プロローグ
少年少女のオリジナル組織もの。
主人公は渦雷(男)です。
プロローグなので、文章量軽めです。
――20XX年5月末 15時30分 東京某所
初夏。
この頃は少し暑く、長袖を着ていると軽く汗ばむ。
渦雷はシャツの首元を掴み、前後に揺らして風を送る。防刃チョッキを着ているため通気性は良くないが、やらないよりはましだろう。
「暑いな」
「ああ」
ともに待機していた霧島から声がかかり、渦雷は短く答える。
現在、渦雷と霧島は、ビルの裏で待機していた。
渦雷は黒髪の短髪。太めの眉毛とツリ目が印象的な、18歳の男子高校生。
霧島は金髪のショートヘア。前髪は左側に流している。緑色の瞳と品のよさそうな雰囲気を持つ、26歳の男性だ。
彼らは特殊捜査本部の所員で、1課2係7班に所属している。
腰回りに装着している得物を隠すために上着を着て出たが、時間経過とともに暑くなってしまった。選択ミスだ。仕事が終わるまでひたすら待つしかない。地味に暑さの耐久レースと化していることに不快感を覚えていた折に、同じ班のメンバーである東雲から通信が入る。
《本日は曇りなり。そろそろ動くみたいだよ》
やっと動くようだ。渦雷は霧島とアイコンタクトを取り、短く答える。
「こちら雷霧。了解」
渦雷たちは指定された位置で引き続き待機する。
1課2係7班は今回、公安のお手伝いで呼び出されていた。 任務内容は見張りの補佐。公安が一斉検挙を行う。対象が公安から逃げた場合、こちらで逮捕する。要は公安側の人手が足りなかったので人員の補填だ。
《こちら公安A。15時40分、突入を開始する》
しばらくすると公安から無線が入る。テロリストが集まっているマンションの1室に突入する準備が整ったようだ。
しばらくすると遠くから声や物音が聞こえてくる。一斉検挙が始まり、捜査員とテロリストが衝突したようだ。マンションにて激しい鬼ごっこが始まる。現場にいる捜査員の指示が無線で飛び交う。
《1名逃走!北方面!特徴は白の半袖シャツにカーキのズボン――》
おっと。対象が1名、捜査官の包囲網をすり抜けて逃走しているようだ。
するとすぐに東雲から通信が入った。
《本日は曇りなり。対象は現在表通りからXXビルとOOビルの間の路地に向かって逃走中!雷霧確保よろ》
東雲は特捜オフィスで待機している。彼は監視カメラを使用して現場の様子を見、逃げ出したテロリストを追跡していた。
渦雷たちの待機場所はちょうどXXビルとOOビルの裏だった。後は待つだけである。
「了解」
渦雷と霧島は小声で同時に答えを返し、周囲の気配を探る。
すぐに足音が聞こえてくる。
対象は、渦雷たちが待機しているビルとビルの間の、細い路地を走り抜けようとしていた。
霧島は口元に弧を描く。タイミングを見計らって路地に片足を出す。
「うわっ!?」
対象は声を上げる。霧島が対象を自身の足にひっかけて転ばせたのだ。お手本のように対象がコケた。
渦雷は転んだ対象の腕を取る。霧島が転んだ対象を押さえつける。
「15時42分、内乱罪およびテロ等準備罪の疑いで拘束する」
渦雷は対象に告げ、渦雷は手錠をかけた。
霧島は暴れる対象を押さえながら、公安に連絡を入れる。
「こちら7班。北方面雷霧。対象確保済。公安さん引取よろ」
《こちら公安A。了解。急行する》
暴れわめく対象を無視し、渦雷たちは公安の到着を待つ。
数分後、公安が到着する。引き渡しが終わったところで、東雲から通信が入った。
《本日は曇りなり。天候が戻り次第、僕はまた引き篭もるよ。お疲れ様》
「雷霧了解。――お疲れ様」
渦雷は東雲に答える。後は散らばって待機していた仲間を拾って帰還するだけだ。
これにてテロリストの一斉検挙は幕を閉じた。
不穏な案件との同時投稿になります。
1話は毎日投稿しますので、よろしければお付き合いくださいませ。




