1話 種を貰いました
新作です
やはり不定期投稿です
※登場人物、建物、その他諸々、全て現実とは関係ありません
感想等お待ちしてます
「ありがとうございました~」
買い物かごを持ち、荷物収納スペースへ移動して行くお客様を見送る
僕の名前は加田瀬志希
何処にでもいるスーパーの店員だ
今日も無難に労働をこなし、定時にタイムカードをきり、自転車で家へと向かう
「今日の夕飯は割引された弁当だ~。唐揚げ弁当があったのは運が良い。」
ご機嫌で自転車を走らせていると、道の端でうずくまっている人が視線に入った
見た感じ初老の男性のようだ
運が悪い事に、周辺には誰もいない。
(見捨てるのも気分が悪い。一応声をかけてみるか)
自転車を停めて、うずくまっている人に近づく
「···あの?大丈夫ですか?どこか痛んだりしてますか?救急車呼びますか?」
なるべく刺激しない様に優しく声をかけると
ぐうぅぅぅ~···
大きな音がした
音源は僕じゃなくてこの人だ
どうやら空腹で動けなくなっていた様だ
「あ~···。よかったら食べます?」
僕は夕飯にしようと思っていた弁当を差し出した
「···良いのか?それはお主の弁当であろう?」
空腹さん(仮)はそう言うが、お腹の虫が再び鳴る
「良いですよ。そんなにお腹空いてると苦しいでしょ?あなたに差し上げます。お茶もある方が良いですよね?そこの自販機で買って来ますので、ゆっくり食べて下さい」
弁当を譲ると、空腹さん(仮)は礼を言って弁当を食べ始めた
僕は近くの自販機でお茶を買って渡す
暫くして弁当を完食した空腹さん(仮)は小さな巾着袋を差し出してきた
「ありがとう。心優しき人よ。お礼にこの種を受け取って欲しい。」
別にお礼が欲しくて弁当を譲った訳じゃないので遠慮するが
「それではワシの気がすまん。遠慮せずに受け取って欲しい。これは小さな鉢植えに植えて、1日1回少量の水で育つ。大きさも小さな観葉植物ほどで、手間もかからぬものじゃ。しかもおいしい実をつけるぞ。是非とも育ててくれ」
と言われてしまい、受けとる事にした
「うむ。優しき人よ。うまい弁当とお茶をありがとう。また会おう。さらばじゃ」
空腹さん(仮)はそう言って何処かへ去って行ってしまった
「なんか変な人だったな···。まぁ、元気になったみたいだからいいか。···夕飯は家の近くのコンビニで買おう」
自転車を走らせてコンビニに寄ると、観葉植物コーナーがあった
このコンビニは一定期間で変わるコーナーがあり、今回は観葉植物コーナーになっていた
弁当とお茶をかごに入れ、『初心者用セット』(鉢植えと土がセットで種は別売り)も購入して帰宅
夕飯を済ませて、言われた通りに種を植えて窓の近くに置いて就寝した
そして次の日の朝
僕が目を覚ますと、目の前に『何か』がいた
次の話は『何か』と出勤の話かな