6話 コロネは細い方から食べる派です
志希はカタマっている
「······。何あれ?」
時間にして3分は経過しただろうか?漸く絞り出した第一声はこれだった
「いやいや、待って!?昨日植えた種だよね?何で葉っぱ青いの??何で光ってるの???てか、そもそも何で木になってるの???」
早口で問いかけるが、答えは返ってこない
(今日は朝から何なの?目が覚めたら光る球体が浮いてるし、バイト先では球体が僕にしか見えてないみたいだし、帰ってきたら昨日植えた種が青い葉茂らせて木になってるし?しかも光ってるよ!?)
『···光ってるから周りが明るい。これで夜中でもトイレにいける。安心。』
「うんうんそうだね。これで夜も安心···って!?違う!!」
何処からか声がしたので、思わずノリツッコミっぽく返してしまった
「頭がおかしくなったのか?それとも夢か?」
頭を抱えてうずくまると、また声が聞こえて来た
『···お腹すいた。牛乳···飲みたい···』
「···牛乳?まさか?」
カバンの中を見ると、光っていた球体は無くなっていた。
が、代わりに小さな女の子が入っていた
「······。どちら様?何で僕のカバンの中にいるんですか?それと、あの球体知りませんか?」
『···牛乳。』
会話ができてない?いや、互いに言葉は通じているっぽいから、会話は出来そうだ
『······牛乳』
小さな女の子はこちらを見つめて牛乳を欲しています。牛乳をあげますか?
→はい
→イエス
→少女最高!!好きなだけ飲みなさい
何なのこの選択肢?
『···牛にゅ』
「わかったわかった。今牛乳出すよ。とりあえずカバンから出てこれる?嫌じゃなければ手に乗って」
とりあえず牛乳をあげる事にした。
だって話進まなそうなんだもん
少女は僕の手に乗っておとなしくしている
テーブルに少女を移動させて冷蔵庫から牛乳を出し、朝使った深めの皿に注いで少女の前に置いた
『···ありがとう。』
少女は皿を傾けて牛乳を飲み始める
その姿が今朝見た球体と被る
「もしかしてあの球体が君なの?あっ、飲み終わってからでいいよ」
少女は返事をしようとしたのか、牛乳を飲むのをやめたが、僕の言葉に再び牛乳を飲み始める
(よく見ると背中に羽がある。小さい姿で羽のある少女···。ファンタジーで出てくる妖精か?)
牛乳を飲んでいる姿を観察しながら考える
(駄目だ訳がわからない。とりあえず害はなさそうだから、僕もご飯にしよう)
袋からコロネを出して噛る
僕は細い方から食べる派だ
1/3ほど食べるとチョコレートに
あたる
「甘いなぁ。でも今の僕にはこの甘さがちょうど良い」
僕は今、チョコレートの甘さにちょこっと感動している!!
チョコだけに!!
···誰か僕を●して下さい。
『···それなぁに?』
少女は牛乳を飲み終えたのか、僕が
食べているコロネに興味を示した
「これはチョココロネっていうパンだよ」
『···(じーっ)』
「···食べる?」
『···(コクン)』
コロネを小さくちぎり、チョコを塗って少女に差し出した
『···美味しい。甘い。』
少女はコロネのチョコを舐めて笑顔になる
「気にいった?ならもう少し食べる?あっ、牛乳ももう少し出すね」
牛乳を取りに行くついでに小皿を出す。
牛乳を深皿に注ぎ、コロネをちぎってチョコを多めに塗り、小皿にのせて少女の前に置く
『ありがとう。』
少女は笑顔で礼を言うと、コロネと牛乳を食べ始めた。
僕も残りのコロネを食べる
妖精っぽいとはいえ、誰かと一緒にご飯を食べる
久しく無かった事だ
「···やっぱり。誰かと一緒に食べるのは···いいね」
志希はポツリと呟き、笑顔になる
普段は一人きりのさみしい部屋が少しだけ暖かくなった気がした
次回は『君は妖精?違う?精霊でしたか。あの木は···マジで??』