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自由な空の下  作者: 月陽
第六章 決別
49/62

仲良し四人組


 避暑地の一件から暫くは穏やかな日々が続いている。

 まだまだ暑い日は続くだろう。

 この暑い中、リディアーヌは剣術の訓練を怠ることなく参加していた。

 といってもリディアーヌの基本はまだまだ体力作りだけれど、大公家の騎士団に混ざって一緒に訓練を、そこにはもちろんエルネストも参加している。

 大公家の訓練は基礎体力づくりから始まり組を作っての打ち合いを、時には模擬戦を行う。

 あの一件以来、エルネストの気合の入りようは目を見張るものがあった。

 実際危険な目にあったのはあれが初めてだったらしいが、あの時彼は臆することなくノルベールを護っていたけれど、リディアーヌが敵に向かっていったのを見て、自分もまだまだだと更に訓練に身を置くようになったらしい。

 と言っても、他に学ばなければならないことは多くあるのでそちらの勉強も削ることなく励んでいるというから唯々感心するばかりだ。

 リディアーヌはといえば、基礎体力作りと基礎訓練以外には淑女教育を初めエルネストに負けず劣らず沢山学んでいる中、親しくなったサジェス公爵家のエミリアとリシェス伯爵家のアマリアの二人と手紙のやり取りを行っている。

 そして明日はエミリアに招待され、フロランスとアマリアの四人でお茶会があり、リディアーヌは密かに楽しみにしていた。

 お茶会が楽しみと思えるようになったのは大きな一歩だ。

 


「ふふ。リディったら楽しそうね」



 夕食後、ベルトランとフェリシエンヌの三人でお茶をいただいていると、フェリシエンヌは嬉しそうにリディアーヌを見ていた。



「そう、ですか?」

「あぁ。明日のサジェス家でのお茶会が楽しみなのだろう?」

「はい。とても楽しみです」

「とってもいい表情(かお)をしているわ。明日のお茶会へ着ていくドレスは私も一緒に選びたいのだけれど、いいかしら?」

「もちろんです。お母様、お願いします」

「嬉しいわ」



 ベルトランとフェリシエンヌの二人は、リディアーヌのいつになくお茶会を楽しみにしている姿に嬉しくて終始笑顔だ。

 いつもお茶会が近づくにつれどことなく沈んだ 顔をしていることが多いけれど、 今回はそう言った表情は見られない。

 ただ、翌日が楽しみでうきうきとどこか 浮ついているとさえ感じる。

 そのような姿を見る事が出来て、二人はほっとしたのと同時に、娘が誰かに会う事が楽しいと 思えるようになったことへの歓びとその成長を噛みしめていた。


 そして翌日、はりきっているフェリシエンヌは朝から今日のお茶会のドレス選びに勤しんでいた。

 リディアーヌは嬉しいようなけど時間的に早すぎると少しどうしていいか分からずに部屋で佇んでいる。

 

 

「やっぱりリディにははっきりした色の方がいいかしら。夏らしくて鮮やかな青のドレスもいいわ。あぁ、けど、この可愛らしい黄色のドレスもいいわね。爽やかな緑のドレスも捨てがたいわ」

 

 

 「どれにしましょう!」とフェリシエンヌは選別した四着のドレスの前で迷っていた。

 これはいつになったら決まるのか。

 少し待ってみたけれど、やはりまだ迷っている。

 フェリシエンヌならばここまで迷わずにサクッと決めそうなのになぁ、とリディアーヌはリディアーヌでこの状況をどうしようかと迷っていた。

 そんな時、軽やかなノックがあり、「どうぞ」というとベルトランが部屋へと入ってきた。

 

 

「やはりまだ悩んでいたんだな」

「あら、あなたも選びに来たの?」

「あぁ。お前の事だから可愛いリディのドレス選びに迷うだろうから私も選ぼう」



 そして二人揃ってあれこれ言いながら暫くしてようやくドレスが決まった。

 殆どベルトランが選んだようなものだ。

 その後は髪飾りと控えめなアクセサリーを選んでようやく終わったと思ったらもうお昼だ。

 そのまま三人一緒に食堂へ異動して昼食を食べ、少し休憩してからお茶会の準備が始まった。

 いつもながらエヴァ達の手際の良さには圧倒される。



「仕上がりましたわ!」

「今日も一段と可愛らしいですわ」

「本当に! この愛らしさは皇国一です!」

「流石に言いすぎ⋯⋯」



 ついつい口に出してしまった為、それは過言ではない! と三人に力説されてしまった。

 準備が整ったころ、フェリシエンヌが様子を見に来たが、リディアーヌの姿を見た途端感嘆の声を上げた。



「まぁ! リディ、素敵だわ。やはりそのドレスにして良かったわ」



 選ばれたドレスは爽やかな緑色のドレス。

 袖と裾の部分のシフォンが夏らしく涼やかに魅せる。

 ドレスに合わせ、白と緑のリボンが一緒に編み込まれ髪型も可愛らしくハーフアップにしている。

 この一年で髪の毛もだいぶ伸び、肩より上だった髪の毛も今では肩よりも下でより女の子らしくなった。

 フェリシエンヌに見送られサジェス家へと向かった。

 楽しみでついつい顔が緩む。

 リディアーヌにしては珍しい事だった。

 外の景色が流れるのを見ているようで見ていないが、サジェス家まではそれほど離れていなくて、ものの十分くらいで屋敷に着いた。

 ローランの手を借りて馬車を降りると、エミリアと彼女によく似た美人の公爵夫人がリディアーヌを迎えてくれた。

 

 

「ようこそお越しくださいました」

「本日はお招きありがとうございます」

 

 

 リディアーヌはここでようやく我に返り緊張した。

 フェリシエンヌやエルネストと一緒ではないお茶会に参加すること自体が初めての事で、そこにようやく思い至ったのだ。

 少しばかり声から緊張が伝わってしまったのではないかと不安に駆られたが、二人は似た優しい微笑みを浮かべていた。



「リディ様、いらっしゃるのを楽しみにしておりましたわ!」

「この子ったら。公女様ご無沙汰をしておりますわ」

「はい。昨年は私のお披露目に来ていただき、ありがとうございました」

「またお会いできる日を楽しみにしておりましたわ。今日は楽しんでいってくださいませ」

「ありがとうございます」

「リディ様、ご案内しますわ」



 夫人と挨拶を終え、エミリアの案内でサロンへ向かう。

 公爵邸のサロンへ向かう廊下には絵画が飾られていて一種の画廊のような雰囲気がある。



「凄いですね」

「これはお父様の趣味なのですわ。絵が好きで収集癖がありますの。お母様が呆れているのだけれど、止められないようですわ」



 エミリアは呆れたように話すが、リディアーヌから見たら凄いの一言だ。

 絵に詳しくないが惹きこまれるような感覚を覚える。



「フロー様とリアは既に来てお待ちになっておりますわ」

「あ、ごめんなさい。来るのが遅かったでしょうか?」

「いえ。お二人が早すぎるだけですわ」

 

 

 笑いながら軽く言うエミリアからは攻めている感じはしない。

 寧ろ二人が早すぎなのだと言っているのでリディアーヌはほっとした。

 サロンに到着すると、そこはガラス張りになっていて、陽光も程よく入りとてもきれいな場所だった。

 そこから見える景色は公爵邸の庭園に咲いた色とりどりの花が咲いているのが見える。

 

 

「リディ様、こちらへどうぞ」

 

 

 見惚れていたがエミリアの声で我に返った。

 それを見られていたのか、フロランスにくすくすと笑われてしまった。

 

 

「このサロンは素敵ですわよね。私も初めて案内されたときは見惚れてしまいましたわ」

「私も、見惚れてエミリー様が話し掛けて下さっているのに気が付かず、呆れられたのを覚えておりますわ」

「リアはぽかんとお口を開けておりましたもの」

「そ、それは言わないでくださいませ」



 まさかそこまで言われるとは思っていなかったようで、アマリアは顔を赤くしてエミリアに可愛らしく抗議したけれど、言われたエミリアは「本当の事でしょう?」と肩をすくめた。

 リディアーヌが示された席に着き、早速お茶会が始まる。

 エミリアが準備したお茶は一番年下の私が飲んでも健康に害のない紅茶でアップルティだった。

 そして林檎がふんだんに使われたアップルパイはシナモンが程よく甘みの強い林檎が使われていてとても美味しい。

 

 

「リディ様はアップルパイがお気に召したようですわね」

「幸せそうに食べるお姿が可愛らしいですわ」

「こうして可愛らしいお姿もいいですけれど、クールなリディ様も素敵ですのよ」

 

 

 一体何の話をしているのか。

 リディアーヌは三人の言葉にどうしていいか分からず恥ずかしそうに俯いた。

 

 

「そういえば、リディ様とフロー様は避暑地、リベリテ領へいかれたのですよね? あちらはいかがでしたか?」

「景色がキレイでとても素敵なところでした。風も心地よくて過ごしやすかったです」

「リディ様の仰る通り。長閑でのんびりできましたわ。やはりその場でいただく新鮮な果物は美味しかったですわ。ね、リディ様?」

「はい、フロー様。いただいたスイカは瑞々しく、とても甘くて美味しかったです」

「羨ましいですわ。やはり収穫されたての新鮮さは違いますものね」



 アマリアは羨ましいとばかりにその光景を想像しているのか目を閉じて手を合わせている。

 その様子を見たエミリアはくすくすと笑い「見かけによらず食いしん坊さんね」と評していた。

 アマリアは見かけが清楚で深窓のお嬢様といった風貌だけど、その実はよく食べるのだ。

 貴族令嬢が多く食事をとることはあまり褒められたことではないだろうが、此処にいる全員彼女がよく食べることに関して何も言わない。

 それが彼女の個性のひとつだし、何よりも上品で美味しそうに食べるために何か言う事はない。

 これで食べ方に問題があれば苦言のひとつでも呈するだろうが、マナーをしっかり守り優雅に食する姿は褒める要素はあれどけなす要素はない。

 ただ皆が思う事は、あれだけ食べているにもかかわらず全く太ることがないアマリアの体質を羨ましく思っていた。



「リアが羨ましいわ」

「本当に。食べたくても直ぐにお腹がいっぱいになってしまうし、体型を気にしてしまってあまり食べられないもの」

「リディ様は思ったよりも食べますわよね?」

「え? そうでしょうか?」



 自分ではよく分からず、けれどフロランスと比べたら食べているかも⋯⋯。

 リディアーヌはあっと思い当たることがあった。



「私、訓練を欠かさずに参加していますので、多分それで食べてしまうのです」

「まぁ! リディ様はどのような訓練をそれているのですか?」

「今は体力をつけるために騎士の方達と一緒に訓練を受けています」

「体力をつけるのですか?」

「はい。私は体力が付きにくく、持久力が足りないのです。お父様にも全然だと言われていますから」

「まぁ⋯⋯。ルヴェリエ殿下はとても厳しくていらっしゃいますのね」



 エミリアは驚いているけれど、リディアーヌからしたら厳しくもなんともないのだけど、エミリア達令嬢たちから見れば厳しいのかもしれない。



「リディ様は魔法と剣、両方をお使いになりますからとっても格好いいですわ! 先日、エルネスト様と模擬戦を行っているところを拝見しましたけれど、それはもうその辺の男性よりも凛々しくて、リディ様が男性なら好きになってしまいますわ」

「ケホッ。 え、えぇ!? フロー様、な、なにを⋯⋯」



 まるで恋をしたかのようなフロランスの仕草とその言葉にリディアーヌは盛大に咽た。

 今のは令嬢失格だろう。

 この場にフェリシエンヌがいればきっとリディアーヌの失態に呆れのため息をついただろう。

 そして屋敷に戻ってからお説教を受けること間違いなしだ。

 

 

「羨ましいですわ。私も見てみたいです」

「でしたらもっとリディ様と仲良くなる必要がありますわね。それまでは私がそのお姿を独占いたしますわ」



 フロランスの言葉にエミリアとアマリアが可愛らしく「ずるいですわ!!」と抗議する。



「では今度は私がお茶会を開催しますので、ぜひいらしてくださいませ」

「まぁ! リアったら私を差し置いて抜け駆けはよくありませんわ!」

「抜け駆けではありません。順番ですわ。この間はフロー様、今回はエミリー様。でしたら次は私の番ですわ。ね、リディ様?」

「え? はい。あ、ご招待いただけるなら喜んで参加します」

「ぜひ! 近いうちに招待状をお送りいたしますね」



 両手を合わせて可愛らしく嬉しそうに微笑むアマリアを見て、リディアーヌも嬉しくなった。

 そんな二人を羨ましそうに見つめるフロランスとエミリアはむむむっとアマリアを睨むも、その姿は耳をぴんっとはったウサギのようだ。



「あ! 良いことを思いつきましたわ!」

「急にどうしたの?」

「ほら、宮廷騎士団が定期的に模擬戦を行っているでしょう? 今度一緒に観戦に行きませんこと?」

「あら! 良い考えね。リディ様はきっと気に入りますわ」

「それだけではないでしょう? エミリー様はお目当ての騎士がいらっしゃるではありませんか」

「あら。それはリアもでしょう?」



 急にはしゃぐ二人を不思議そうに見ていると、フロランスがそっと教えてくれた。



「エミリー様のお目当ての騎士とは、第一騎士団長のヴォルカン・レウスィット伯爵様で、リア様はレヴリー・ウルス・エトランゼ侯爵令息様ですわ」

「フロー様は誰かいらっしゃるのですか?」

「私は騎士団の方ではありませんが、ルヴェリエ大公閣下ですわ」

「リュシオルお兄様?」

「えぇ! 騎士団ではありませんのに文武両道でその実力は騎士団長をも凌ぐと言われております。本当のところは分かりませんが、たまに模擬戦に参加されますのでそのお姿を拝見できたときの喜びは言葉になりません」



 その時の情景を思い出しているのだろうか、両手を握りしめてうっとりとしている。

 確かにリュシオルの容姿は整っていてきれいだ。

 そういえば、リュシオルの剣を握っている姿を見たことがない。

 フロランスではないけれど、リュシオルが戦う姿を見てみたいかも。

 リディアーヌは他の三人とは少し違うけれど、想像を膨らますのだった。

 

更新まで大変お待たせしましたm(__)m


そして読んでいただきありがとうございますm(_ _)m


一日おきに更新しますので、是非楽しんでいただけたら嬉しいです。


よろしくお願いいたしますm(__)m


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