2つの案件の方針決め (12月23日12:10)
――20XX年12月23日 12時10分 青少年特殊捜査本部 1課2係7班
渦雷は一番気になる事を質問する。
「さて。……天道さん、報告はどうなるんですか?」
「俺の案件は、俺の新上司への報告になる。倉木さんから下りてきた案件は、俺を通して倉木さんへ報告や。」
…だと思った。
「倉木さんには言うな…というか、やっぱりバレるなという事ですか。」
「せやで。隠し通せ。口裏合わせのアリバイ、今日中に作っときぃ。」
「…昼食後はアリバイ作成会議になりそうだな……。」
「決まったらこっちにも共有して。アリバイ通りに倉木さんや周囲欺くさかい。」
天道は倉木にやっていることがばれないよう、協力してくれるらしい。
「わかりました。……潜入開始はいつからですか?」
渦雷は潜入班の開始時期について聞いた。
「実際にカルト施設に行くのは正月明けてしばらくしてからでええと思っとる。けど、偽の身分を確立しときたいから、明日から潜入組は生活拠点を移してほしい。」
「んえっ、マジか。」
「急だな…。」
「急すぎて草。僕、別件で明日秘匿班あるんだけど。」
天道の急な提案に、晴野、霧島、東雲の3人は驚いた。
特に東雲は秘匿班での活動が入っているらしく、難色を示した。
「ただ引っ越しして、それっぽく振舞うだけや。…年内はただの【実績作り】やから、普通に特捜に出勤してくれ。東雲は引っ越し作業時の同行と、潜入開始前日から暮らし始めたらええよ。どうせ引きこもり役やし。あ、出退勤時は点検消毒しっかりな。」
「マジかー。」
要は偽身分の周辺に、信者たち(宗教BBA共)が聞き込みに来た時の為に、予め暮らしておけということだ。
東雲は周囲に見られないようにしておく必要があったため、開始直前の居住開始でいいのだろう。
「霧島はそのまま暮らしながら、偽オフィスに出勤する日も作ってもらうで。そして――クリスマス明けから動くで。」
「わかった――いや、僕だけ早いな??クリスマス明けからかよ。」
「…あんさん、クリスチャンやろ。25日は休んでええから。仕事はその翌日からや。」
「…配慮いただきありがとうございます。」
「キャバクラ行くぞ。」
「――へ?」
唐突な話の内容のぶっ飛び方に霧島が固まる。
雨宮と嵐山は、天道から心理的に距離を取った。
雪平、東雲、渦雷も微妙な表情で天道を見つめる。
「おうおうおうおうそんなご趣味が!?んで?どんな女性がご趣味です!?お店の名前は!?」
晴野はとても楽しそうだ。
周囲に言いふらしてやんよ!と言わんばかりの胡散臭い笑みで晴野が問う。
そんな晴野を見て、天道は冷ややかな目で切り返す。
「なわけあるか。教祖の愛人の1人がキャバクラで働いとるんや。そのキャバ嬢に接触して勧誘されるのが、霧島の年内のお仕事や。設定見返して見ぃ。俺は霧島に接触する、接待リーマン役やろが。……霧島の場合は宗教施設に行くまでに何度か接触しておく必要がある。んで、年明けくらいに施設に案内してもらえ。そっから教団内部に潜入開始や。」
なるほど。ちゃんとした仕事だったか。
「ん!?ちょっと待ってくれ!…教祖って【美人な清楚系】が好みじゃなかったか!?夜の仕事って、だいたい清楚系じゃ無いだろ??R18――自主規制入る感じの場合が多いだろ!だからこその、晴野のパパ活が効力を発揮する感じでもあっただろ!?」
「……一応そないな見た目はしとるで。……何で教祖がキャバクラ居るんかは知らへんけど。元々夜遊び激しかったんちゃうん??知らんけど。」
なるほど。教祖の判断基準は、全て見た目だったのか。
というか――
「…信者のお布施はキャバクラへ……か。」
渦雷は呆れた。
金の流れの終着点が夜の世界とは。
じゃあカルト内にハーレム持つなよ。意味ないじゃないか。むしろ可哀想過ぎるだろ。
「これが噂の資金洗浄、ドロドロ編??プレゼントに紛れさせて、裏帳簿とか愛人に預けてそう。」
「確かに!ガサ入れしても出てきそうにない理由が、この愛人の存在かもしれませんね!…あれ?でも、目立ちませんか??変装でもして会いに行くんですかね??他にルートでもあるんでしょうか??」
「今の段階ではそこまではわからないよ…。でも、調べてみる価値はありそうだね。」
東雲の呟きに雪平が反応する。
こっちから切り崩しても良さそうだが、摘発が潰されている時点で、帳簿は別の場所に移動されてそうである。
愛人周辺の調査も既にされているだろう。後で天道に取り寄せてもらおう。
「内部に専用ハーレム、外ではキャバクラって……生臭坊主も真っ青ね。」
「やることが全て欲にまみれている上に、信者からお金を巻き上げておきながら、己の為に使うだなんて……!!あり得ませんわ……!地獄で閻魔様に裁かれてらっしゃいな!!」
「蜘蛛の糸すら降りてこない釜茹でコースでどうぞ。あ、マグマの中でもおkっす。」
当然だが、女性陣の意見は辛辣だ。
嵐山が凍てついた瞳で、マイルドな言葉にして発言する。
雨宮は憤慨した。
晴野は雨宮の意見に追随して、地獄での行き先を勝手に決めた。
「うわぁ……。今の時点で既に関わり合いになりたくない奴ナンバー1なんだが…。宗教への冒涜凄いし、マジで行かなきゃいけねぇの???」
霧島はドン引きし、ひとりごちる。
だが、その独り言は地獄耳の天道が拾う。
「仕事や。引き受けたんなら、つべこべ言わず行けやゴラ。」
天道は霧島に殺気と圧をかける。
それを受けた霧島は、なぜか落ち着いた様子だ。
「――いつもの天道さんだ。……逆に安心したわ。」
「なんでやねん……はぁ。」
意味が解らない天道は霧島にツッコミを入れ、ため息をついた。
霧島は手元の資料(霧島の偽身分設定の紙)に決まったことを書き込んだ。
スマートフォンのカレンダーにも予定を打ち込む。
一方、晴野はスマートフォンでカレンダーを見て悩んでいる。
霧島との話しが切れたタイミングで、天道に自身の潜入方法を聞いてみる。
「天道、私はー?」
晴野の年末年始は忙しい。
接触が事前に必要なら、日程を考えなければならないのだ。
天道は晴野のほうを向き、さらりと返す。
「潜入開始直前のビラ配りにでも行って、ビラ貰ったらええんちゃう??」
返答は投げやり。
……まさかの無計画だった。
これには班員もドン引きする。
「…けっこう投げやりだった。嘘だろ……。」
「天道さん、そりゃねぇわ……。」
渦雷と霧島がジト目を向ける。
「すごい。全くプランがありません!!驚きの白さです!!」
雪平は呆れを通り越して感心していた。
「接触なしで良いのかよ!?」
晴野は驚いている。当たり前だろう。
接触の機会が用意されていないことに驚きだ。
「うわぁ、霧島サブとの扱いの差。」
「新手の男尊女卑かしら。それとも弟子じゃないから??」
「対照的ですわね。冷たすぎますわ。」
東雲、嵐山、雨宮は冷めきった目を天道に向けた。
霧島との差が酷すぎる。
班員から非難を浴び、天道は焦る。
「待て待て、あのな??よぅ考えてみ??【生きることに必死な高卒フリーター】が、端から宗教に関わるかいな!…大学生設定やったら学外サークル紹介したけど、設定的に関わりに行くのは無謀やわ!逆に怪しいて!!」
天道は無策の理由を班員に告げた。
一理あった。
「んー……。じゃぁ、公園で泣いてみるわ。」
天道の言い分を聞いた晴野は、少々悩んだ後、しれっと作戦を立てて呟いた。
「へ?公園!?な、なんでまた??」
晴野は少々ぶっ飛んでいる所がある。
理解が追い付かない天道が晴野に聞き返す。
「いや、だってさぁ…。宗教施設周辺の公園で泣いてたら、宗教BBA共って【修行の一環】として悩み相談に乗ってくれそうっしょ??」
「あ。」
「んで、言われるがまま信じて宗教BBAに興味持てば、勧誘されるっしょ??勧誘に着いていけば、あくまで自然に、上手~く会員になれるんじゃね?」
晴野の意見を聞き、天道は大口を開ける。
新興宗教では勧誘行為は【修行の一つ】として設定されている。
「信者になっていない人を救済する」ための方法と捉えている場合が多い。
悩みを聞いて勧誘することができれば、信者にとって理想的な成果になると思えた。
勧誘主の顔も立つのだ。メリットしかない。
「……おっ前……本当に……。いや、ええ。やってみぃ。」
天道はジト目になりながら晴野に返答した。
晴野の案は採用された。
晴野は右手を軽く挙げながら天道に言う。
「とりま、見張ってるであろう公安から、信者が通りやすい時間帯と近くの公園教えてほしいっす。」
「わかった。調べとく。演技力にモノ言わせてみぃ。」
「上手くいくか分からんけどさ。ダメだったら泣いた後にフラッと施設前に寄って、中に入ってみるわ。信者の誰かには会えるっしょ。そん時はもーアドリブで行くっす。」
晴野はそう言い、手元の資料(晴野の偽身分設定の紙)に決まったことを書き込んだ。
……最後、飽きたな。
一抹の不安を感じるが、潜入方法についてはこれでいいだろう。
「天道さん――僕らは実質2倍3倍働けと。」
霧島がジト目で返す。
「まぁ、そんなところやな。サポートはする。頑張ってくれ。」
「うわぁ、投げやり。」
天道の回答に、東雲がうんざりした顔で言葉を返した。
「こちとら薄給じゃないっすかぁー。最低賃金下回るじゃないっすかやだー。潜入まですんのにぃー。……訴えてやる。」
晴野の殺意がこもった発言を聞き、天道は焦る。
東雲とネフィリムに並ぶハッカーなうえに、情報網が広く、別班と共に突入までこなす晴野を敵に回したらどうなるかわからない。
何としても回避しなければ。
「ん!?タダ働きやないで!?ちゃぁんと全員に、俺の新上司から仕事の分上乗せで報酬入るさかい!!」
「んえっ!?ちゃんと報酬出るの!?」
「まぁ、秘密の緊急案件扱いやからな。そこはちゃんとしとるよ。」
「あー、なら頑張るかぁー。」
「…お前……。」
天道は晴野に対して思うことがあったが、何とか言いたいことを飲み込んだ。
回避できたんだ。それでいいことにする。
――……晴野の扱い方、マジわからん…どないしよ。
天道が悩んでいると、ふと東雲が発言しだす。
「んで?このクソカルト、一体何様なわけ?」
うんざりした顔で、情報端末を人差し指の第二間接でコンッと叩く。
東雲のタブレットには、案件のカルト宗教――御霊磨き聖慈愛院蓮の伽藍堂救世会――の活動内容の一部を公開した、やたらキラキラした、楽しそうな印象を与えるページが表示されていた。
「まず、着てるものからおかしいっす。」
「正直どこから突っ込めばいいのか分からないんだが。」
「やっぱり教祖は歪んでますね。写真の段階でも【色】が……。」
晴野、渦雷、雪平が発言する。表情はお察しの通りだ。
そして、写真で見る限りでもヤバいらしい。
「あー、うん。俺もさっさと潰れろクソカルトって思っとるで。簡単にまとめると不安煽って、でたらめな教義信じさせて、出家させて囲い込んどる。」
「そうよねぇ。目を通した限りでもおかしいもの。」
天道の回答に、嵐山が同意した。
すると、晴野が天道に調査を求めた。
「ねぇ、天道。この寺の……宗教法人格の以前の登記って調べてもらえる?前の持ち主が知りたい。」
晴野は自身の情報端末を天道に向ける。同時に人差し指である場所を指す。
表示されていたのはアクセスページの最下部。
人差し指の先には宗教法人の文字と、寺の名称と宗教名――2つの法人名が表記されていた。
「へ?以前の登記ぃ??何でまた。」
ここの登記は、この拠点でのカルト宗教活動開始時とほぼ同時期に変わっている。
ホームページには『教祖が寺を譲り受けた』と書かれていた。
今の法人格の持ち主は教祖の僧侶としての名前だと判明しているので、さほど問題はないと思うのだが。
なのに、以前の持ち主?なぜ??
「乗っ取りだよ。良くある手っす!どうせ、単立の休眠法人だったんでしょ?」
晴野は天道を急かす。
聞いている班員は話しが見えない。
「晴野。ごめん、わかんないわ。詳しく教えて頂戴?」
嵐山が晴野に説明を求めた。
「えと、管理できる人が居なくなった神社仏閣ってあるじゃん?限界集落とか、廃神社廃寺とか。」
「ええ…。寂れているところ、たまに目にするわね。」
「あの土地を買って、ついでに神社仏閣も継承するの。んで、買った神社仏閣の大半を取り壊して、法人格持ったまま好き勝手するの。境内にマンション建てたりとかね!そのままの場合は資金洗浄に使われることが多いっす。残念なことに。」
「――!これ、宗教法人の違法転売か!」
天道は納得がいったようだった。
実際は違法だが、規制が追い付いておらず、限りなく黒寄りのグレーなのだが。
晴野は数回頷き、情報端末を自分の方向に戻し、別の検索タブでマップを表示する。
再度天道の方向に向ける。
「マップで見ると寺って出てくるのは『以前寺だった名残じゃね?』って。そして、表向きその寺として活動する意味も込めて、仏像と参拝できる場所、施設内に残してるんじゃないかな?」
マップに投稿されている画像を見ると、仏像が安置されている拝礼施設がかなり小規模ながらあるようだった。
渦雷は晴野に問う。
「ホームページ下部に小さく名前が2つあるのは…。」
「敷地内に寺を残しておくことで、税制優遇を受けたままにしておこうとしているんだよ。恐らく僧侶の資格?得度??持ってるか受けてるんじゃね??だから初期に持ち主の変更、あっさり出来たんじゃね??……本当に僧侶仲間から譲り受けた可能性も微レ存だけど。」
ちなみに微レ存とは、「微粒子レベルで存在している」ということを差すネットスラングだ。
晴野は「教祖は色々ヤバそげだから、譲られるのは殆どあり得ないんじゃね?絶対騙すかグレーゾーンで買ってるだろ。」と言いたいらしい。
「んで、多分、金積んだり裏で結託したりで名称変更して、寺をカルトの名称にしようと動いている気がするっすー。今回の件、それを阻止する意図もあるんじゃね??勢い凄そうだし、ここらへんでいっぺん潰しておきたいんじゃね??証拠が揃い次第摘発しろって言ってたでしょ??」
そうだとするならつじつまが合う。
公安が調査が失敗続きで焦っていっそうなのも、倉木からの案件も。
「――まぁ、詳細は探ってみないと分からないけどね。一応、私なりの考察っす。」
晴野は情報端末を自分の方向に戻しながら、伏せ目がちに言った。
その様子を見た雨宮が、晴野に問う。
「だとしたら、何で手が出せませんの??乗っ取りでしょう?」
「あー…実はグレーゾーンなの。この手法。限りなく違法なんだけどね。」
「グレー、ですの??大事な、日本の社寺仏閣の転売ですのに?」
「包括組織に所属している場合だったら所属してる神社仏閣の組織が色々と口出すんだけど、単立(独立しているもの)は好きにしても誰も文句言わないから。休眠…長年管理されていない神社仏閣なんて、荒れ放題でしょ?国に議題上がってるらしいんだけど、転売に関する規制が追いついてないんだよね……。」
「…そういうことですの……。」
「何とかしてほしいよね。切実に。大事な歴史と文化なのにさぁ…。」
納得した雨宮に、晴野は脱力しながら返答した。
晴野はどうやら宗教法人法に詳しいようだ。
正直、今回の案件では非常に頼もしい存在だ。
…どこかの秘匿班で、宗教法人の案件と関わることがあるのだろうか?
「恐らく晴野の考察は当たりだろうな。そして、倉木の要望にも合う。」
「内部ではなく、外部から切り込んで裏事情を探る感じね。」
渦雷、嵐山が発言する。
「要は【摘発のきっかけを沢山見つけてこい】ってことでしょ?……何で今まで切り崩せていないのかが、ものすごく気になるけど。」
「ほんとそれな。」
「禿同!絶対これ既出じゃん??誰か絶対やってんじゃん!?本当に採用する気!?」
東雲が疑問点を言い、霧島が賛同する。
晴野も2人の意見に賛同し、無駄足の可能性を問う。
だが、他の班員はそう感じてはいない様子だ。
「あら。晴野が自身で規制が追いついていないって言ってましたし、それで潰されたのかもしれませんわよ?今回はどこかからか穴が空くかもしれませんし。」
「それに、良いブラフにもなる。施設の潜入から目を逸らさせるために、後方支援の班員は法律とか行政の方に探りを入れてみないか?既出を攻める可能性が高いなら、尚更目立ってくれるはずだ。」
雨宮の発言に、渦雷が補足を入れる。
「確かに。」
「良いわね!私も役に立てそうね。」
「ちょうど良さそうです!行政系でしたら、僕も接触できそうです。」
「隠れ蓑に良さそうだね。」
霧島、嵐山、雪平、東雲が賛同する。
渦雷は再度確認の為、今後の方向性を口に出す。
「なら、倉木には晴野が考察した方法――行政や法律の方面から探りを入れて、天道さんを通して倉木に報告する感じで進めていく。メンバーは【天道さんの案件】の裏方が進めていく。…これでいいだろうか。」
「異議なし。」
晴野、天道、提案者である渦雷以外の班員の声が揃う。
「マジか。採用されたわ。」
晴野は驚いていた。
渦雷は天道に問う。
「表……【倉木案件】はこの方向性で大丈夫そうだな。違ったり行き詰まったりしたら、裏の【天道案件】…潜入で判明した事の中で、明かせる範囲のものから軽めに攻めて行こう。――天道さん、これでいいでしょうか?」
「わかった。助かる。」
天道は渦雷の捜査方針を受け入れた。
「……方向性は決まったな。」
渦雷は要点をノートに書き留め、シャーペンを置く。
その様子を見て、天道はキャスター付きの椅子から立ち上がる。
「なら、俺は一旦帰るわ。変更点が多すぎる潜入の身分以外に、班の上司候補の事も言いに行かんといけへんし。」
「わかりました。アリバイ作成次第、また報告します。」
「おおきに。じゃ。」
そう言って天道は帰っていった。
「さて。一旦解散だ。遅くなったが、何か食べよう。そのあと……そうだな、14時からミーティングにしよう。」
渦雷は班員にこの後のスケジュールを告げる。
今日は誰も秘匿班での活動が入っていないことは、朝の時点で確認済だった。
「了解です。……みなさん、お昼どうします??」
「なー、もうあり物でよくね?確か冷蔵庫に色々残してただろ。何かあった時用に。」
「そうね。作り置きを冷凍庫に入れてた気がするわ。」
雪平の提案を聞き、霧島と嵐山が返答する。
お腹もすいたし、外に出て行くのが面倒だった。
「冷凍から揚げや冷凍餃子もあるな。」
渦雷はキッチンに移動し、冷凍庫を開け、物色する。
お。冷凍パスタにチャーハン、コロッケ、枝豆もある。
急に泊まり込みになることが多いため、みんな冷凍庫に好き勝手に放り込んでいた。
「即席スープもありますね。あ、味噌汁も!」
キッチンへと移動した雪平は、棚の中から汁物を物色し始めた。
昼食は足りそうだった。
「あ、じゃあ、上の…総務の売店で白米とか雑穀米のパウチ人数分買ってくるっす!」
晴野は足りない主食(米)の買出しを申し出た。
今から炊くと時間がかかるから、申し出はありがたい。
「私も行きますわ。」
「頼んだ。」
「なら、僕は机の上を片付けて、拭くね。その前に情報端末を充電しとくよ。」
「ありがとう。助かる。」
晴野と雨宮が財布を持って売店へ行き、東雲は全員分の情報端末を充電し始めた。
その他の班員はキッチンへ行き、手分けをして調理を始めた。




