4話 休憩と球体と
昼休憩入りま~す
飲み物コーナーで少なくなった商品の補充を終えると、店長が声をかけてきた。
「加田瀬君。先にお昼休憩入っちゃってくれる?休憩終わったら2階の人と交代してね」
「わかりました。休憩入ります」
返事をして飲み物コーナーから小さな牛乳(ストロー付き)を手にしてレジへ行き、会計を済ませて従業員専用スペースへと引っ込む。
ロッカーから弁当と球体を優しく取り出し、机に弁当·お茶·球体を置き、牛乳にストローをさし、球体が周りに見えないように弁当が入っていた袋に牛乳と一緒に入れてあげると、球体は器用にストローから牛乳を飲み始めた。
僕も椅子に座り手を合わせて「いただきます」をして弁当を食べ始めた。
「今日は休憩スペースに一人だったけど、次からはそうはいかないよね。君を家に置いて行くのも不安だし···どうしようか?」
弁当を食べ終えて球体の今後を考えているが、いい案が出ない。
今は涼しいからロッカーにいてもらっても大丈夫だろうが、夏になったら蒸し風呂状態になるだろう。
流石にそれは駄目だと思い、とりあえずカバンに球体を移動させようと片付けをし始めた時、休憩スペースに店長が入ってきた。
「加田瀬君大丈夫?お疲れみたいだけど?」
心配そうに声をかけてくれる店長に「大丈夫です。ちょっと考え事をしてまして」と返事をしたが、ある事に気がついた。
(あれ?球体が見えていない?)
机には空の弁当と牛乳パックを入れた袋があり、僕の手には光る球体がある。
それほど大きくはないが、光っているのだから気がつかない事はないと思う。
少なくとも店長は観察力がかなり高い人だ。
僕には特別な事情があって、店長は特に気にかけてくれている。
自分でも気がつかない事でも気がつく程にだ。
(そんな人が気がつかない?スルーされてる?いや、目線は僕の顔を見てから机も見ているから、絶対に気がつく。だとすると、この球体が見えてないのか?)
疑問に思いつつ、少し試してみる事にした。
『球体を机に置く』
勿論店長に見える様にだ。
しかし、店長は何も見えていない様で、真剣な顔で話しかけてくる。
「何か悩みがあるなら遠慮なく相談しなさい。君はまだ未成年なのだから、頼れる時に頼りなさい。私に言い難い事なら、他の人でもいいからね?」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です。解決しそうですから」
笑顔でそう返すと「なら、良かった」と店長は店内へと行ってしまった。
他の従業員と交代しに行ったみたいだ。
「どうやら他の人には見えないみたいだね?これならあまり気にしなくても良さそうだ」
一応悩みが解決したので、球体をカバンへ入れ、午後の業務をこなすため、仕事に戻って行った。
次回は帰宅回