ下の弟、響を送り出した後、私も急いで学校へ行く準備をする。
——響、元気そうでよかった。
???
元気そうでよかった?響はいつも元気なのに・・・。
なんだかよくわからない気持ちになる。
まだ悪夢を引きずってるのかな。
よしっ!今日も元気に、頑張りますかっ!
「いってきまーす!!!」
ドアを開け、自転車の元へと走り寄る。
「私の自転車ってこんなだっけ?
それに・・・・・・アヒル?」
自転車のハンドルの上にアヒルが乗っていた。
自転車にこんなの付ける趣味はなかったはず・・・。
なんで付いてるんだろ?
うっ!突然頭に痛みが走った。
——『(自称)自転車の妖精、不死鳥のフェニックスとはワイのことやで〜!』
——「はいはい。不死鳥のフェニックス、フーちゃんね!」
——『なんやねん。フーちゃんて、ワイはもっとかっこいい呼び方が——!』
——(お、おう。確かに、ヤバそうなやつやな!ただ、ワイらには敵わへんで!)
「・・・フーちゃん?」
ぱぁっ——
突然、ハンドルの上に乗っていたアヒルが光り出した。
『ぷはーっ!やっっと息ができるー!ワイのキュートな羽がカッチコチになってもうたわー!』
フーちゃんが腕をぶんぶんと振り回している。
ひどく懐かしさが込み上げてきて、なぜか目に水が溜まってくる。
『ようワイのこと思い出してくれたなっ!おかげで動けるようになったでー!
ほら、自転車もこの通りやっ!』
「っ!!」
私の自転車も進化した電動自転車へと戻っていた。
「フーちゃん・・・ここがどこかわかる?」
『ここは、絃の精神世界っちゅうやつやな。あの黄金スライムに、精神攻撃されたんや。絃にとって居心地のええ世界を見させて、ここから出さんようにしてるっちゅうことや!』
「そんなっ!どうすれば現実に戻れるの⁉︎」
『それはもちろん、元凶の黄金スライムを倒すしかないやろー!』
「でもっ!スライムがどこにいるのかわかんないよ?」
『大丈夫や!このチャンリンコがちゃーんとスライムのところまで運んでくれるわ!ワイらチームで、家族やろ?安心しぃ♪
せやけど・・・あの黄金スライムを倒すには、弱さに漬け込まれんような、"強い心"が必要なんやで!』
「わ、わかった!」
自転車に跨ろうとして、ふと思い出す。
そうだ!この子に名前をつけようと思ってたんだっ!
えっとー、チャリーナ!
は違うか、チャリコ・・・
いや、女の子かわかんないしっ!
爆走、ズーマ・・・。
ズーマ(Zoomer)!
「あなたの名前っ!〈ズーマ〉はどうかな?いつも勢いよく走り抜ける姿がかっこいいから!」
私がそう言うと、自転車、いやズーマが桃色に強く光った。
光の色で感情を表してるのかな・・・!!
多分桃色は・・・喜びだよねっ!
今まで桃色に光っていた時のことを思い出す。
「喜んでくれてよかった!ズーマ!さっそくだけど私、黄金スライムのところへ行きたいの!連れて行ってくれる?」
ズーマが黄色く光る。オッケーってことかな?
私はすぐにズーマへ跨り、ペダルを踏んだ——。
・・・黄金スライムの元へと向かいながら、考える。
ここは、私の精神世界だと言っていた。
家族みんなで過ごしていた、すごく幸せだった時を見せられたのね・・・。
何気ない毎日が本当に、幸せだったんだ・・・。
すごいスピードで走っていたズーマが、減速し始めた。
——・・・いた。
空き地の真ん中で佇んでいる、黄金スライム。
この世界でこのまま、楽しい日々に浸っていられたらどれだけ幸せだろう。
「でもそれは・・・過ぎ去った過去よ!
現実世界では、生死の境を彷徨いながら、戦っている響が待ってるの!
私はこんなところで、立ち止まってなんかいられない!
響を治せるスキルを手に入れて・・・必ず——響を目覚めさせるのっ!!」
「ズーマっ!お願いっ!〈爆速〉で黄金スライムに突っ込んで!」
黄色く光り、私に応えてくれる。
「ブォオオオオンッ!」
ズーマの爆速に土煙が舞う。
戦う準備は整った。
フーちゃんとズーマと一緒に、あのスライムを倒すんだっ!
『ターゲットロックオンや!いったれ、ズーマ!・・・お、敵さん攻撃してきよるで!回避や!』
黄金スライムが不気味に輝く針を繰り出し、次々と放ってくる。
あんなのに当たったら・・・考えただけでも震えが止まらない。
スライムの針が風を切る鋭い音が耳をつんざく。
シュシュシュッ——
ズーマはその攻撃を目にも止まらぬ速さで躱しながら、加速していく。
痛いっ!
スライムの放った針が、少し絃の左頬をかすめた。
頬から出た血が粒となって飛んでいく。
「でもっ、回避成功っ!あと少しでスライムに届くっ!」
黄金スライムの体が、目の前へと迫る。
スライムはズーマの速さに対応しきれていないようで、攻撃できそうにない。
「今だっ!!!」
ッッドン!!!
重たい衝撃音が鳴り響き、スライムが倒れていく。
ドォ——ン
スライムが倒れたことで、土埃が舞っている。
黄金スライムを轢いた後、ズーマは少し離れたところで停止した。
「はぁっ、はぁっ」
呼吸が荒くなるのを感じながら、目を凝らしてスライムが倒れていくのを見守った。
そして——
——ピロリロリーン
▶︎《ラディアント・スライム討伐完了。》
パキッ、パキッ、パキパキ——
精神世界が崩れようとしていた。
現実世界に、戻れるっ・・・!
最後まで読んでくださってありがとうございます✨
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それでは、また次の話でお会いしましょう!!




