西川 昇
西川は焦っていた
なんせ目の前から樹乃森教授が消えたのだ!
「はあっ!どうしよう?!先生が居なくなった!」
壁を触ってみるも以前と変わらず何も無い
まったく手がかりが無いのだ
「そうだ、検査装置で!」
サーモグラフを見ると、扉と思わしき部分がわずかに温度が高い
高いといっても紫が青紫になっているぐらいだが…
次にソナーを当てると壁の向こう側に何かがあるのが分かる
「これは…先生か…?」
しかし2回目のソナーでは何も無くなってしまった
「誤検知か…?」
震度計も自分の歩いた振動しか検知しない
壁が壊せない以上これ以上調べようが無い
「これは…大変な事になったぞ…」
デスクにある電話を手に取る
洞窟なので電波が入らず、有線の無線電話を引いているのだ
「所長!大変です!樹乃森教授が…突然消えました!」
いきなりそんな事を言われてもにわかには信じられないだろう
「いえ、ですから…先生が壁を調べていたら突然光りだして、いつの間にか居なくなっていたんです!」
「えぇ、そうですね、検知器にも反応がなくて、先生ならアーティファクトを使えるので身は守れると思うんですが…」
「はい、わかりました、一旦出て封鎖します。ご家族には…私が説明しに行きます…」
───
「そういうわけでして…大変申し訳ございません…」
「…いえ、西川さんのせいじゃありません…頭をあげてください」
爽は拳を震わせ涙を浮かべている
「あ、あの!まだ亡くなったわけでは無いと思いますから!」
「分かっています、父の事ですからどんな方法を使っても生きていると思いますから…」
「そ、そうですよね!あの樹乃森教授ですから!私達も生きていると信じています!」
「それで、捜査状況は…」
「我々の中から捜索隊を組んで、あと一応になりますが警察と消防も捜査に加わります。私は明日から捜査に加わります」
「そうですか…」
「現時点ではまだ見つかっておりません…申し訳ありません…」
「では…明日私も連れて行ってください!」
「えっ!ちょっと待って下さい!危険ですよ!」
「私も父を探したいんです!お願いします!」
爽は大粒の涙をこぼす
「わ…わかりましたよ…でも先生が消えたということは本当に危険です。現場では私から離れないでくださいね」
「ありがとうございます…ありがとう…ございます…」