閑話①
みのりと真の後日談
「ただいま」
みのりがドアを開けた。
「おかえり。ご飯できてるよ」
真が答えた。
「おお、気が利く。すぐ食べる」
二人は食事を始めた。
「みのり、どうだった?節目のライブは」
「最高だったよ。観客の人達皆泣いてたからもらい涙しちゃった」
新参者のリメイトとなったみのりは、現在歌手として国民的に人気を博していた。しかし、真と結婚し妊娠した彼女は、今日のライブを境に産休が始まるのだった。
「そっちはどう?緊急移動プログラム……だったっけ?」
「うん。プログラム自体は終わったよ。あとはこのカードにその機能を移すだけ」
そう言って真はカードを手に取った。それは、みのりと真が助けられたカードキーを模倣しており、天道都市の施設内ではマスターキーとして機能していた。
真はというと、家事をしながら天道都市にまつわるプログラマーをしていた。現在は施設の中をどこからどこでも移動できるシステムを作っていた。
「なんでそんなの作ってるんだっけ?」
「前にも言ったろ?いつか昔の俺達みたいにピンチになることがあるかもしれないから、その時に逃げられるようにするためって」
「そうだったね」
「ところで、これから家にいるんでしょ?ちょっとくらいは家事を……?」
「あれあれ〜?この家買ったの誰だっけ〜?忘れたの〜?」
みのりは相当稼いでおり、彼女はこの家を買う時に全額出したのだった。
「マジかよおい。結婚したのがモラハラ妻だったなんて……」
二人は楽しそうに笑い合った。
「嘘嘘、冗談だよ。もちろんちょっとは手伝うから」
二人はお互いを愛おしそうに見つめた。
「なに書いてんの?」
真が寝室に入った時、みのりは机に向かって筆を走らせていた。
「ああこれ?手紙。いつかの誰かからの手紙で私が助けられたみたいに、それにならって私も書いてみることにしたの」
「ふーん。誰に向けて?」
「未来の私達の子供達」
そう言って、みのりは腹をさすった。
「どんな内容?」
「えー、恥ずかしいんだけど」
「いいじゃん。教えてよ」
「……まあ簡単に言うと、応援してるよってことかな。あと、天道都市をなくして欲しいってこと。イヤリングも入れてあげようと思って」
「そうなんだ。あ、それならさ、カードも同封してあげようよ。未来の子供達に託そう」
「いいね。じゃあその説明を真が書いてよ」
「あいよ」
真は身を乗り出して、手紙に目を通した。
「そろそろだね」
真は大きくみのりの腹に手を当ててつぶやいた。
「名前考えなくちゃ」
「そのことなんだけど、つなぐ、なんてどう?皆の思いを繋ぐ、架け橋みたいな子になってくれたらいいなと思って」
「嫌だよそんなの」
みのりは一秒も考えずに即答した。
「どうして?」
「何かと何かを繋ぐ、それってサポートしてる脇役ってことじゃない?主役になれなそうでしょ」
「そこまで言わなくてもいいじゃん。全国のつなぐさんが暴動を起こすよ」
「望むところだわ。かかってこい。この子にはこの子で、主役になってもらいたいの。だから、そんな名前をつけたい」
「そっか……だったら、うーん……」
その後も、二人の話し合いは続いた。