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自由な空の下  作者: 月陽
第六章 決別
56/62

お出掛けは護衛と共に


 アルシェが帰り、リュシオルの執務室に残ったリディアーヌはようやくネックレスを付けてもらいほっと安心した。

 その様子を見ていたリュシオルは可笑しそうに笑っている。

 


「リディは本来の姿より今の方がいいみたいだね」

「まだ慣れないです。それに、誰かに見られたらと思うと不安で⋯⋯」

「大丈夫だよ。お兄様を信じなさい」



 その力強い言葉に不安な気持ちがふっと和らぐ。



「けど、リディ? 元の姿はお兄様とも似てるんだけどね。お兄様と似ているのは嫌?」

「え? そ、そんな事ないです! お兄様と似ているのは嬉しいです。本当ですよ?」



 上目遣いで見てくる妹が可愛くてぎゅーっと抱きしめる。

 抱きしめられたのは嬉しいけれど、苦しくてぽんぽんと腕をたたく。



「あぁ、ごめんね。つい可愛くて」

「い、いえ。大丈夫です」



 可愛らしくごめんねとやっちゃったとばかりに謝るリュシオルにリディアーヌは苦しかったけれど嬉しさもありふわりと笑って答えた。

 久しぶりにリュシオルとの会話を楽しんでいたけれど、リディアーヌはふと先程やり取りで気になった事を聞いてみようと話を変えるためにリュシオルを呼んだ。

 



「お兄様」

「ん?」

「先程の話ですが、もしかして陛下はディディエ卿に伝えるのを忘れていたのですか?」



 リディアーヌは直球でリュシオルに言った。

 質問とかではなく、ほぼ確信した物言いだ。



「リディの言う通り。彼はたまーに抜けることがあるんだよ。極稀にね。そういう部分を見れば、彼もやっぱり人間なんだなと思うよ」

「それってどういう⋯⋯」

「いつも完璧に仕事をこなすからね。ミスというミスを見たことがない。本当に同じ人間かな? と思うことがあるけれど、今回みたいにうっかりな所を見ると安心するんだよ」



 オードリックが聞けば「お前にだけは言われたくない」と言いそうなリュシオルの言葉にリディアーヌはあまりよく分からずに首を傾げた。

 会うときは仕事ではなく“家族の時間”なのでよく分からなかった。



「お兄様。先ほど話されていた人身売買って⋯⋯」

「この間の世界会議で話題に上がってね。今各国で人身売買が密かに行われているようなんだ。昔と違い、今は人権侵害だと世界的に禁止事項となっているんだけど、今また密やかに行われていると議題に上がり、調査をしているんだよ」



 人身売買と聞いてリディアーヌはふと考える。

 先程の自身の暗殺の事、ディディエ卿にリディアーヌが皇女だと伝えたこと、そして人身売買⋯⋯これにはもしかしたら第二皇女が関わっているのかもしれない。

 でなければ、今話に出てこないだろう。


 

「もしかして、私は赤ちゃんの時、侯爵家に売られたのですか?」



 リディアーヌは何の感慨もなくただ事実なのかと質問した。

 リュシオルはすっと表情改めリディアーヌを見つめる。


 

「リディは鋭いね。今分かっているのはリディが攫われた後、あの元侯爵家へ売られた事はあれの口からきいているし調査で分かった事だよ」

「どうして今になって調べているのですか? ⋯⋯あっ、ただ疑問に思っただけで、深い意味はないのですけど⋯⋯」

 

 

 リディアーヌが慌てるとリュシオルが申し訳なさそうな顔をして見つめてきた。

 そんな顔をさせるために言ったわけではないのにリディアーヌは言わなければよかったと肩を落とす。



「リディがそんな顔をすることはないよ。これはリディを護れなかった私達のせいなのだから。調査はね、ずっとしているんだよ。ただ難航し、ようやくリディが戻ってきたことで糸口が見えてきたんだ」

「私が戻ってきたからもう調べなくても⋯⋯」

「そうはいかないよ。攫われたのは皇女だからね。関わった者は捕らえないといけないんだよ」



 妹には建前しか伝えず、その先の言葉は飲み込んだ。



(これはそう単純な話ではない。リディにはまだ話す必要はないし、折角今を楽しんでいるのにそれを壊す必要もない)



 リュシオルは心の中で呟く。

 妹を見ると納得したようなしていないような、そんな表情をしていた。



「まぁ、リディが気にする必要はないよ。リディは今を思いっきり楽しんで、沢山美味しいものを食べて好きな事をしてのびのび暮らすことだよ」

「それだと太ってしまいます」



 太るのは嫌だとでも言いたげな妹を見て笑いが込み上げる。

 ふふっと声に出てしまうとリディアーヌは「笑わないでください」と小さく抗議する。

 最初のころを思うと随分と表情が豊かになり素直に感情を出すようになった。

 まだ本来の家族に対してはここまでとはいかないが、オードリックとは親子らしく見えるようになったとベルトランが言っていたから、少しずつリディアーヌの心も溶けて行っているのだろう。

 後は第一皇女が妹を理解出来たらなぁ⋯⋯どちらかというとリディアーヌの方が冷静で理解し距離を取っているので、これではどちらが姉か妹か分からない状態だ。



(全く、こんなに可愛い妹なのにな⋯⋯)



 リュシオルはリディアーヌが仮初の妹だと言うことに本気で惜しいと思っている。

 可愛い妹の心を煩わせる皇女に対して些か怒りを覚えるほどだ。



「どうなさいましたか?」

「いや、なんでもないよ」



 少し妹を見つめすぎたか可愛らしくて首を傾げる彼女の頭を撫でた。


 アルシェがリディアーヌと対面して数日が経った。

 今日はマラディから使者として新しくエクラタンを担当することとなった外交官が来訪するのでアルシェはオードリックと今日の予定を確認する。

 昼過ぎに到着予定で先ずはオードリックとの謁見で終わりだ。

 翌日の朝一にルヴェリエ大公を交えた会談を行い、マラディの者達にとって試練の時間となるだろう。

 


「明日の会談に公女様の父であるルヴェリエ殿下が同席しなくてよろしいのですか?」

 

 

 本来なら被害に遭った公女の父親であり現皇帝の叔父のベルトランが同席するだろうと思われていたが、当の本人がリュシオルに任せる、という事で辞退した。

 ベルトランとしてはマラディの使者に対して興味がなく、彼が相手にしたかったのはあの元侯爵だ。

 それはオードリックも同意見だろうが、皇帝という立場上、そして堂々と娘だと公言していない以上そうもいっていられない。

 そして大公家の件だけでなく、人身売買という人道に外れる行いが広まっている件もある。

 


「叔父上には別件を任せているから同席の必要はない。それに⋯⋯」



 あの元侯爵は既に死んだも同然だろう。

 影の報告によれば現在あの夫妻は幽閉中。

 息子に至っては余命いくばくもなく、王都の国が管理している孤児院へ監視付きで入っているそうだ。

 そしてその幽閉中の二人に関しては、こちらへ報告後、処刑が決まっているからもう会う事はない。



「いずれにしても既に眼中にない」



 誰が、とは言わない。

 眼中にないと言ったオードリックも既に興味がなさそうだ。

 今はそれよりも対処しないといけないことがあり、そこにエクラタンの皇子が狙われたことの方が重大だ。

 マラディはどこまで対処し情報を得たのか。

 


「陛下、マラディの外交官が到着しました」



 昼過ぎ、予定通りに外交官が到着したようだ。

 今は謁見の間の手前の控室に待たせており、侍従の報告で謁見の間へと向かう。

 扉の前で宰相であるグラシアン・ジル・アルヴィエが待っており、オードリックが姿を現すとすっと一礼した。

 

 

「お待ちしておりました」

「あぁ」



(さて、今回の外交官がどんな者か、見させてもらおう)



 言葉には出さず、オードリックはグラシアンを伴い謁見の間へと入っていった。


 オードリックがマラディの外交官と謁見を行おうとしている時、リディアーヌは困惑していた。

 何故困惑しているかというと、今日はフェリシエンヌと出かける予定だったのだが、急な予定が出来てしまった為にリディアーヌが初めて一人で出掛ける事となった。

 出掛けるのを延期してもよかったのだが、これも経験だと一人で行くことになったのはいいのだけれど、護衛の面々に困惑したのだ。

 付き添いとして侍女のエヴァは勿論の事、ローランもリディアーヌの護衛だから一緒なのは分かる。

 リディアーヌとしてはそれだけでよかったのだが、そこにあの四人が一緒に行くことになったのだ。

 あの四人、模擬戦で問題を起こしリュシオルの怒りを買った者達。



「お嬢様、大公閣下のご指示です。それと伝言を預かっております」

「伝言?」

「はい。“何かあれば自ら動かずに、彼等を使いなさい”との事です」

「分かりました」



 リディアーヌは少しだけ納得がいかない顔をしているけれど、リュシオルの言った通り、彼等を伴って街へと出掛けた。

 今日街へ来たの冬に向けてドレスを仕立てるためだ。

 子供だから背が伸び、昨年のものは切る事が出来ないので新たに仕立てるのだが、今回初めてフェリシエンヌなしでデザインを決める事となったので、リディアーヌは少しばかり不安を覚えていた。



「お嬢様、そろそろ着きますわ」

「もう?」

「大丈夫ですよ。私も助言いたしますし、専門家もいるのです。迷ったら何でも聞いてくださいませ」

「うん、分かった。迷ったらお願いするね」

「お任せください」

 

 

 お目当ての場所に着き馬車が止まる。

 ローランの手を借りて馬車を降りると、側にフェリシエンヌがいないことにやはり不安を感じるが、エヴァが安心させるように微笑むのを見て少し落ち着いた。

 店の扉へ近づくとすっと扉が開いた。



「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」



 いつもと同じように、フェリシエンヌがいなくともリディアーヌを快く出迎え、いつもと同じ部屋へと案内された。

 先ずは採寸からで、また少し背が伸びたことが嬉しかった。

 皆には同じ年齢の子より少し低いと言われているのが気になっていて、もっと伸びてほしいところではあるけれど、これからまだまだ伸びると言われ安心している。

 

 

「公女様、何かご不明点がありましたら遠慮なくお申し付けくださいませ」

「ありがとう」

 

 

 採寸が終わるとリディアーヌはお礼を伝えてカタログを見る。

 昨年とまた違うデザインでちょっと楽しいと思った。

 自分に似合うか分からないのでエヴァとこの間もお世話になったマリアンヌにアドバイスをもらいながら数着注文した。

 事前に母から最低限の注文数を言われていたので、その最低限の枚数での注文だ。

 今回はドレスだけでなく、訓練用の服も注文をする。

 あれこれと悩んでいたのですっかり長居してしまったみたいで、次に向かったのはカフェだ。

 フェリシエンヌがいないため、今日はエヴァとローランと共にお茶を楽しんだ。

 護衛の四人は外で待機しているのだけれど、一緒に来る意味あったのか、服飾店の時もずっと店外で待機していたし、待たせていることに少しばかり罪悪感を覚える。



「お嬢様。あの 四人が気になりますか?」

「どうして分かったの?」

「視線が何度も外にいっていましたよ」



 そんなに外をちらちら見ていた事にちょっと恥ずかしくなる。



「あの四人は護衛なので気にしなくていいです。それが仕事ですからね」

「けど、ローランは私の側にいるよね?」

「私は別ですよ。専属の護衛は常に側で付き従いますが、彼等は仮でこれも大公閣下より下された厳罰の一環です」

「お嬢様があの四人に対して心を砕くことはありませんわ。未だにお嬢様への態度はよくありませんから」



 エヴァはかなりご立腹のようだ。

 それはローランも一緒でうんうんと隣で頷いている。

 当初よりはましになったと思うが、目の前の二人は全然そう思っていないようだった。



「この後はどこへ行くの?」

「決まっておりませんので、お嬢様が行きたいところへ行きましょう」



 行きたいところ⋯⋯うーんとリディアーヌは考えるけれどパッと思い浮かばない。

 ベルトラン達へのお土産は買ったし、行きたいところと言っても⋯⋯。

 

 

「あの緑樹園へ行きたいけど、時間あるかな?」

「そうですね⋯⋯あそこは結構広いですので、全て回ることは出来ませんが少しなら大丈夫ですよ」



 エヴァの許可が下りたのでこの後緑樹苑で散歩することにした。


ご覧頂きありがとうございます。


楽しんでいたけたら幸いです。


よろしくお願いいたします(ꈍᴗꈍ)

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