二十六 ファム
レオ院長がゆっくりと目を開けた。
私は彼をあらかじめイスに縛り付けておいた。
「さて、これでゆっくりお話ができますね」
彼は目を見開き、身震いをしたが、すぐに諦めたかのようにため息をついた。
「わかったわかった。なんでも聞いてくれ……」
「今から一年以内に何か計画していますよね?それを教えてください」
彼はなぜそれを?と言いたそうな目でこちらを見た。
「どこまで知っている?」
「何かある……ということしか」
なるべく多くの情報を引き出すため、リヨンが関係しているなど、余計なことは言わないようにした。
「そうか……わかった。話そう」
知っての通り、私は裏ルートから臓器を入手し、世界の大富豪へ移植を行なっていた。
臓器を提供する中で、もちろん取引先にはこだわりたい。私は様々な組織と取り引きをし、その品定めを行なっていた。
ある時、優良な取引先を発見した。その組織の名前はファム。普通、裏ルートで手にいれる臓器は、訳ありの場合が多く、品質が低い場合が多い。しかし、ファムは継続的に高品質かつ、豊富な種類の臓器を提供してくれる。私やマフィアはかなりお世話になった。
だが、私達はそれだけでは満足できない様になった。ファムの企業秘密を知りたくなったのだ。
そのために、まずは臓器について詳しく調べる事になった。その仕事を担当したのが私だ。
結果、驚きの事実が明らかになった。ファムから提供される臓器は、全て同一人物ものだということが判明した。同じ臓器を二つ購入し、遺伝子検査を実施すると、それらの遺伝子は一致した。
このことから、ファムは高度なクローン技術を持っていると推測された。
私達はそれを欲した。検査で臓器はフランス人の物だと分かったため、現在マフィアが調査をしている。
「で、その都市がリヨン、と……」
「な、なぜそれを……」
「どうでもいいでしょう。それで後々、政府にも協力を仰ごうとしているんですね」
「……」
「あんたらの強欲がなかったら、世界は平和なままだったのになあ……」
「どういうことだ?」
「あなたには関係ないです。じゃ」
私は部屋を出ようとした。
「ちょっと、縄を解いてくれないのか?」
「そのつもりでしたが、冷めました。どうせなかった事になるんで、大丈夫ですよ」
そう言って、部屋を出た。
「どうでした?」
私は車に戻って、修に聞いた。
「私も君と同じ感想かな。人間は強欲でいけない」
「ですよね。これからどうします?」
「まずは、あの取り引きの夜へタイムリープをして、あのワゴンを追跡しようか」
「でも、あの車の所在は割れてますよ?リヨンから調査した方がいいのでは?」
「ああ、そうだったね。では、そうしよう」
私達はタイムリープでリヨンへ戻った。
「どうです?戦争を止めるビジョンは見えましたか?」
「いいや、極論マフィアを潰せばいいかとも思ったが、それはあまりにも現実的ではないよね」
「ですね。それよりも、ファムを潰す方が楽そうです」
「確かに」
私達はファムの調査を始めた。