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特捜~青少年特殊捜査本部1課2係7班へようこそ~  作者: 八嶋 黎
第5話 戻ってきたR国スパイ(下)(全17エピソード)

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目的のために耐え切れ (12月13日21:30~22:50)

今回ちょっと痛いです。

血が出ます。ご注意ください。

――20XX年12月13日 21時30分 都内某所 廃工場


……あー。めっちゃ痛いわぁ。

放置タイム入ったから落ち着けるけど、本当に(ろく)でもないな。

てか、やっぱり俺は権三郎かい。……本名バレるより非常にありがたいお名前ですけどぉ。



天道(てんどう)は木製の椅子に縛りつけられていた。

両腕を後ろ手に縛った状態で、背もたれの裏側に回されていた。

胸の下あたりと椅子の背もたれをまとめてぐるぐると縛り、足は片足づつ足首と椅子の足を縄で固定されていた。


椅子は背後の柱に縄で固定されており、動かすことはできない。

その気になれば壊せそうではあるが、今はまだいけない。

今のところまだ目標を達成できていないため、大人しく捕まっておく必要があった。



はよ来いや。めんどくさい。

体中痛いねんて。

すぐにでも暴れられたらどれほど楽か……。


顔は殴られ腫れており、腹部は蹴られズキズキと痛んでいた。


だが、彼らは所詮一般人。

彼らの拷問は殴る蹴るだけで芸がなく、ある意味楽勝だった。

奥歯に仕掛けている発信機も無事なため、何とかなるだろう。


息を大きく吐き出し、目を閉じる。

天道は問題の22時を待ちつつ、ラムダとの歯医者帰りのやり取りを脳内で反芻することにした。




――20XX年12月12日 21時30分 都内某所 歯医者 【回想】


歯医者を出ると、ラムダの車が停まっていた。

助手席に乗り込むと、声をかけられた。


「詰め物良い感じになったー?」

「地味に痛いねんけど。()()ちゃうん?」

「んー。腕は確かだよ?」

「……ほんで?何?言いたいことあるんやろ?はよ言い。」


ため息をつきながら、本題を聞いた。

ラムダは駐車場から車を出し、運転しながら天道の質問に答える。


「明日のことについてだけど、救助の為にはスパイが2人同時に現れることが必要条件です。」

「ええ…無謀やろ…。そんな都合良く釣れるん……?」

「あー。22時以降に来るのでは?という予測が出ているし、大丈夫だろ。」


何だその予測は。胡散臭い。

天道は心の中で突っ込んだが、相手は公安ゼロ課。確固たる核心を掴んでいる可能性が高かった。

ひとまず聞いてみる。


「……情報源(ソース)どこや。」

「え?秘密。」

「チッ。」


どうやら言う気はないらしい。

天道は舌打ちし、助手席の窓の外に視線を向けた。


「拉致や君の尋問にはテロリストが関わる。こっちも現行犯で捕まえたいね。まぁ、一番はスパイが関係しているという物的証拠なんだけど。」


外交官は逮捕することができない。

だが、その場に居たという事実で大使館に抗議する理由になるのだ。

これをもってPNG砲を撃ちたいという思惑も入っていた。

狙うは一石沢山(たくさん)鳥だ。二鳥なんてぬるい。事実の一撃でマリアナ海溝よりも深く、二度と浮上できないくらいに沈めてやる。


「わかった。……1つ頼みがある。」

「ん?もしかして班が気になるの?」


天道は班を持っていて、現在進行形で案件を抱えている。

気になるのは当然のことなので、ラムダは聞くことにした。

だが天道の口から飛び出してきたのは、想定していたものとは全くの別方向だった。


「……生天目(なばため)って知っとる?」

「――へ?生天目(なばため)!?」



――生天目(なばため)!?生天目って、あの公安の??今回の件に関係なくね!?



ラムダは一瞬思考回路が停止したが、とりあえず話しを聞くことにする。


「……あー。あの公安表のお飾りのお坊ちゃんだよね。自慢を褒めて、プライドを守ってあげたら動かしやすいって聞いたことあるけど。彼がどうかした?」

生天目(なばため)が班を狙ってんねん。……俺の不在時に突撃があれば、対応して欲しい。特に夜間注意や。総務が()らんから、どうとでも出来そうや。」

「えー。そんなこと……」


ラムダはまともに取り合う気が無かった。

いくらなんでもそんなことはしないだろう。冗談が過ぎる。

何せ、生天目(なばため)は親のコネを使いまくってる男だ。

さすがに外聞が悪いことを、自分の立場が悪くなることを率先してはしなさそうだ。


ははは、と笑いながら助手席の天道を見ると、マジな表情だった。……うっそだろ。ヲイ。


「――突撃しそうなの?マジ?そこまでな感じなの??」


ラムダが驚愕の表情で聞いてくる。


「……前見ぃ。事故るで……。」


天道は前方を指さした。

ラムダは慌てて前方に視線を向ける。

幸いにも交通量は少なく青信号の為、事故になる要因はなかった。


ラムダは状況を確認後、再び話し始める。


「――いや、さすがに驚くって……。本当にやりそうなの??マジで??」

「マジや。大マジどす。」

「うっそだろ。頭大丈夫か??は??」


ラムダは未だに信じきれないようだった。

今まで関わる事がなかったことが原因のようだ。……居る部署がガチの裏と、ゆるっゆるな表だからな。仕方ないのだろう。


生天目(アイツ)、勉強はできても頭が悪い人間の代表例やろが。」

「でもさすがにそこまでって……。あー。うん。……多分、そうなると晴野(はれの)ちゃんか渦雷(からい)くんあたりから連絡入るよね?気にしておくわ。」


天道はラムダを見やる。

半信半疑ではあるが、天秤は信じるほうに傾いているだろう。


「あ、あと。捕まった後に『家族がー』みたいな脅しされても大丈夫だから。どうやら晴野ちゃんが手を回しているみたいで、雨宮(あまみや)ちゃんの拉致以降、公安に頼んで三橋(みつはし)家を完全再現しているみたいだよ。」

「は!?」

「まぁ、ポーズとして焦っては欲しいけど、本当に敵側に踏み込まれても何とかなるから気負わないで任務にあたってね。」



――……。



天道は目を開ける。


果たして、頼みは――班は守ってもらえただろうか。


ぶっちゃけ、今荒らされると困るのだ。

だって、情報の拠点になってるし。関係者以外にバラされたら終わりなのだ。

相手は生天目(なばため)だ。ひっかきまわすに違いなかった。


……公安の血と汗と努力と涙の結晶の、大切な資料とか情報が守れていると良いが。



天道はため息をつく。

しばらくして、再度足音が聞こえてきた。



――休憩は終わりかいな。……さぁて。R国スパイは来ますかいな?



天道は寝たふりをしながら、テロリストたちが入室してくるのを待った。




<天道、スパイに尋問される。>

――20XX年12月14日 22時50分 都内某所 廃屋


22時過ぎてからR国スパイが来るとは聞いてた。知っとった。

せやけど――


「ねぇ?いい加減喋ってくれないかなぁ。三橋権三郎(みつはしごんざぶろう)さん?」

Алёша(アリョーシャ)()()()が甘いんじゃないかい?プロフィールに【スポーツ推薦】と書いてあったし、体力だけはありそうじゃないか。」

「んー、そうですね……。本当に口を割りませんね。ご両親や妹さんを人質に取ったほうが良いのかな?」

「――!」


天道は一瞬だけわざと焦った表情を浮かべ、ポーカーフェイスに戻る。


「……京都のご実家に突撃するよう、連絡してみようかな。」


アレクセイは笑みを浮かべ、揺さぶりをかけてくる。

一緒に居るウラジーミルも楽しそうだ。煙草に火をつけ、こちらを見てくる。



好きにしろ。

連絡したところでその住所に居るのは仕込みの警察官。公安【表】の人たちが家族のふりして集まっているだけだ。

本当に、晴野……何者や?いつから手配しとったんねん……。

可哀想なのは、だしまき(犬)役の警察犬だけである。

トレーナー経験のある奴が公安に居たとか本当に運が良かったと思う。それとも知っていて配置したか……。考えるのはやめておこう。


本心は「家族?妹?おうおう連れてこい。味方が増えてラッキーやわ。」なのだが。

移動時間考えたらこちらに来るのは厳しいだろうが、あちらで踏み込み次第捕まえるのだろう。



天道は奥歯に負荷がかからないよう気を付けながら、歯噛みする。

下を向き、揺さぶりに屈しかけてる風を装った。


だが、天道は別の事を考えていた。



――おぇ。ラムダはん?コレ、そろそろ助け来てもええんちゃうん??2人、揃っとるで?



天道の服は切り裂かれており、上半身が露出している。


天道の全身至る所に裂傷ができていた。

顔だけでなく、上半身のからも血液がしたたり落ちる。

見るからにボロッボロである。



R国スパイのやり口は完全にプロだった。

靴のかかととかで切るように蹴ったり、ナイフ当ててみたり。

技術点が高い攻め方をしていた。


殆ど殴らず、あえて血が出る方法を選んで責める。

血を見ると相手は恐怖し、従うようになるためだ。出血はリアルにメンタルにくるのだ。



――お前ら、手法、やくざもん混じっとんかい。



心の中でつっこむが、痛みに耐える天道の息は荒い。

本音を言うと、もうそろそろ助けに来てほしい。真冬に半裸で出血は寒いし痛い。

だが、まだ突入の気配はない。



まだ大丈夫。死にはしない。

この程度の痛みに屈する訳がない。

元特殊部隊員舐めんな。(くぐ)ってきた修羅場の数が違うわボケ!



拷問は心が折れたら負けである。

天道は鋼のメンタルで己を鼓舞する。

例え論点がズレてようが、鼓舞できれば何でもいいのだ。



すると、急に前髪を掴まれる。


「君、本当に……折れないよねぇ……。」


ウラジーミルが天道の前髪を掴み、強制的に前を向かせてくる。

手に持っていた煙草を右頬に押し付けてくる。


「――つ゛っ!!」


痛い。熱い。


苦しむ反応に満足したのか、ウラジーミルは煙草を天道から離した。

冷たい目で微笑んでいる。

紫煙はゆらゆらと宙を漂った。


「さて。そろそろ答えてくれるかな?君たち公安は何を追ってるの?青少年特殊捜査本部って、何?」

「……スケープゴートのはずの天道――権三郎君は生きてるし、阿久津(あくつ)は牢屋の中だしさぁ。分からないこと多いんだよね。」


アレクセイは手にナイフを持ち、ウラジーミルは煙草を持ったまま前髪を掴んで聞いてくる。


「知るかボケ。」


前髪掴むのやめろ。毛根死滅したらどないしてくれはるん?

てか、煙草吸わないなら寄こせ!こちとらヘビースモーカーなんや!!煙草は吸ってこそのモンやろがぁ!!!その使用用途、間違っとるって!!!!ニコチン補充させろや!!!


天道は別方向でキレていた。

鋼のメンタルは今日も元気だった。



R国スパイたちは表情がなくなる。

屈しない相手は面白くないのだ。


天道はウラジーミルに再び頬に煙草を押し当てられ、アレクセイには首の薄皮を切られた。

それでも屈しない天道を見て、ウラジーミルが呟く。


「……打つか。」

「用意します。」


アレクセイはスーツの内ポケットから小さなケースを取り出した。

中から注射器と液体が入った瓶、複数の粉末が入った袋などが出てきた。



おーおー。お薬かい。

【繋がってる】……このことか?半グレとかの売人から仕入れたんか?

それとも高品質の仕事用具か。

どちらにせよ、ご遠慮願いたい。



――おぇ。ラムダはん?そろそろ助けに来てくれへん??さすがにお薬は勘弁やで。



多分ここからが拷問本番やろ?

爪とかやられたくないんやけど?

てか、そもそもラリるの勘弁なんやけど。後遺症えっぐいやろが。

用意されているお薬を見つつ、そう思っていると、途端に周囲が明るくなった。


「――!?」

「Freeze!!We are the police!Put your hands up!!(動くな!警察だ!手を上げろ!!)」

「……We are diplomats.(我々は外交官だ)」

「……Please cooperate with the investigation.(事情聴取にご協力を。)」


アレクセイたちは押し黙る。

状況的に拒否しても良い方向にいかないのは、火を見るよりも明らかだった。

どのみちプロトコール・オフィスへと連絡コースだろう。……いつから居やがったんだ、クソッ。

2人は大人しく従うしかなかった。


「……わかったから、ライトを下ろしてくれ。眩しくてかなわない。」

「……では、どうぞこちらへ。」


ウラジーミルの発言で、ライトが下ろされる。

警察――隊員に促され、2名はついていく。

部屋には天道と他の隊員のみが残っていた。



隊員は天道の縄をほどき、肩を貸し、天道を回収する。

まぶしくて良く見えなかったが、どうやらビデオカメラを回していたらしい。証拠はばっちりなようだった。


恰好を見るに、助けに来たのは特殊部隊のようだ。

タクティカルライトで視界を塞ぎ、制圧したらしい。

他の部屋からも声が聞こえるので、同時に制圧しに行ったのだろう。テロリストたちは拘束された状態で建物の外に連れ出されていた。


車に乗せられると、声をかけられた。


「お久しぶりです。すぐに病院へ連れて行きますね。」


誰だろう。だが、その声には覚えがある。

隊員の男はヘルメットを脱ぎ、顔を見せてくる。

以前同じ部隊に所属していた男だ――まさか。


「……メンバーは殆ど変わっていません。無事でよかったです。」


なんと、天道の古巣の部隊が救出してくれたようだった。

懐かしい顔に会えて安心する。


……おぇ、ラムダはん、やりおったな?まぁ、ありがたいんやけれども。



「助かったわ。ありがとう。」

「いえ。――動きます。」


こうして、目的は無事に完了し、天道は救出されたのだった。


もうそろそろPNG編も終わりですね。

最後までどうぞよろしくお願いいたします。

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