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時の伝書鳩  作者: 夜光哉文
第二編
8/54

二 差し迫る問題

 気がつくと、私は道の隅に横たわっていた。

 「うう……なんだったんだの……強盗かなんかかな……」

 体を起こし、所持品を確認してみる。と言っても、所持品などほとんどなく、何も盗られてはいなかった。ただ、体を動かしていると肩に違和感を感じた。服をめくって見てみると、そこには絆創膏が貼られていた。不思議に思ってそれを剥がしてみた。しかし、これといって傷はなく、やはり違和感だけが残った。

 「散々な目にあったな……」

 私は首を傾げながら修の元へ戻った。

 「長い時間外にいたみたいだけど、何してたのかな?」

 「いや、ちょっと散歩に行ったら後ろから誰かに電気流されて、気を失っていたんです」

 「ええ!スタンガンか。大丈夫?」

 「ええまあ、肩に絆創膏が貼ってあったんですけど、他は何も異常ないです」

 「そうか……ならよかったけど、物騒だね。早く街中に移動しようか」

 修は車を(彼にとっては自分の体なので、この表現が正しいかわからないが)走らせた。

 「これから修さんの両親を探すわけですけど、何から手をつけたらいいですかね?」

 道中、私が言った。

 「いい案はあるかな?実はまだ考えてなかったんだ」

 「マジですか。うーん……」

 考えていると、腹が鳴った。

 「そういえばお腹減ったな……どっかでご飯買ってもいいですか?」

 「うん。お金は大丈夫?」

 「あ!」

 私は頭抱えた。

 「どうしたの?」

 「この時代のお金持ってないじゃん……またやったよ。このミス」

 前にも一度、似たようなことをしでかした経験があった。

 「あー、なら一度未来に戻る?」

 「いえ、結局この時代のお金持ってないと不便なのでお金稼ぐ方法を考えましょう。未来に戻るのは最終手段にしましょう」

 「わかった。課題はたくさんあるね」

 「ええ。でもとりあえず、一つ思いつきました。タイムマシン、お金を稼ぐといえば、宝くじしかないでしょ!」

 「え?確かに当選番号はわかるかもしれないけど、そのくじを探すのが大変じゃないかな」

 「数字選択式の宝くじですよ!自分で数字を選ぶんです。これなら絶対当たりますよ」

 「それはいいね。早速売り場に行こう」

 私達は宝くじ売り場に向かった。

 「えっと……このくじのあたり番号は……よし、覚えた。これで過去に戻って……」

 私は修の元へ戻り、その宝くじが売っていた一週間前にタイムトラベルをした。もちろん、一目につかないところに移動して。

 「さあ!買いましょう」

 意気込んで機械の前に立った。しかし、なぜか私はそのまま立ち尽くしていた。そのまま数秒経った後、私はこの謎の現象の正体に気づいた。

 「宝くじを買うお金がない!」

 私はまた、頭を抱えた。

 「なんでこんな単純なことに気が付かなかったの……あたしポンコツすぎでしょ……こんなキャラだったっけ……」

 私は重い足取りで車に戻った。

 「宝くじ買うお金がありませんでした……」

 「ああ、それは私も思ったよ」

 「なんで言ってくれないんですか!」

 「ああ、ごめんね。それで、どうする?」

 「うーん、まあそんなに高い金額じゃないんで、その辺を探せば見つかると思うんですが」

 「その辺を探す?具体的にどこを?」

 「自販機の下とかですよ!やったことないですけど、聞いたことあるんです」

 「そうなんだね。じゃあ、頑張って」

 「その応援、なんか腹立つ……」

 私はため息をつきながら、自販機の下からお金を探す旅に出かけた。

 思ったよりもその旅路は厳しく、一円玉や十円玉は比較的簡単に見つかるが、五十円玉や百円玉などの大物は簡単に見つからなかった。

 「今は……十円玉三枚に一円玉が十二枚……四十二円……一時間やってこれか……」

 お腹は減っているし、屈みすぎで腰も痛い。小さい子供ならばいざ知らず、十五歳の女がこんなことをしているから周りの視線も気になる。手は汚れるし……一応私、令嬢ってやつなんだけどな……。

 それから一時間、二時間、私は自販機の下を覗き続けて、必要な金額まで残すところあと百円まできていた。

 もう何十、百何十台目かわからない、少し古めの自販機の下を覗いた。すると、今までの小物とは輝きの違うコインが目に入った。

 「これは……五百円?やった!」

 大きな達成感が私の体を駆け回る。やっと報われた。これを落とした人に感謝しないと。

 私はウキウキで宝くじの販売所に行き、来週一等になる番号を打ち込んで宝くじを購入した。

 「やりましたよ!買えました!」

 「お疲れ様。では、一週間後へ行こうか」

 「はい!」

 私は宝くじを握りしめて、スキップをしながら換金所へ向かった。

 「よし、番号を確認しておこう。えっと——え……」

 私は力なく床に手をついた。

 「番号が、変わってる……」

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