訪問者
後ろに立っている黒服は何処となく機嫌が良さそうに話しかけてきた。
「凄いね、こんな短期間に二人も殺すなんて常人じゃあできないよ。
しかもさっきあの上司を殺す時気持ちよかったでしょ?
君、この契約のために生まれてきたような人だね、俺としても君が沢山殺してくれたほうがありがたいからこれからどんどん頑張って!!
あ、でも人の眼の前で殺ったら駄目だよ。
流石の俺でも死体を消すことは出来ても、生きている人間の記憶を変えることは出来ないから。
さっきも危なかったんだよ、落ちた瞬間は見られてなかったから良いけど、落下地点に人が居たら気付かれちゃう、もう少しだけ丁寧にね」
確かに落下地点に誰かが居るなんて考えて無かった、もしこのまま十人殺したとしてもバレてしまったら、警察に捕まってしまう、警戒するとしようと。
それにしても、さっきも松井を殺す時の感覚が忘れられない、もう一度体験してみたい。
また人を殺せばいいのか?
「なぁ黒服、次は誰を殺せば良いんだ?」
「黒服?
ああ俺のことね、次の標的なんて自分で考えな。
今まで殺す人間を指定していたのはこのままではお前が人を殺すのが無理だと思ったからだ。
だがもうそんな心配は要らないみたいだからな。
なぁに、自分で考えろと言ってもそんな深く考えなくてもいい、なんかむかつくからでも構わない。
今更相手が可哀想とか言うなよ、おまえ既に二人も殺してんだ、今更いい人ぶっても仕方がない」
しかしそんなこと言われても、今殺したいやつなんていない、でもまだ期限までには時間があるゆっくり焦らずにやっていけば良いか。
気がつくと、既に黒服はいなくなっていた。
その後、職場では松井が戻らない事で大騒ぎになり、仕事が滞ってしまった。
責任者の松井が居なくなってしまったため、俺が代わりに松井がやってたはんこ押しをすることになった。
その日の帰り電車で騒いでいる学生の集団がいた、今すぐにでも殺してやろうかと思ったが、今自分が相手の生死を決めることが出来るとわかった途端に怒りが引いてきた。
家に帰りコンビニでかった惣菜を温めていた頃、急にチャイムがなった。
玄関の前には外崎の彼女が凄い剣幕で立っていた。
何事かと思い玄関を開けるやいなや、俺に掴みかかってきた。
「何なんですか、こんな夜更けに?」
そう言うと彼女は顔を真っ赤にして怒りだした。
「とぼけないで!
貴方があっくんを殺したことはわかっているの、さっさと自首して!」