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時の伝書鳩  作者: 夜光哉文
第二編
39/54

三十三 おとり作戦

 私がファムに入ってから、一週間が経った。

 結局、私は内グループに入った。そちらの方が都合がいいことが多かったからだ。

 「よし、じゃあ電話をするよ」

 「はい」

 時間は真夜中、今日も私は見回りをしていた。外グループは取り引きに出ていていない。

 私は定位置に待機した。

 しばらくして、ランプを灯した車が病院へ向かってきた。

 私はそれを確認し、ガブリエルの元へダッシュした。

 「ガブリエルさん!警察が来てます!」

 「んえ……なに?」

 ガブリエルは目を擦って伸びをした。

 「警察です!」

 「けいさつ……?えええ!警察?」

 ガブリエルは珍しく取り乱していた。

 「どうしよう……僕、こういう緊急事態ダメなんだ。どうしてジャンヌがいない時に……」

 それを狙ったのだ。

 「ガブリエルさんは見られたらまずい部屋の鍵をかけてきてください。それから、メンバーを東棟に集めてください。私が陽動をして、警察を西棟におびき寄せます」

 「あ、ああ。わかった。」

 私の突然の饒舌に、ガブリエルは動揺してるようだったが、彼女はすぐに部屋を飛び出して行った。

 さ、今回こそは上手くやるぞ。

 私は西棟の、病院の入り口付近に立った。

 警察官が二人入ってきたのを見て、私は階段を登った。

 これであの二人がこっちに来るはず。

 二人が階段を登ってきたのを見て、今度は何もない会議室の方へ歩いて行った。

 ここで大切なのは足音以外余計な音を立てないこと。変に誘き出そうとすると、粘られちゃうから。何かあるかもしれないけど、何もないかもしれない、くらいの音を立てるのがベスト。

 私はそのまま一時間くらい粘って、ついに警察は、首を捻りながら病院を出ていった。

 「よーし、やった!」

 私はガッツポーズをして、ガブリエルを探しにいった。

 修が提案した作戦、それは修が警察を呼び、そのピンチを私が救う、と言うものだった。

 実を言うと、この作戦は三回失敗しているのだ。一回目はシンプルに見つかり、二回目は他のメンバーが見つかってしまい、三回目は応援を呼ばれてしまった。そうして失敗するたび、修が遠隔操作でタイムマシンに来てもらい、タイムリープをするのだった。

 ちなみに、警察に捕まった場合、彼らについていくことになるのだが、その時、修がとてつもない速度で運転して警察官二人を脅かしにかった。本当に轢き殺してしまうのではないかと思った。いつも通りそれしかやりようがない、と言っていたが、やっぱり、修はハンドルを持つと人格が変わるタイプみたいだ。

 「なんとかなりました。ガブリエルさん!」

 ガブリエルが見つかった。彼女はエマをあやしているところだった。

 「ああ、よくやってくれたね。ありがとう。僕じゃきっと皆を守れなかったよ。ほら、エマもお礼をしよう?」

 「ありがとう!」

 「ふふ、どういたしまして」

 私は屈託のない笑顔を浮かべているエマの頭を撫でた。するとその上から、ガブリエルが私の頭を撫でた。

 「君はすごいね。冷静な判断力に加え大きな勇敢さも持っている。これからも期待してるよ」

 「えへ、ありがとうございます」

 この人に褒められるのは、他とは違う嬉しさがあった。

 まあ、自作自演なんだけどね。

 ずるいと思いながらも、それには目を瞑ることにした。

 しばらくして、ジャンヌが帰ってきた。すぐに、ガブリエルが起こったことを説明した。

 「お前がそんなに度胸のあるやつだったなんてな!見直したぞ!」

 ジャンヌは私を羽交い締めにしてきた。

 「く、苦しいです……」

 言いながら、私の顔はニヤついていた。

 ああ、やってよかったな。

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