プロローグ (5月31日16:50)
――20X1年5月31日16時50分 青少年特殊捜査本部 1課2係7班
今年も猛暑になるのか、30度近い日が増えてきた5月の最終日。
渦雷たち班員は班オフィス(ミーティングルーム)に集合していた。
班員の目の前には天地の姿があった。
今日は天地による班運営の最終日。渦雷たちは天地に礼を言うために時間を取っていた。天地も就業間際に班員に挨拶する気だったようで、前もって時間を合わせることができ、簡易的な挨拶の場を設けることができた。
倉木は午前中に済ませておいたので、もう来ることはないだろう。色々あり過ぎたので対応は渦雷と嵐山で行った。
「4ヶ月間、お世話になりました」
渦雷は班員を代表して小さめのブーケを渡す。
男の上司に花はどうかと思ったが、礼儀の一種なので小さめのものにした。
「これは、班員からの餞別です。次に運営する班でも頑張ってください」
霧島は班員を代表して1つの紙袋を渡した。
中身はガラスのボトルとウッドチップ3種。手持ちの蒸留酒にこのウッドチップを入れると数ヶ月で熟成酒ができあがる。酒好きの天地にぴったりな贈り物だった。
ちなみに、天地の好みは晴野と嵐山が調査済だった。その情報を元に班員で贈り物を決めた。花代を減らし贈り物に予算を傾けたので、気に入ってもらえると嬉しい。
「ありがとうございます」
天地は軽く微笑み、花と紙袋を受け取った。
班員は天地に対して拍手を送る。
何とかこの日を迎えられ、班員は安堵していた。
特に5月初旬は大変だった。
倉木が班オフィス内で堂々と雨宮に近づいたことにより、ブチギレた東雲が資料室のドアを開けて飲み終わったエナジードリンクの缶を怒鳴りながら投げつけ、その様子に驚いた雪平が軽くパニックになり、飲んでいた温かいお茶を辺りにぶちまけ、東雲を止めに入ろうとした渦雷と霧島が火傷はしなかったが何故か一番の被害に合うという、情報量の多い珍事件があった。
秘匿班で外出していた晴野と嵐山が戻ってきた後、班内の映像を見て驚いた後爆笑していたが。
4月の中旬から1課2係7班では天地と共にとあるテロの疑いがある団体の調査を行っていた。1週間ほど前に公安と共に摘発を終え、これにて天地との案件は終了となった。
渦雷は班員に視線を向け、再度天地に視線を戻す。
4ヶ月という短期間ではあったが、【天道からの指示】も班も守りつつ班の運営ができた。
渦雷たちの一番の課題はクリアした。
――明日、天道が戻って来る。




